ユーリカリア達の戦い方の考察
歩いている間にジューネスティーンは今の戦い方を考察していた。
(ユーリカリアは迫ってきた腕を戦斧で受け流していた。 身長差をものともせず、力が一番乗る所で受けてしまったらその力は戦斧や腕でモロに受けてしまう。 だが、当たる瞬間の力を利用して戦斧の刃が下がる様に受ければ、戦斧に掛かる力は弱くなる。 戦斧の刃が斜めになれば、振り下ろされた腕は戦斧のラインに沿って流れる。 それなら受ける時の衝撃は半減するので、次の攻撃に備えられる。)
ユーリカリアの戦闘について、感心しつつも、もう1人のヴィラレットについても考えているのだ。
(ヴィラレットについては、振り下ろされた腕を見切って回避をしながら剣を振るっていた。 腕の力もそうだが剣を扱うには足捌きが大事だと言うことがよく分かった反応だった。)
2人とも、動きに無駄がなかったのだ。
大した防具を使っているわけではなく、体捌きと武器だけで防御と攻撃を上手く連動させている事に感心sるのだった。
しかも2人とも避ける方向が、しっかり殴ってきた腕の外側に流れる様に移動している。
外に移動することによって、魔物が次の攻撃を加える為に、起こすアクションを増やす事に成功している。
だが、もし、この時内側に移動してしまったら、直ぐに反対の腕の攻撃、間合いが詰まっていることから、牙やユーリカリアが言っていた頭突きも考えられる。
外側なら、直ぐに攻撃を加えられるのは、振り下ろした腕を外に払うか足による攻撃になる。
足についても側面の敵に向かって蹴るのは足の開脚によることになる。
前に屈んだ状態では力の乗った蹴りになる事は少ない。
2人は連続攻撃を避けるための回避運動をすることで、その僅かにできた隙に攻撃を仕掛けたのだ。
熟練の技と言って良いのだ。
そんな事を思っていると、横に居たアンジュリーンがつぶやく様に声を出す。
「へー、今のが、シェルリーンの未来予測だったのかな。」
それを聞いてジューネスティーンが何のことなのかと思ったのだろう。
(そういえば、あの弓矢は2本とも命中させてたな。 偶然にしては、2本とも命中って事はありえないな。)
ジューネスティーンは、アンジュリーンの呟きを聞き直す。
「なあ、今、未来予測って言ったか? 」
ジューネスティーンに聞かれると、視線をシェルリーンからジューネスティーンに移す。
「ああ、前の会食のときに聞いたのよ。 彼女には、弓矢が当たる軌道が射る前に見えるらしいのよ。 その軌道に沿って弓を射れば百発百中らしいわよ。」
「へーっ、それでだったのか。 最初の矢が刺さったのは偶然じゃなかったって事なんだな。 あの距離でしかも放物線を描く距離で狙撃ができるなんて、すごい腕だな。」
「腕もだけど、予め矢を射る時に当たる軌道が見えるみたいなのよ。 そのラインに乗せられれば、必ず当たるらしいわよ。」
それを聞いてジューネスティーンは、少し考えているが、直ぐに話し出す。
「だが、そのラインって、かなり細いだろ、それに沿わせるように射るって、それだけでもかなりの技術が必要なんじゃないか。」
ラインが見えたからと言って、そのラインに沿って矢を射るのは相当の腕になる。
特に方物線を描く様な長距離の場合なら、力加減も重要になるだろう。
ラインが見えたからだけでは、そんな精密ショットは出来ないだろう。
手元の若干のブレによって、上下左右に軌跡は動く。
そのブレを自分の思い通りにしてそのラインに乗った時に矢を放つのだろうが、僅かな違いが遠ければ遠いほど合わせるのは至難の技と言えよう。
だが、それをあっさりと行なってしまうシェルリーンの腕前は、神業と言っても過言ではない。
「まあ、そうね。」
自分も弓を使うが、そんなシェルリーンの様な軌跡は見えた事が無い。
それに自分に針の穴を通す正確さが有るかと言ったら無いと答えるしかない。
10本矢を射って1本がその軌跡を通せれば良い程度にしか思えない。
アンジュリーンは、そう思うと、それ以上の話はできなかった。
そんな話をしながらユーリカリア達のところに来ると、2個のコアを拾い終わった所だった。
もう少し先には、矢と魔法で倒した魔物のコアが残っている。
「やあ、どおだった? 」
ユーリカリアが感想を聞いてきた。
「さすがだと思いました。 受け流したり、攻撃を躱したりしながら、魔物に致命傷を与えるのもすごいと思いましたけど、弓矢で2匹を倒したのは凄かったですね。 特に最初の1匹目の頭上に矢がヒットしたのには驚きました。 あの距離だと牽制の為に使うでしょうけど、狙撃が成功するとは思いませんでした。」
それを聞いていたシェルリーンが少し照れている。
それを見たユーリカリアが、代わりに話す。
「ああ、こいつの弓にはいつも助かっている。 達人と言ってもいいレベルなんだ。 あの距離の狙撃が成功すると近接戦の数が減るからな。 そうじゃなければ、エルフの2人も近接戦闘に参加してもらう事になるから、そうならずに4人で勝負できるからリスクも減る。」
数的に優位な立場を維持しての戦闘なら、強者として戦いに挑める。
「それに、2対1で戦えるのはかなりリスクも減らせますね。」
「ああ、このヴィラレットも冒険者としての経験は少ないが、剣の腕はかなり良い。 筋が良いので直ぐに前衛として使える様になってくれたんだ。 それに最近手に入れた剣がかなり使い勝手が良いらしく、体捌きが格段に良くなったんだ。」
それを聞いて、ジューネスティーンはヴィラレットを見る。
腰には、ジューネスティーンと同じ様な曲剣を付けている。
斬るための剣は、力を刀身で受けるので衝撃で折れやすいので、一般的には、少し太めに作ってあるのだが、ヴィラレットの剣を見ると、ジューネスティーンの持つ太刀の様に、刃幅も狭いと見た目で分かる。
また、鞘の形状も自分の物に似ている事に気がついたようだ。
ただ、ジューネスティーンは、カインクムが、ジューネスティーンの説明だけで、ヴィラレットの剣を作ってしまった事を知らない。




