ユーリカリア達の戦い
ジューネスティーン達が作戦について話をしているとユーリカリア達は、最初の魔物のグループに近づいていく。
向かった先の魔物は5匹のグループだった。
ゆっくりと進んでいると、魔物グループの1匹がユーリカリア達の接近に気がつきユーリカリアの方向に歩き出してきた。
遠目で見たところ、全身に地面の色と同じ茶色の鱗に覆われており、尻尾は無いと思われるが、短い尻尾はあるのかもしれない。
肩幅が広く、腕は長く、長さは身長の7割程度はありそうだ。
それに対して足は太くはあるが短い。
身長の3割程の長さである。
身長が高い分、人の足の長さと同じかそれより短い程度の足なのだ。
1匹の魔物が動き出してユーリカリアの方に向かうと、シェルリーンが弓で長距離射撃を行う。
70m程の射撃なのだが、弓矢は弧を描きながら魔物の頭上を斜め上から突き刺す。
本来なら、まぐれでも致命傷となる様な距離ではないのに、見事に頭上に矢が突き刺さった。
弓矢が突き刺さった魔物は、数歩歩いて力が抜ける様に前に倒れる。
すると、それが合図の様になり、残りの4匹が狂った様に走り出した。
目標はユーリカリア達と直ぐに分かる。
走り出したのを見て、ウィルリーンが短い詠唱を始めたのだろう。
ロットをかざして、何かを唱えている様に聞こえる。
おそらく、前衛の4人にバフをかけたのだろう。
ユーリカリア達を目がけて走り出した魔物だが、魔物は腕程に足は長くは無く、むしろ、足は身長に比べると短い。
その性か走るのは得意ではないのか、巨体の為その短い足では体を支え切れないのか走るスピードはそれ程早くは無かった。
魔物は走りながら、時々、その長い腕を地面に付けていた。
その性もあって、見た目の大きさに比べて、近寄ってくるのに時間がかかっている様に思える。
スピードなら帝都付近の魔物の方が遥かに早い。
シェルリーンは2射目を用意し始めると、ウィルリーンは別の魔法を唱え始めていた。
詠唱が終わるとロットを高くかざす。
すると、雷が先頭の魔物の頭上に落ちる。
命中した瞬間に魔物は引き攣る様に飛び上がると、地面に倒れて動かなくなる。
雷魔法1発で仕留めるウィルリーンの魔法の腕もかなりのものだとジューネスティーン達は感心している様子が顔に出ていた。
これで、2匹を倒して残り3匹となったが、3匹は怯む事なくユーリカリア達の方に向かってくる。
魔物はかなり近づいてきたが、シェルリーンが2射目を射る。
今度は水平射撃になった。
2射目は魔物の眉間に吸い込まれる様に矢は刺さると、刺さった矢が後頭部まで出てしまった。
その魔物は2・3歩歩く様に前に出るが、膝の力が抜ける様にそのまま前に倒れ込んでしまう。
直ぐに体から黒い霧が出始めるので、これも矢の一撃で仕留めた。
シェルリーンは、2射で2匹の魔物を仕留めた。
それもどちらも頭を撃ち抜くという致命傷を与えている。
動く標的を射抜くという神業的な弓を見せてもらった。
残り2匹となり、ユーリカリアとヴィラレットが並んで立っている。
2人が迎え撃つ様だ。
その後ろには、左右に少し開く様にフェイルカミラとフィルルカーシャが、槍と薙刀とは言わないまでも柄と刃が同じ長さの剣を持って構えている。
ユーリカリアは戦斧を顔の前に構えているが、ヴィラレットは剣は抜かず、左手で鞘を押さえ右手で柄を持って構えている。
2匹の魔物はユーリカリアとヴィラレットをそれぞれに狙いを付けて迫る。
2匹が、別々に狙いを定めた事を、魔物の目線で感じる2人は、徐々に左右に開いていく。
2人が5m程離れた時に魔物と接敵すると、魔物が片腕を振り上げて攻撃してきた。
ユーリカリアは、顔の正面に構えた戦斧を持ち上げて、迫り来る魔物の腕の外側に移動しながら、戦斧の刃と魔物の腕が十時にクロスする様に構え直し受ける様にする。
魔物が右腕を振り上げたのを確認して、ユーリカリアは、戦斧の刃を中心に、左へステップを踏んで、戦斧を魔物の腕と十時にクロスする様に動いた。
振り下ろされた魔物の腕は戦斧に触れるが、刃は魔物の腕に入らない。
ユーリカリアは、振り下ろされた腕を、受け流す様に戦斧を下ろす。
魔物の腕は、そのまま地面に達すると、戦斧から腕が離れた瞬間に戦斧を前に撃つように出す。
その戦斧は、魔物の脇腹を抉るように刃が入り、そのまま、魔物の右脇を斬り裂く。
断末魔の様な悲鳴をあげる魔物に、後ろにいたフェイルカミラの槍が魔物の喉に突き刺さる。
突き刺さると同時にフェイルカミラは槍を引き抜く。
その槍を引き抜くと同時に、魔物は倒れる。
一方、ヴィラレットは、振り下ろされた右腕を、ステップで外側に躱すと、居合い斬りの様に引き抜き、魔物の脇腹を横に薙ぎ払うと、魔物の後ろに回り込む。
すると、その後ろに居たフィルルカーシャが柄の先端を持って、一番長くなる様に持った薙刀を、魔物の左肩から袈裟斬りにする。
魔物との身長差が140cmになるが、それを補う長さの刃が魔物の首の横から胸に斜めに入る。
それだけでも、魔物は致命傷に近い打撃を与えたのだが、魔物の後ろに回り込んでいたヴィラレットが、魔物の背中を上段から斬ると、魔物はゆっくりと前に倒れる。
僅かに動こうとする気配があったが、前と後ろ袈裟斬りにされて、動こうとする魔物から、力が抜けていく。
動きが止まると、体から黒い霧が浮かび上がってくる。
向かってきた5匹を完全に倒すと、ユーリカリアはジューネスティーン達に手を振る。
ユーリカリアの戦いを見ていたジューネスティーンは、流石はAランクパーティーだと感心した表情を浮かべる。
ユーリカリアが手を振っているので、それに答えると、メンバーに行動する様にいう。
「じゃあ、俺達も魔物を狩りに行こうか。」
そう言って、ユーリカリアの方に行く。




