ジュネスの戦略
ユーリカリア達が前に出る様に離れると、アンジュリーンがジューネスティーンに寄ってくる。
「ねえ、やけに慎重じゃないの。 何かあったの?」
「いや、特に意味は無い。 ただ、ユーリカリアの様な上位パーティーがどんな戦い方をするか見てみたいと思っただけだ、他意は無い。 それと、魔物の攻撃がどんなかと、腕の防御魔法の様なものがどんなだか知りたかっただけだ。」
何か意図が有ったのかと思ったが、初見の魔物の情報収集が目的の様だと分かると、アンジュリーンは少し安心したような表情になる。
「ふーん。 じゃあ、作戦はおおよそ決まってそうね。」
「ああ、前衛2人に誘き寄せをしてもらって、向かってきているところを魔法と弓で牽制だな。 もちろん数も減らしてもらえれば言う事なしだ。 近くに来たら前衛2人は左右に展開して魔物を3方向に分散させる。 それで、自分達の方に来た魔物を、俺が剣で斬っていくので、シュレイノリアにはバフをかけてもらう。」
基本的な戦術は今まで通りの様だ。
「その時、こっちに来る魔物が複数だったら、2番目以降の魔物は、弓と魔法で倒すつもりで攻撃して欲しい。 まあ、いつもの方法だけど、今回はパワードスーツ無しなので、俺も2体以上の数と対決はしたく無いからな。 俺の安全は、後ろ3人にかかっている。」
上手く3方向に分散させるのは難しいが、ホバーボードのスピードを利用して魔物を牽制すれば、案外、ホバーボードの方に全部釣られてしまうかもしれないが、失敗してジューネスティーンの方に3体以上の魔物が押し寄せて来た場合は、中衛からの攻撃で数を減らす必要がある。
東の森の魔物とまではいかないが、Bランクとなれば、それなりに手強い魔物だと理解できる。
そんな魔物と3体同時に戦うと言うのは、自殺行為に近い。
1対1の戦いに持ち込まなければ、1体の攻撃を受けている間に、もう1体に攻撃されて終わる。
数体との戦いなら、一度に攻撃を受けない様に移動して、一撃で致命傷を与えて、次の魔物の攻撃に備えなければ、パワードスーツ無しなら、2体目の攻撃は受ける事になる。
自分の動きが止まれば、魔物の餌食になる。
そうならない様に、盾役と接触する前に、弓で数を減らせば、生存率は上がる。
「ふーん。 じゃあ、私達は責任重大なのね。」
「まあ、そうなる。 生身で一撃でも喰らえば、即死しかねないからな。 盾役は命懸けだ。」
それを聞いていたレィオーンパードが恐る恐るジューネスティーンに聞く。
「にいちゃん。 俺も今回は囮なのか? 」
「うーん。 微妙な感じだけど、まあ、囮だな。 本当なら、魔物に一撃でも与えてくれると嬉しいけどな。」
「うぇーっ! 」
レィオーンパードは、嫌そうに答える。
「まあ、姉さんと一緒に行って、こちらに引き寄せるんだ。 姉さんに合わせて一緒に行動していればいい。 展開するタイミングも姉さんに取って貰えば構わないよ。」
ジューネスティーンの話を聞いて、自分がレィオーンパードより信頼されていると、アリアリーシャは思ったようだ。
少し、優越感に浸った様子をする。
「わかりましたぁ。 私についてきてくださいぃ。 展開のタイミングもぉ、私が、支持しますぅ。」
横で、レィオーンパードとジューネスティーンの話を聞いていたアリアリーシャが、元気に答えてくれた。
彼女にしてみれば、障害物の少ない視界の良い場所での囮りなら、お手の物なのだろう。
そう言っているとシュレイノリアがジューネスティーンに尋ねてきた。
「私は、アイスランスを一斉発射ではなく、単発で撃つだけで対応していれば良いか? 」
「ああ、それで構わない。」
やけにシュレイノリアが聞き分けが良かった。
ジューネスティーンは、気になるのだが、とりあえず、変な方向に進まなかった事で、良しとしたようだ。




