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権利に関するジュネスとシュレの考え

 

 ジューネスティーンは、アンジュリーンに指摘されていたホバーボードの権利について考えていた。


 ホバーボードの開発は自分とシュレイノリアの共同開発みたいな物で有るが、どちらかというとシュレイノリアの魔法紋の開発の方が大変だった事は言うまでも無い。


 かなり細かな事まで要求を出して、使ってみては変更して、何度も魔法紋を変更して実験している。


 ホバーボードを考えたのは自分だが、自分にシュレイノリアの様に魔法紋の変更を何度も繰り返して設計をやり直してプログラミングを変更するという、そんな根気が有ったかと言ったら、無いと答える事になる。


 面倒だったので、魔法紋はシュレイノリアに丸投げしてしまったのだ。


 そうなると、ホバーボードの権利について、自分にどれだけの権利が有るのかと、考えてしまっていた。




 南の王国でギルドの高等学校に通っていた時に、接触してきたジュエルイアンが、ホバーボードの販売権を、ホバーボードを自分に売らせて欲しいと迫ってきたのだ。


 その時に自分が作ったと言ってしまって、結局、ジュエルイアンと販売権の譲渡契約を自分がしてしまったのだ。


 自分は、アイデアを出して、ボードを作った。


 そのボードに魔法紋を設計して刻んだのはシュレイノリアなのだ。


 魔法紋の紋様を羊皮紙に描いて魔法紋も提供して、ボードも魔法紋無しの現物も渡して契約したのだ。




 そう考えると、ジューネスティーンはホバーボードの開発に、それ程、貢献してない様に思えるので、この契約は、シュレイノリアとジュエルイアンの間で行った方が良かったのでは無いかと思っていた。


「なあ、あのホバーボードの権利なんだが、お前とジュエルイアンとで、結んだ方が正しかったんじゃないのか?」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアに尋ねると、シュレイノリアは即答する。


「あれは、お前が考えたものだ。 私は魔法紋を設計しただけだ。 その仕様については、お前が作った様なものだ。 あれのアイデアは、私には閃かなかっただろう。 お前は、アイデアを出して、私を使って魔法紋を設計させたのだ。 だから、ホバーボードの権利はお前の物だ。」


「ふーん。」


 そんなものなのかといった顔で、気のない返事をしたジューネスティーンの反応に、シュレイノリアは、面白くなかった様だ。


 少し嫌そうな顔をすると、更に説明を始めた。


「厳密にするなら、お前は、私に、魔法紋の設計手数料を支払うだけで良い。 世の中の原理としてはそんなもんだ。」


 そう言って、シュレイノリアは、ホバーボードの権利はジューネスティーンに有り、契約は正当で有ると暗に告げたのだ。




 ホバーボードの販売権は、現在、ジュエルイアンにあり、その中には製造も含まれている。


 販売する毎に、ジューネスティーンのギルド口座にロイヤリティーとして入金される様になっているので、何もせずに、お金は入ってくる様になってはいるが、市場を混乱させない為に、販売は全てジュエルイアンが行うことになっている。


 近い将来には、ホバーボードが魔道具店で店頭販売される事になるだろう。


 だが、ウィルリーンがホバーボードを作れる様になってしまったら、どうなるのだろうか?


 ジュエルイアンとの契約は、ホバーボードの販売権の他に製造する権利も含まれている。


 ジューネスティーン達は工場を持ってホバーボードを生産しているわけでは無い。


 なので、製造もジュエルイアンに任せており、市場の反応を見て生産を行う事になっている。


 何か変な所からの横槍などは、全てジュエルイアンに任せているのだが、ウィルリーンが作れる様になってしまったら、ジュエルイアンはどう思うのだろうかと、ふと、頭を過ったのだ。




 ジューネスティーンは、シュレイノリアに尋ねる。


「それより、ウィルリーンにホバーボードは作れるか? 」


 ジューネスティーンは、シュレイノリアに聞く。


 シュレイノリアは少し考えるが直ぐに答える。


「直ぐには無理だと思う。 重力魔法が使える様になってから。 それに魔法紋についてどれだけの知識を持っているか未知数。 こういった世界では、どれだけ数をこなしたかが、完成への近道。 簡単にメモを取れないので、知識量が物を言う。」


「ああ、莫大な量の魔法の羅列を覚えるのが面倒だったからな。 そう言うのはお前にお任せだったからなぁ。」


 ジューネスティーンの、面倒という発言に、シュレイノリアは反応した。




 ジューネスティーン自身でも魔法紋の開発は可能だと考えていたシュレイノリアとしてみれば、自分で魔法紋まで考えても良いのではないかと気になっていたのだ。


 だが、シュレイノリアとしては、そんな事を聞く気も無かったので、今まで聞かずにいたのだ。


 それが、ジューネスティーンの今の発言で、面倒だったからシュレイノリアに、丸投げしていたと分かったのだ。


「なんだ、魔法は面倒だったのか。」


 ジューネスティーンは、一瞬、顔色を変えたが、シュレイノリアの顔色を見てから、その表情も元に戻る。


 ジューネスティーンは、シュレイノリアが、怒っているのかと思ったのだろうが、シュレイノリアの表情には、怒った様な表情が無かった事で安心した表情をする。


 安心すると、直ぐに話し出した。


「そうだろう。 魔法なんて新しい言語を覚えるみたいなもんだろ。 そこまで覚えたら頭がパンクする。」


 ジューネスティーンは、その時の本音を、シュレイノリアに話した。


 だが、シュレイノリアは、勉強を面倒だと言っている子供を見る母親が諭す様に話し始めた。


「人の覚える力は無限に近い。 必要に迫られれば覚えられる。 お前はこの世界の言葉は覚えた。 なら、私程度が覚えた魔法程度なら、お前には容易いことだ。」


 シュレイノリアは、ジューネスティーンなら、あの程度の魔法紋は簡単に作れると思っていたのだ。


 だが、今までそれを行わなかったジューネスティーンが分からなかったのだ。


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