表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

893/1356

アンジュの思い


 アンジュリーンは、少し黄昏たような顔をしている。


(あの時のジュネスの顔って、何だか、大人が子供にプレゼントして、その反応を楽しんでいたみたいだったわ。 本当は、とても嬉しかったの。 エルフの40歳程度なんて本当に子供だし、力だって弱かったのだから、本当は、いつお払い箱にされるかと思っていたのに、あんな事を言ってくれたから、本当は、とても嬉しかったのに、私ったらあんな態度をとってしまったわ。)


 そんな事を思いつつ、アンジュリーンは、1人で含み笑いをすると、直ぐに戻る。


(それからは、ジュネスとシュレとレオンの3人に、私とカミューとアリーシャが加わって、いつも一緒だったわ。 もし、あの出会いがなかったら、私は、シュレとジュネスに、魔法を教えてもらえる事もなかったでしょうし、こんなに強くなることはなかったわ。)


 アンジュリーンは、昔を懐かしむような笑みを浮かべた。


(そうよ。 アリーシャだって、入学当時は、ガリガリで、私より胸も無かったのよ。 一緒にお風呂に入った時だって、腕を上げたら、肋が一本一本分かる位だったし、腰だって、腰骨が見てとれる位で、あんなに丸く無かったのよ。 それが、一緒に寮で生活するようになって、だんだん、変わっていったのよね。 いつの間にか胸の大きさもあんなに大きくなっちゃって、それにあの白い髪の毛、アリーシャは鬱陶しいって言うけど、あのフサフサの白い髪の毛だって、とても綺麗だし、あの身長で、整った顔立ち、真っ赤な萌えるような赤い目だって、魅力的だったのよ。 アリーシャが知らないだけで、結構、ファンの男達が居たのに、全く気にして無かった。 でも、その時には、私達と一緒だったから、誰も声を掛けられなかったみたいだったわ。 だけど、アリーシャのあの胸、あれは、絶対に反則だわ。 せめて、あの半分でも私に有れば、ジュネスだって、私の方をもう少し見てくれたかもっ、・・・。 私ったら何を考えているの! )


 アンジュリーンは、苦い顔をして、頬を少し赤くしながら首を振っている。




 首を振った後は、上を向いて、空を眺めるような顔をしている。


(ジュネスとシュレは、いつも一緒にいて、ただ寝ているだけの間柄なのよね。 シュレがいつもジュネスに抱きついて、まるで、抱き枕を抱いているって感じなのよね。 あれでジュネスは、何も感じないのかしら? まあ、子供の時からいつも同じだから、ジュネスもあったかい毛布程度にしか考えてないのかもね。)


 ジュネスとシュレは、いつも2人で寝ているが、寝ているだけの関係で、それ以上の関係ではないのだ。


 それを転生してから12年間、毎日、同じ状態で寝ている。


 大人の男女の様な関係は一切無いのだが、一緒にベットも共にしているのだ。


 年頃の男女とは思えない行動をしているのだ。




 恋人同士というより、小さな子供の兄妹と言うか、親子の様なと言ってもよい様な関係なのである。


(そう言えば、ジュネスにとって、私とアリアリーシャって、どういった立ち位置なのかしら? シュレは、妹か子供みたいな感じだし、そう考えると・・・。 やっぱり、姉妹程度にしか考えてないのかしら。)


 そこに自分と2人の関係といったら、シュレイノリアとも姉妹の様な感じになっており、ジューネスティーンとは恋愛関係は無いが、友人以上であって家族と言っても良い友好関係を築いている。




 それが、何だか、新たにそんな自分達の関係に、新たに6人が加わってきている様な感情を、アンジュリーンは抱いているのだろう。


 今までユーリカリア達との会食もあり、カミュルイアンとウィルリーンとシェルリーンの関係も深くなっている。


 今日の合同の狩をするのも、カミュルイアンとの関係が有るからだと認識はしているのだが、それがどんどん深くなってきている様に思えるのだ。


 しかも、相手は6人全員が女子で、決まった相手が居そうもないのが4人も居る。


(何だか自分の立ち位置がジュネスから離れていく様に思えるわ。 沢山の女性の中の1人って感じかしら。)


 そんな事を考えていると、その感情は何なのかアンジュリーンは気になったのだ。


( ? )


 アンジュリーンは、そんな思いを巡らせていると、一つ気になることが思い当たる。


(何で、ジュネスの周りに女子が増えると困るの? それって、一般的には競争相手が増えると言う事なのよね。 何の競争相手なの? えっ、えっ、ええーっ! )


 そう思って思考を巡らせる。


 アンジュリーンは、思いを巡らせていて、顔だけでなく、耳まで赤くなっている。




 アンジュリーンは、ふと、ジューネスティーンの顔を覗いてみてから、ギョッとする。


(えっ! まさか! 私、ジュネスに恋してる? えっ! えっ! ええーっ! そんな。)


 そう言って、反対の方を向くと両手で頬を隠す様に触る。


 自分の顔が赤くなっていたらと思うと隠さずにいられなくなる。




 どうしようと思っていると、シュレイノリアが声をかけてきた。


「どうかしたのか? 顔が赤くなっていたぞ。」


 アンジュリーンは、その声に驚いて、体が強ばり背筋が伸びる。


 自分の今の思いをシュレイノリアに知られたら、今のシュレイノリアとの関係が崩れてしまうのではないか。


 そんな感情が頭を過ぎるのだが、アンジュリーンはゆっくりと振り返って、シュレイノリアを見る。


 自分の淡い恋心をシュレイノリアに見透かされたのか心配になり、それを確認しなければいけないという感情と、今の自分の表情をシュレイノリアに見られてはいけないという感情が入り乱れて、どうしたら良いのか分からない状況の中、ゆっくりと、シュレイノリアの方を向いたのだ。


 シュレイノリアを視線に捉えると、シュレイノリアはアンジュリーンを不思議そうに覗き込んでいた。


 そのシュレイノリアの表情をみて、アンジュリーンは少し落ち着きを取り戻している。


(シュレのこの顔は、心配しているだけ。 私の心の中を見透かされたわけではないわ。)


 どう見てもシュレイノリアの表情が、自分を恋敵として見ている様には見えず、自分を心配する様に見ている様に思えるのだ。


 それは、付き合いが長くなった分、顔付きでシュレイノリアが何を考えているのか、大凡、予測がつく様になったから、そうだろうと分かるのだが、アンジュリーンは、自分の感情を押さえ付けるために無理にそう思っているのかもしれないのだが、感情を抑えられなかった様だ。


「ひや、にゃんでもにゃい。」


 アンジュリーンは、呂律の回らない言葉で答えてしまった。


 それをシュレイノリアもジューネスティーンも、不思議そうに眺めていると、シュレイノリアが声をかけてきた。


「顔も赤い。 喋り方も変。 熱でもあるのか? 」


 そう言われて、アンジュリーンは首を横に何度も振ると、2人とは反対の方を向いてしまう。


「何でも無いです。 ちょっと色々と考えてしまっただけですから、気にしないでください。」


 その態度を、2人は不思議そうに眺めている。


 ただ、アンジュリーンには、その沈黙が少し怖かったのだろう。


「少し、時間が経てば落ち着きます。 それまで、ちょっと待っててください。」


 アンジュリーンは、慌てて答えた。


 シュレイノリアは、表情を変えず、アンジュリーンが病気ではなさそうだと思ったのだろう。


「分かった。」


 その声からは、安心した様な感情がうかがえた。


 自分の感情がシュレイノリアには知られて無いだろうと思い、アンジュリーンはため息を吐いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ