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アンジュとジュネスの剣

 

 アンジュリーンは、少し拗ねたような顔をしている。


「もう、ジュネスった、誰に対しても、優しいんだから。」


 ユーリカリア達に対するジューネスティーンの対応は、毅然とした態度ではなく、彼女達が有利になる様な方法を見つけるように対応している事に、自分の気持ちの中の違和感を感じているようだ。




 理屈は、ジューネスティーンとシュレイノリアが言った通りなのだが、何でなのか心の中のモヤモヤが晴れてこない。


 何だか、ユーリカリア達に対しても、甘い対応をするジューネスティーンに少しヤキモチを焼いている様に思えるのだ。


 そんなジューネスティーンの思惑を聞いて、昔、ジューネスティーンやエルメアーナと出会った時の事を思い出していた。




 アンジュリーンは、ジューネスティーンとシュレイノリアと出会えた事で、使えなかった魔法も使える様になった。


 今でも、護身用に持っている腰の剣も、ジューネスティーンが作ってくれたものだ。


 それもエルメアーナの店でのドタバタ騒ぎの後に、直ぐに自分用にと作ってくれて、お礼とお詫びだと言われて、もらったものだ。


 それまで、学費を貯めるためにカミュルイアンと2人で中古の刃こぼれの酷い剣を、ギリギリまで護身用に使っていたのだ。


 それは、ギルドの高等学校に入学した後も使っていた。




 エルメアーナの店でドタバタ騒ぎがあった後、しばらくすると、ジューネスティーンが自分で剣を作って、その時のお詫びも兼ねてプレゼントしてもらったのだが、それまで、剣の様な高価なプレゼントなんてもらった事が無かった。


 その時は、ジューネスティーンが自作したと言っていたので、材料費だけで作った剣なら、ジューネスティーンの手間と材料費だけだと思っていたので、その時は、ありがたく貰っておいたのだ。




 初めてエルメアーナに出会った時は、ジューネスティーンの剣を見せた瞬間、血相を変えてエルメアーナは、剣について聞いてきた。


 お使いで、エルメアーナの店で、ジューネスティーンの剣を見せた時に、エルメアーナの鬼気迫る顔で、剣を作ったのはアンジュリーンなのかと聞かれ、慌てて、表にいるジューネスティーンだと教えた時は、いつ、見せた剣で斬りつけられるかと思える程のものだった。


 その後も、ジューネスティーンが斬られるのかと思える様なエルメアーナの対応と、ジューネスティーンの剣を鞘から抜いて、数分間は、生きた心地がしなかった。




 その後は、店で、延々とエルメアーナの質問攻めにジューネスティーンが対応していたのだが、アンジュリーンも、結局、その対応に3時間程、付き合わされたのだ。


 シュレイノリアと一緒にエルメアーナの店で、一緒に、それを待っていたのだが、シュレイノリアは、石板を出して何かを書き始めていたのだ。


 そのお陰で、アンジュリーンは、エルメアーナの店で、1人で、ただ、待たされていたのだ。


 そう考えたら、自作の剣をプレゼントしてくれたのだから、3時間程、エルメアーナの店で放置されていたお詫びとしてなら妥当なものかと、その時は思った。


 ただ、その時に貰った剣は、アンジュリーンにとって、初めて異性から貰ったプレゼントだったのだ。


 そんな事もあって、その剣はアンジュリーンにとって、とても印象に残った物となっていた。




 だが、1ヶ月もすると、エルメアーナの店で、同等の剣がその後売られる事になってから、売られている金額を見て青くなったのだ。


(自分がこんな高価な剣と同等の物を、しかもジュネスの作ったオリジナルの剣を、自分が持ってもいいの? )


 そんな思いもあって、返そうとした事があった。




 そんな時にもジューネスティーンは、別に問題無いからと言って、そのまま使って構わないと言った。


 ならば、お金を払うと言って、その時、持っていたお金を渡して、不足の分は、これから冒険者としての稼ぎから払うと言ったら、ジューネスティーンは少し困ったような顔をしたのだった。


 ジューネスティーンは、アンジュリーンの申し入れに、少し考えてから、渡そうとしたお金を持った手を優しく持ってくれた。


 男の人に優しく手を持たれた事なんで、カミュルイアンが子供の頃にしてくれただけで、ここ10年以上異性に手を触られた事も無かったのだ。


 アンジュリーンは、固まってしまったのだが、そんな事は気にせずにジューネスティーンは言ってくれたのだ。


「それなら、これから先も一緒のパーティーで活動してくれれば構わないよ。 そうしたら、メンバーの為の投資として、その剣をアンジュに預けるってことでどうだろうか。」


 それまで、一緒にパーティーを組もうと言ってくれた冒険者は居なかった。


 今でも44歳のアンジュリーンは、見た目は、思春期の子供の様に見えるのだ。


 年齢はいっているが、体付きは子供なので、周りからは戦力外として見られていたのだ。


 そんな事もあって、ジューネスティーンの申し入れは、とてもありがたい申し入れだったのだが、アンジュリーンの性格から、素直に応えることは出来なかった。


「私は、人数合わせでパーティーに誘っただけでしょ。 こんな子供じゃ、大した戦力にならないわよ。 投資といっても回収できないんじゃないかしら。」


 アンジュリーンは、初めてもらったプレゼントだったので、本当は返したくは無かったのだが、高価な品と分かって、気が引けてしまったので相談したのだが、ジューネスティーンは、アンジュリーンをメンバーとして認めてくれて、これからも一緒にと、言ってくれた事で、更に嬉しくなっていたのだ。


 ただ、性格的に、舞い上がって嬉しさを表現できないので、笑いを堪える様にして答えた。


「わっ、分かったわ。 ジュネスのパーティーに一緒にいる。 だから、この剣は、その契約料としてもらって、おく、わ。」


 それをジューネスティーンは、嬉しそうな顔で見ていたのだ。


 そんな事をアンジュリーンは、ユーリカリア達の対応を見て思い出してしまったのだ。


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