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ウィルリーンとシュレイノリアの問答


 ウィルリーンは、ホバーボードを乗り物として考えていた。


 その事が、想定される内容について、シュレイノリアとの温度差になって現れていたのだ。


 シュレイノリアとしても、2人の話のやり取りにおいて、新たな発見を見出せると思ったのだろう、ウィルリーンの話に付き合い始めたのだ。


「前進させる為の出力は、後ろへの一方向だけで構わないが、ブレーキは、今の様な感じで分散させて配置させることで、一つあたりの出力は抑えられる。 ブレーキの風魔法は数が多い方が使い勝手が良い。 それと、人が多い所に突っ込んでしまいそうだったら、最悪の場合は、2メートル以上に舞い上がる様にしておけば良い。 人は危険を察知して真上に飛び上がる事はない。 それに人が飛び上がったとしても、大した高さまで、飛び上がれらい。 だから、密集地帯に飛び込みそうになったら上に進む様にする。 ホバーボードは、二次元でなく三次元で考える」


「なるほど、上に行けば良いのか」


 ウィルリーンは、乗り物といったら、馬や馬車の様な地を走るものだけを考えていた様だ。


 上に行くという、シュレイノリアの発想は無かったので、上に行くということが新鮮に感じた様だ。


「有ってはならない事は想定の外に有る。 物を作る前にどれだけその想定が用意できるかによって、安全性は変わってくる。 新しい物を作る時には、その想定を用意しておく必要がある。 作ってみたら動いた。 動かしてみたら事故になった、なんてものは欠陥品以下の代物だ。 あらゆる想定を行って対策を施しておく」


「それでも、想定外というものはあるのではないですか?」


「それは有る。 だが、全部の想定外を予め予測する事は不可能。 考えられる全ての想定を、机上プランニングの時に想定して対策する。 試作品を作って、その試作品と設計における仕様にマッチしていたら、想定していた実験項目をチエックしていく、その時、実験によって起きた現象をチェックして問題点を再確認する。 新たな問題点がピックアップされれば、原因の追求と対策をして、設計の見直しもする。 この時、対策だけを先に考える設計者は、後で大きな問題を引き起こす。 原因を疎かにすると、後に致命的欠陥を見落とす事に繋がる事もある。 原因の明確化は重要」


「試作品の評価は重要なのですね」


 ウィルリーンは、自分がホバーボードを作ろうと考えている。


 基本は、ただの板に魔法紋で動かすだけなのだ。


 ボードを作るより、魔法紋の方が、重要だと思ったのだ。


 その結果が、シュレイノリアに開発に関する考え方を聞くことにつながったのだ。


 魔法紋に関する事を聞くか、魔法紋に刻んだ術式の内容を聞いた方が早いはずなのだが、魔法士としてのプライドが、それを許さなかったのだろう。


 必死に、開発の為の仕様に関する事だけを聞いていた。


「そうだ。 大した問題では無いと考えていても、それが大きな事故の原因になる事もある。 想定外とは言っても、その兆候は試作品の時に発生していた事を、見落としていた事が原因という事が多い。 その見落としを無くす為にも、原因の追求は重要。 それと、その原因が引き起こす影響が、どの程度になるのかを予測する。 設計に妥協は許されない。 妥協は、組織が決める事なので、設計者は、自分の設計した物に、絶対に妥協しないことだ」


 ウィルリーンは、自分がホバーボードの魔法紋を設計するにあたり、その心構えだと思った様だ。


「その通りですね。 私も作るときは、今の話を肝に銘じておく事にします。 ただ、時間的な猶予が無い時はどうするのでしょう。 逼迫する納期に間に合わない時は」


「妥協はしない。 間に合わないのでは無い。 誰にも時間は平等にくる。 忙しいとかは言い訳にならない。 時間を有効活用する方法を自分自身で見つける。 計画通りに進める。 計画を立てる時に想定される問題がどれだけ考えられるかが要になる。 仕事が出来る人は、忙しいを言い訳にしない。 時間を上手く使う方法をいつも考える。 それに諦めない。 常に考える。 移動している時、食べている時、用を足している時、常に考えている。 挙げ句の果てに、寝ている時に、夢の中でも考えている。 それが成功に導く」


「それでも出来ない時はどうしますか?」


「それは、言い訳を見つけているだけだ。 物を作るという事は、常に物の事を考えている。 食事をする時の皿一つも、その材料や作り方表面の処理方法等、考えられる事は全て考えている。 人工的に作られた物、自然物、目に入る物全てに対して考える。 その積み重ねが足りていれば出来る様になる。 それと、実験に失敗したら、もう一度初めから行うのでは無く、一度、失敗の原因を掴む。 現象についての考察を行う。 それが成功に繋がる」


「それでも駄目な時は?」


 ウィルリーンは自分の不安をシュレイノリアにぶつけてしまっていた。


 何度も出来ない時の事を言うのでシュレイノリアはイラついて怒りだす。


「お前は、失敗する事が前提で話をするのか? お前が言っている様な事は、太陽を地上に落とせと言っているのと同じだ。 過去に無かった物を、新たに生み出す前に、お前の精神構造を正せ! 先ずは、自分の無知を恥じて勉強し直すことを勧める!」


 シュレイノリアは、出来ないを何度も言うので、怒りを表に出してしまった。


 ウィルリーンはどうしようかと、アワアワとなる。


 それを見ていたユーリカリアも慌てた様子をするが、どうしたら良いのかと、ソワソワし始めた。


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