ギルドのシステム
ユーリカリアは、酒の席で物知りな冒険者の話に、ギルドが国と戦争になりそうになった話があったのを思い出した。
「ああ、ギルド設立当時の話だな。 それは聞いた事がある。 南西王国がかなり強行に軍の徴用をしたとかで、徴用された下級兵士に不満が多かったが、長期に渡って国境に兵を展開した事が祟って、食糧不足や徴用兵への支払いとかで揉めて、徴用兵と正規兵との衝突が有って、結局撤退したと聞いている」
ジューネスティーンも、概ね同じ事を、ギルドの高等学校時代の座学で聞いている。
ユーリカリアも、その話を知っているなら、話が早いと思ったのだろう。
ジューネスティーンは、ユーリカリアの話を聞く態度を示すと、その後の話をユーリカリアが続けた。
「結局、その後に南西王国に、貸し出す形でギルドが資金援助をして、政権が転覆する直前で、立て直したような話だったと、私は聞いている」
ジューネスティーンに言われて南西王国のことを人伝に聞いたことを2人は思い出した。
「その傾きかけた状態の南西王国をギルドが救わず、そのまま乗っ取る事も可能だった。 でも、ギルドは、それを行わなかった。 ギルドは国としてより、組織として存在する事を選んだ、一つの例だと言えます。 その証拠に、何処の国にもギルドは有る。 今まで頑なにギルド支部の設立を拒んでいた帝国にもギルド支部が出来た。 それとギルドには、大陸のギルドなら、何処からでもギルド支部内で通信が可能となっている。 人や馬を使って、通信文を送る方法しか無いどの国とも違う」
そこまで話すと、ギルドの通信装置について、ユーリカリアもウィルリーンも気がついた様だ。
「ギルドは、タイムリーに情報を得る事が可能な通信手段を持っていて独占している。 情勢の変化は何処の国よりも早くギルド内を伝わる。 もし、ギルドが、何処かの国から戦争を仕掛けられたとしても、戦力分析は早いでしょうし、対策も早いでしょう。 それに、ギルドに戦争を仕掛けて、勝ったとしても国土は広げられないですから、戦争で一番国が欲しいものが無い。 ある物といったら、ギルドが所有している現金位ですね。 ただ、ギルドの金庫は、魔法の迷路になっているらしいから、職員が正規の手続きを行わないと、入っても出れないらしいし、金庫に入れるギルド職員以外が近づくと魔法が発動して金庫に近付くどころか体が動かなくなってしまうらしいから、誰もギルドの金を盗もうとしないからな」
「ああ、私もギルドに盗賊が入ったって話は聞いた事がないな」
「それだけ、ギルドの力は強大だと言う事です。 それに、もし、ギルドが盗賊に負ける事が有れば信用は地に落ちますから、かなりの防御を施していると思いますよ。 また、ギルドの指名手配に落ちたら、この大陸の国では暮らせない事になります」
「ああ、確かにそうなる。 どの国にもギルドが有って、ギルドの通信なら、直ぐに、どの国にも連絡が取れることになる。 向こうの映像も見ることができるから、犯罪を犯した国のギルドが、似顔絵を見せる事も可能だからギルドに睨まれたら、東の森に逃げ込むしか無いだろうな。 ただし、強力な東の森の魔物を相手にできる事が条件になるがな」
「ギルドは、国土を持たない、この大陸一の国家と言っても過言じゃないのかもしれません」
「そうなると、ギルドは国土を持たないが、この大陸の支配者と言っても良いかもしれないな」
ユーリカリアは、ジューネスティーンの言葉から、一つの結論を導き出した。




