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ギルドの創設者

 

 シュレイノリアのギルド創設者のジュールクエームが、未来から転移してきたと聞いて、ユーリカリアやウィルリーンだけでなく、ジューネスティーン達も顔色を変えた。


 その時間も元の世界の時間にして、数千年という事だったので、信じられないのだろう。




 数千年と考えると、1000年から9999年となるのだが、それだけの歴史的な時間がどれだけの成長を遂げているのか、9000年先の世界を考えるとしたら、どんな世界になっているのか、想像も付かない可能性が高いのだ。


 それは、9000年前と現在を比べてみれば、その違いが顕著に分かる。




 シュレイノリアの話に驚いている5人だが、それを気にせず話は続く。


「しかも転移前には、その世界の政治家か政治学者だった可能性が高い」


 5人には、気まずいような沈黙が続く。


 そんな沈黙の中、ユーリカリアが口を開いた。


「それは、飛躍しすぎじゃ無いのか?」


 まさかと思って、ユーリカリアが眉唾のように言うが、直ぐにシュレイノリアは話始める。


「考えて欲しい。 ギルドは、経済的には、魔物のコアを冒険者から購入して、そのコアで召喚した魔物を利用した労働力を提供することで利益を得ている。 それにギルドに所属する冒険者の戦闘力だ。 これは、国の軍事力に匹敵する。 また、冒険者への依頼手数料だけでは、ギルドは、大した収入にはならない」


 そう言われてユーリカリアは納得するが、一つ疑問が浮かび上がる。


「なあ、もし、依頼料の半分をギルドの取り分とすれば、コアの召喚ができなかったとしても、何とか存続はできるのではないのか?」


 それを聞いて、シュレイノリアは思った通りの質問だと思い、顔を少し綻ばせる。


「そんな事になったら、あなたの狩の収入は今の半分以下になる。 冒険者は依頼だけで食べていけるのか?」


 そう問われると、今日のように目ぼしい依頼が無ければ魔物を狩にでる。


 それは、魔物のコアが換金可能だからであって、もし、コアの換金が不可能で、依頼だけで食べていこうと考えたら、今のような生活は出来ない。


 ユーリカリアが、納得したのを見るとシュレイノリアは続ける。


「もし、ギルドが全ての冒険者に、何処かの国へ戦争の依頼を出したらどうなる。 ギルドが、取りまとめて、全ての冒険者に共同の依頼を行う。 ギルドは、依頼の取りまとめをしているのだから、一般の依頼を全て止めて、コアの購入もストップしたら、冒険者は収入源を失う。 その状態の冒険者は、食べるためにギルドの依頼を受けざるを得ない。 だから、ギルドは経済的にも軍事的にも国に匹敵する物を持っている。 だが、国として必要な国土を持っていない」


 言われた通りになったら、自分は食べる為に金を稼がなければならないのだ。


(私が、冒険者以外の仕事ができるか? 露天での販売、飲食店でのウエイターや調理人が出来るのか? その貰える給金が、今の冒険者の収入と比べたら、遥かに低い金額で雇われる事になるんだ。 今、ギルドに預けている個人口座の預金を使って事業を起こす。 いや、ノウハウも不足している。 そんな事になったら、私は、その依頼を引き受ける事になるだろうな)


 ユーリカリアは、シュレイノリアの話を想定してみて、かなり複雑な顔をする。


 シュレイノリアの話を聞いてジューネスティーンが口を開いた。


「まあ、確かにそうだ。 でも武装した商会という側面も持っていると思う。 それに国に近いけど、ギルドは国土を持つ気はないだろうな」


「その意見に私も同意。 それとギルドは、どの国に対しても戦争は仕掛けない。 軍事力を、それぞれの国に貸し出していると考えた方が良いだろう。 その軍事力で魔物の被害を抑える事になるから、ギルドの有る国は軍事費に当てる費用が抑えられる」


 その話には、ユーリカリアも納得できたようだ。


「ああ、それぞれの国を統括とは言わないが、ギルドが、それぞれの国の、軍事バランスを保とうとしている感じはある」


 ギルドの軍事力については、冒険者個人の戦力によるものだが、ジェスティエンの銃や、ジューネスティーンのパワードスーツの出現によって、新たな技術の台頭は、どの国より圧倒的にギルドに集中しているな。


「国どおしが集まって、統一国家を作っている。 ギルドはそんな感じがする。 それは、今の国家の形態にはそぐわない。 統一国家というのは、国と国が、合同の上位の国を作っている。 連邦とか共同体のようなもの、それが機能する方法を上手く考えている。 特に経済的に独立性が保たれているのは大きい」


 今のジューネスティーンとシュレイノリアの話を聞いていると、帝国のような軍事国家はどうかは分からないが、軍事力の低い国もある事から、冒険者を総動員とまでは言わなくても、近隣の国の冒険者を集めれば一国の軍に匹敵するか、それ以上の戦力になる可能性は高い。




 この大陸に有る国の数を考え、小さい国なら、ギルドの冒険者軍団によって滅ぼせる可能性は、かなり高い事に気が付いた2人は、自分達の心配をジューネスティーン達にぶつける。


「おい、それは何でなんだ。 なんでギルドが戦争を仕掛けないと言い切れる。 今の話の内容からなら、ギルドはどの国に対しても戦争を仕掛けられる戦力も方法も可能だろ」


「そうです。 何でギルドは国に対して戦争は仕掛けないと言い切れるのでしょうか」


 ユーリカリアもウィルリーンも、ギルドが国に対して戦争を仕掛ける可能性があることから、今後、ギルドが国に対して、戦争を仕掛けない可能性について、無いと言い切れないと考えて言うと、ジューネスティーンが解説を始める。


「それは、ギルドが国土を持ちたく無いと考えていると思われるからです。 それにそのチャンスは過去に何度もあったと思う。 確か、ギルドの歴史の中に、南の王国と西の王国の間ある南西王国がそうだったはず。 その国にギルドの設立を依頼して断られて、そのギルドの使者が、捕まったか殺されてギルドと冒険者の締め出しを行なったと思いますけど、その時、南西王国は、軍を国境に配置しただけで結局それ以上進む事が出来なかった。 南の王国が、その国の軍の進軍を許可しなかったんじゃなかったかな。 ギルド本部の置かれている建物は、南の王国に有るから、結局、南西王国の国内から軍が出ることは無く終わったけど、その時に動員された軍の費用とかで、国が財政難になって、今まで軍が対応していた魔物の討伐が、思うように出来なくなったとかで、ギルドが、その費用を南西王国に貸し出して、ギルド支部の設立と、魔物の討伐の為に、冒険者を派遣した話を聞いたことがあります」


 ジューネスティーンの話にユーリカリア達は、思い当たる事があった。


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