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ホバーボードの開発の話


 弓矢の速度は、シェルリーンの弓をよく見ているので、弓矢が移動する速度は理解できるのだが、その弓矢の速度で人が移動できる程の速度に驚く。


 馬や地竜もだが、最速の大型の地上を走る鳥でもそんな速度は出ないのだ。


 今、地上を走る最速のその鳥の倍以上の速度で移動できる手段を、ジューネスティーン達は持っているのだ。


 そんなとんでもない技術を持っているのかと考えてしまったのだろう。




 ユーリカリアは、愕然としてしまった。


(こいつらは、もう、そんな移動手段まで手に入れているのか。 弓矢の速度の移動が可能って、どんな能力なんだ。 そんな能力を持った話なんて聞いたことがない。 ……。 いや、だから、あの剣も作れたって事なのか。 それに、さっき言っていた、空間ごと移動って、どういうことなんだ。 全く分からない)


 今の2人のやり取りを聞いていて話に付いていけなかった自分に、やり切れない思いを抱いているのだろう。


 かなり、落ち込んだ様な表情を浮かべている。


(それに、“アコウソクジの移動の理論” とは、何の事なんだ。 全く付いていく事ができない。 ……。 ああ、これが、ウィルリーンが魔法紋をカインクムに見せてもらった時の衝撃なのか。 そうなんだ)


 ユーリカリアは、落ち込んでいた表情から、何かが吹っ切れたような顔に変わった。


(なら、この状況は、私にとっては、チャンスなんだ。 新たな技術が、私たちの目の前にあるんだ。 それを譲って貰うことはできないだろうが、その技術の断片でも理解できれば、私たちにも大きなアドバンテージが得られる。 それにうちには、ウィルリーンという魔法に精通した魔導士が居るんだ。 シュレやジュネス達には及ばなくとも、ウィルリーンなら魔法紋の秘密も理解できる可能性がある)


 ユーリカリアの表情は、どんどん明るくなり始めた。


 吹っ切れた事によって、自分達に無い物を見て、意欲が湧いてきたのだ。


(だったら、このチャンスは、何としても手に入れなければな)


 ユーリカリアは、自分に言い聞かせる様に納得させた様だ。




 ウィルリーンは、シュレイノリアが出したホバーボードの残りの1台とアリアリーシャの運転を交互に見ながら、ジューネスティーンとシュレイノリアの話を聞いていたウィルリーンが、魔法についての話かと思っていたのだが、何か科学の様な話が出てきた事に気がついたのだ。


 さっきの、“じゅうりょく” と今の、“あこうそくいどう” と、言っていた。


 それと、弓矢と銃の落下する長さを、何かの公式を使って計算していた事から、自然現象を何かの方法で計算したのだろうと考えられる。


 2人の中には、前世の記憶の断片の中にある学習した知識が、この世界の知識より遥かな先の話なのでは無いかと思えているのだ。


 それを魔法に応用して新たな魔法を編み出しているというか、応用と言うより活用している様に思えたのだ。




 ウィルリーンは、魔法を師匠から教えてもらったが、自然科学や先程ジューネスティーンが見せてくれた数学については全くの素人と言って良い。


(魔法も科学と言った魔導士を聞いたことがある。 ホバーボードに描かれた魔法紋は南の王国の魔法紋の描き方だが、使われている文字は、見た事が無い文字を使っている様だし、自然科学を応用して魔法に取り込んでいるのであれば、自分には分からない事が有ったとしてもおかしくは無い。 手始めにこのボードがどういった原理で動くのかを知る必要が有る)


 ウィルリーンは、考えている。


 今、目の前で空中に浮かぶ様にして移動するホバーボードを、その動きを真剣に見ている。




 すると、ユーリカリアが、疑問をぶつけてくる。


「なあ、あれ、どうやって動いているんだ。 あれ、空に浮いているよな。 私たちにも作ってもらえないか?」


 支離滅裂に思った事を喋り出し、ジューネスティーンに食ってかかっている。


「ああ、あれは、魔法紋で浮かせて動くようにしています。 ただ、契約が有るので、新たに作っても渡すわけにはいかないのです。 なので、作って渡すのは勘弁してもらえませんか」


「ああ、そう言う事なら作ってもらう事は諦める」


 ユーリカリアが、あっさりと諦めた事について疑問に思うジューネスティーン達だった。


 通常、どおしても欲しい物なら、もっと粘ってくるのが一般的であり、この様な世の中に無い物を初めてみて、しかも魔力だけで移動できるのであれば、盗んでも欲しいと思う物だと考えられる。


 それなのに、あっさりと諦めたことに、意外だとジューネスティーンは考えていたのだ。


 だが、ユーリカリアとしては、ジューネスティーン達との交流が、大きな力になると考えている為、ジューネスティーン達の方針には従う事にしている。




 ヴィラレットの太刀にしても、今の剣より軽量で、通常の剣以上の斬れ味を有している。


 自分達が、東の魔物に対峙しても、剣の性能だけで倒せる相手では無い。


 そう考えると、今のホバーボードも新たな技術の一つであって、東の魔物を倒す為の決定的な物では無いのだろうと思える。


 ホバーボードは移動の手段としては有効では有っても、攻撃の手段としては、まだ足りない。


 それなら、ジューネスティーン達が嫌がる事なら諦める事にする。


「だが、魔法紋って、あんな魔法が世の中にあるなんて聞いた事がないぞ。 なあ、ウィルリーン!」


 魔法紋を魔法で作ってしまうなんて発想を持つシュレイノリアだと、どんな魔法を使って動かしているのかを考えていたウィルリーンは、話をユーリカリアに振られて、慌てて答える。


「は、はい。 私も初めてみます」


 ウィルリーンの同意を得ると、ユーリカリアは、ジューネスティーンに聞く。


「あれはオリジナルの魔道具なのか」


「まあ、そうなります」


「どうやって浮いているんだ。 それにどうやって動いているんだ」


 そう言って、ジューネスティーンに食ってかかる。


「ああ、浮かせるのは、重力魔法で浮かせてますし、動くのは風魔法で動かせてます」


「その魔法はどうやって作ったんだ。 うちのウィルリーンにも使える魔法なのか?」


「あのアイデアは、自分ですけど、魔法紋を作ったのは、こっちのシュレイノリアなんです。 魔法につては自分より上なので、面倒な事は、任せてしまいました」


 ジューネスティーンは、そう言いながら、ユーリカリアの顔が近いなと思っていると、ユーリカリアの胸の前にロットが伸びてきてユーリカリアの胸を押す様にしてジューネスティーンから離すと、シュレイノリアが口を開く。


「顔が近い。 そんなによらなくても話はできる」


 そう言って、ジューネスティーンに迫っていたユーリカリアを離した。


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