表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

871/1356

ホバーボードの移動速度

 

 魔法紋が消えると地面に2枚のホバーボードが置かれている。


 それを指して、ジューネスティーンが、説明を始める。


「これは、ホバーボードと言って、地面の上を滑空できるボードなんです。 これを使うので人の走る速度も持久力も必要としないんです。 じゃあ、ちょっと見てもらいましょうか」


 そう言うと、レィオーンパードをスルーしてアリアリーシャを見た。


「姉さん。 ちょっとお願いできますか。 その辺りを適当に走ってもらいたいんだけど」


「わかりましたぁ」


 そう言うと立ち上がって自分のホバーボードを持って、少し離れるとボードの上に乗る。




 アリアリーシャは、離れたところでホバーボードに乗ると、ホバーボードは、地面から10センチ程浮き上がり、スーッと前進する。


 ユーリカリアのパーティーメンバーは1人を除いて驚いた顔をしている。




 今まで乗り物といったら、馬や地竜といった生き物なのだが、無機質のボードが勝手に動いているのだ。


 ウィルリーンだけは、新たな魔法か魔道具が見る事が出来た事に胸を弾ませ、ホバーボードがどうやって動いているのかを考察している。


 先日の動揺がまるで嘘のようだ。




 アリアリーシャは、ぐるっと円を描く様にまわったり、ジグザグに進んでみたりして、ホバーボードがどんな動きをするかを披露する。


「あれだと、乗る人の体力に影響が出ないので、囮りの体力を考えるより、先に魔物の体力の方が限界になります」


 ユーリカリアは、戦闘力としてのホバーボードが気になったのだろう。


「あれ、どの位のスピードが出るんだ」


 速度が、魔物の走る速さより早ければ、スピードを調整しながら追いかけさせれば、囮となって逃げる方は、疲れる事なく時間を稼ぐ事ができる。


 ユーリカリアは、アリアリーシャの動かしているホバーボードを見てジューネスティーンに尋ねた。


「さーっ、詳しくは測ったことが無いのでなんとも言えませんが、時速60キロ位は出るかと思います」


 すると、ジューネスティーンの横に居たシュレイノリアが話に割り込んできた。


「いや、もっと出せる。 多分、150キロ/時間程度なら平気。 だが、乗っている人が、風圧に耐えられるか疑問が残る」


 ジューネスティーンの言葉にシュレイノリアが補足をするが、ユーリカリアには、その、150キロ/時間のスピードが想像できなかった様だ。


 不思議そうな顔をしているのだが、そんなユーリカリアを気にせずジューネスティーンは答える。


「だそうです。 ホバーボードの魔法紋は彼女にお任せなので、性能については彼女の方が詳しいです」


 ユーリカリアは、ジューネスティーン達に話を合わそうと必死なのだろう。


 少し、顔が引き攣っている様子で答える。


「まあ、そうだろうな。 スピードが速くなれば、その分風圧がかかるだろうな。 馬や地竜に乗って走った時に感じる風も結構な物だからな。 それで、すまないが、150キロ/時間ってどの位になるんだ?」


 ユーリカリアが、話に合わそうとしたが、限界になったのだろう。


 最後は、シュレイノリアに尋ねてきた。


「一般的な馬が、60キロ/時間程、だから、その2.5倍はスピードが出せる。 人が乗ってなければ、180キロ/時間は超えると思う」


 そう言われて、ユーリカリアは、シュレイノリアの説明では、150キロ/時間がイメージできないでいるので、困った様な顔をしている。


 ただ、180キロ/時間と言われて、ジューネスティーンは、その状況をイメージしているのだろう。


 直ぐに、その速度に反応した。


「その時、人に受ける風圧が問題になるってことか」


「まあ、対策すればその影響も受けない」


 それを聞いてジューネスティーンの顔が若干であるが引き攣る。


「なあ、乗っている人が風圧を受けない様にする方法って有るのか?」


「有る。 亜光速移動時の理論の応用。 移動するのは乗り物ではなく、乗り物と乗り手の空間ごと動かせば良い。 移動する時に乗り物の周囲の空間までが移動するのであれば、中の乗り手もボードも風圧を受ける事は無い」


 ジューネスティーンは、納得する様な顔をしている。


「空間ごと移動すれば、その空間の中は、風圧を受けないのか。 空間ごとなら、その中にいる人や物には影響は出ないのか。 まあ、そうなるわな」


「ただ、問題は有る。 攻撃用の剣をその空間の外に出すと剣は影響を受ける。 その時のスピードの影響がその剣を空間の外に出した時、剣を手で持てるかどうか問題がある」


「どうなる??」


 シュレイノリアは考えるが、すぐに答える。


「実験してみないと分からない。 空間の境界線を抜けられないかもしれないし、抜けた瞬間に剣が折れるかもしれない。 それに、最高速度で常に移動しているとは限らない。 状況によっても変化は生じる」


 期待していた解決策の答えではなく、当たり前の答えが返ってきた。


 ただ、2人だけの世界に入ってしまって、周りは置いていかれている。


「まあ、そうだろうな。 なあ、その一緒に移動する空間と外との境目はどうなる?」


「分からない。 ただ、それも魔法紋の組み方で何とでもなると思う」


 ジューネスティーンは、今の説明を聞いて考えている。


 だが、150キロ/時間を質問したユーリカリアは、2人の話に付いていけず、ただ、2人が喋るのを聞いていた。


 おそらく、聞いても何の事なのか理解できずに、右から左に抜けていたのだろう。


 表情が、不思議なモノを見る目をしていた。


「すまないが、150キロ/時間ってどの位の速さなんだ?」


 ユーリカリアの問いかけに、ジューネスティーンとシュレイノリアは、ユーリカリアの質問を答えてない事に気がついた。


「すみません、ユーリカリアさん。 話が逸れてしまいました。 それで、150キロ/時間の速さですけど、ちょっと待ってください。 何かイメージできそうな物を見つけますから」


 そう言って、ジューネスティーンは考える。


 だが、直ぐに閃いた様な顔をしてユーリカリアに向く。


「あのー、さっきの弓矢の話ですけど、50メートル/秒だと言いましたけど、あれを時速に直すと、1分だと、3000メートルなので、3キロになって、時間にすると、180キロ/時間となります。 だから、弓矢の移動する速度より少し遅い程度って事です」


 ユーリカリアは、言葉を失ってしまっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ