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フィルルカーシャの試し斬りと剣の発注


 シェルリーンは、ヴィラレットから剣を受け取ると、すぐに試し斬りの棒を斬ってしまった。


 今までの3人は、間合いを確認したりしたので、斬るまでの動作が長かったのだが、シェルリーンは、もともと、弓をメインに使っていることもあってなのか、直ぐに、剣を振り下ろして、試し斬り用の棒を斬っていた。


 シェルリーンが、直ぐに試し斬りをしてくれた事で、フィルルカーシャに順番が直ぐに回ってきた。


(こんな事なら、順ばんなんかでもめずに、最初からシェルリーンに、先を譲っても良かったわ)


 今まで、間合いをどうのと、微妙に位置合わせをしたり、緊張感を持って試し斬りをしていたのだが、シェルリーンは、剣を受け取って、試し斬りの棒の前に立った瞬間に斬ってしまったのだ。


 ただ、シェルリーンは、斬った時の感じの、余韻を味わっているようだ。


 そんなシェルリーンに、フィルルカーシャが歩み寄る。


「じゃあ、わたしの番だから、その剣、貸してくれる」


 そう言って、右手を出す。


 シェルリーンは、もう少し余韻を楽しみたかった様子だが、仕方がなくフィルルカーシャに剣を渡す。


「おーい、試し斬りの棒付け替えようか」


 ウィルリーンが、フィルルカーシャに言うが、当のフィルルカーシャは、120cmの身長ならば、この程度でも問題無いので、軽く断る。


「あ、わたしは、この長さでも大丈夫です。 どうせ、背が低いですから。 せいぜい、切先が地面に付かない様に気をつけることにします」


 そう言うと、試し斬りの棒に向かって、右から斜め下から斬りあげる。


 薙刀を扱うのだから、身長が低くても、それなりに腕の筋力はあるので、立っていた試し斬りの棒は、簡単に斬り裂いた。


 自分の手に残った感覚を実感するように見ながらフィルルカーシャは呟いた。


「本当に凄い。 こんなに斬れるものなのですね」


 マジマジと眺めながら、ヴィラレットに歩み寄りながら剣を眺める。


 ヴィラレットに剣を渡すと、安心した表情をヴィラレットに向けて自分の意見を伝える。


「これなら、あんたを守ってくれるね」


 ヴィラレットは、フィルルカーシャから大事そうに剣を受け取る。


「ありがとうございます。 この剣で、皆さんの役に立って見せます」


「なんか、フィルルカーシャに良いところ持っていかれた」


 シェルリーンが言いそびれた事をフィルルカーシャが言ってくれたのだが、シェルリーンは少し拗ねたような表情を浮かべる。




 そんな2人をほっといて、ウィルリーンは鞘を両手で持って、ヴィラレットに向く。


「その剣なら、お前の技にも付いてきてくれる。 大事にするのね」


 ウィルリーンが、ヴィラレットに言う。


「ありがとうございます」


 ウィルリーンが持っていった鞘をヴィラレットは受け取って、太刀を鞘に納めさせる。


「納得いったなら、大事にするのよ。 それより、しみじみした話は、そのぐらいで、商談に入らないとな。 ほら」


 そう言って、カインクムの方を向くと、ユーリカリアとフェイルカミラが、何方の剣を先に作るかで、まだ、揉めていた。


「「「あっ」」」


 自分達のことに集中していたために、2人のやり取りが聞こえてなかった、3人が気がついた。




 フィルルカーシャとシェルリーンは、お互いに顔を向ける。


 考えていることは、自分も欲しいのだが、あの2人の中に入って交渉をする気になれないということ。


 それを見た、ウィルリーンが、取り纏めるため、手をパンパンと叩きながら、ユーリカリアとウィルリーンの間に入っていく。


「あんたら2人が、揉めていたら話が進まなくなる。 それに、カインクムさんに、仕事を頼みたいのは、2人だけじゃないんだから」


 そう言って、後ろに居るフィルルカーシャとシェルリーンを親指で指差す。


「ご主人、大変申し訳ないのだが、試し斬りした剣は、ヴィラレットが購入させてもらう。 それと、先程は失礼な事をいって申し訳ありませんでした。 あの剣の素晴らしさは、しっかり伝わりました」


 そう言うと、一呼吸おいて、真剣な表情でカインクムにお願いを始める。


「誠に申し訳ないのですが、その剣と同じ製法で作った剣を、5本作っていただきたい」


「5本って、1本多くないか」


 ユーリカリアが、ウィルリーンに突っ込むと、ウィルリーンも直ぐに答える。


「あんな斬れ味の剣なら、わたしも欲しいです。 魔法職でも、接近戦が、全く無いとは言えませんし、詠唱が間に合わない時の、切り札として持っていたいんです」


 その話を聞いて、ユーリカリアも納得する。




 新たな剣の商談が、5本も入ると思ったカインクムは、長くなりそうだと思ったのだろう、嬉しい様な思いもあるが、今のユーリカリアとフェイルカミラの話を目の前で聞いていたので、色々、揉めそうだと思うと、少しやり切れない表情を浮かべた。


「そういう事なら、中で話さないか。 それぞれの要望も聞かないといけないだろうから」


 カインクムが、家の方を指差す。


 ユーリカリア達も、その意見に同意する。


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