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フェイルカミラとユーリカリア


 フェイルカミラが、カインクムの試作品の剣を、気に入ったので、それについてカインクムに迫ったのだが、かなり真剣になっていた事で、カインクムと顔の距離がかなり近くなっていた。


 それについて、カインクムが、フェイルカミラに茶化したようなことを言ってしまったのだ。


 その一部始終を見ていたウィルリーンが、ヤレヤレといった感じでカインクムをからかう。


「ご主人、そんなこと言ったら、フィルランカになんて言われるかなぁ。 美人で、若い奥さんが妬いちゃうんじゃないのぉ」


 ウィルリーンの表情には、余裕が見えていたので、本気で、そんな事を思っていないのだろうが、カインクムは、慌てて、周りを見る。


 カインクムは、近くにフィルランカが居ないか、確認しているようだ。




 フェイルカミラは、ウィルリーンの横槍で、少し頭が醒めた様子で、カインクムの慌てる様を見て、自分の態度を反省してカインクムに詫びを入れてきた。


「すまなかった。 でも、わたしにも、これと同じものを作ってもらえないか」


 フィルランカが居ない事が分かったカインクムは、少し安心するとフェイルカミラに答える。


「ああ、次はあんたのを作る事にするよ。 長身の嬢ちゃんならもう少し長くするようにする」


 カインクムは、試作品の剣から、新たな発注の見込みができたとホッとしたようだ。


 しかし、それを面白くないと思った者が1人いたのだ。


「ちょっと待てぇ」


 その話に納得いかないと、ユーリカリアが、横から割って入ってきた。


「それは、わたしのを作ってもらってからだ」


 キョトンとするカインクムとフェイルカミラが、ユーリカリアを見る。


 腕を組んで仁王立ちするユーリカリアなのだが、どんなに威厳を持って立ったとしても、身長160cmのユーリカリアは、仁王立ちして、言い合っている、カインクムとフェイルカミラを見上げている。


 そのユーリカリアの声に、2人は見下ろすように見ている。


 なんとも言い難い構図になっている。


「リーダーは、戦斧が専門で、剣は厚みが無いから好きじゃないって言ってたじゃないですか」


 その疑問に、毅然として答える。


「それは、この剣を使った事がなかったからだ。 この剣を知ってしまったら、戦斧なんて使ってられない。 戦斧の刃は部分的だが、この剣なら広い刃があるので、懐に入り込まれても斬る事ができる。 この剣なら剣速も早く取り回しも早い。 わたしの戦斧なんてものじゃない」


 ユーリカリアの話を聞いて、長くなりそうだと判断したウィルリーンが、また、仲裁に入るように話しかける。


「フェイルカミラ、その剥き出しの剣を持って話すような話じゃなさそうだから、剣を私に渡して。 それから2人で話をして」


 ウィルリーンは、フェイルカミラから太刀を取り上げる。


「じゃあ、作ってもらう剣の話、進めて良いよ」


 そう言うと、2人がどっちが先に剣を作ってもらうか話が始まる。




 そんな話し合いは、ほっといて、ウィルリーンは、フェイルカミラから受け取った剣を、ヴィラレットに渡す。


「はい、あなたの番ね。 本当は、あなたが、最初に試すはずだったのに、あの2人に先を越されてしまったわね」


 そう言うと、今度はカインクムに、断りを入れる。


「試してみたい連中は、わたしが面倒見ますから、この2人との商談を進めてください。 でも、どっちが先に作ってもらうか決まるまで、かなり時間がかかると思います」


 そう言って、今度は、カインクムが手に持っていた棒を取り上げて、試し斬りの石の台座に新しい棒をはめる。




 ウィルリーンは、台座からヴィラレットの方に行くと、ヴィラレットは、ウィルリーンにお礼を言う。


「ありがとうございます」


 戻ってきたウィルリーンに、ヴィラレットが、お礼を言うと、ウィルリーンは台座の周りに落ちた、試し斬りで斬れた棒の切り口をみて感心する。


 本職の剣士ではない2人が、見事な断面にしているのだ。


 その断面は、まるで、熟練の剣士の試し斬りのように綺麗に斬られっていたのだ。




 その断面を見つつ、本物の剣士が、この剣を使った時にどうなるのか、ヴィラレットがこの剣を使った時に、どうなるのか楽しみになったのだろう。


(ヴィッラレットの剣技は、本物のはずよ。 私から見ても惚れ惚れするような剣裁きだったのだから、彼女が本気で、本物の剣に出会ったら、どうなるのか楽しみだったのよ。 これで、この剣の良し悪しが確定するわ)


 ウィルリーンの口元が少し緩んだように見えた。


 そして、ウィルリーンは、これからが、本命なのだと言うように話す。


「今日は、あなたの剣をどうするかで来たのだから、本当ならあなたが、一番最初に試し斬りするべきだったんだけど、あの2人が先になっちゃったわね。 きっと、2人とも試してみたくて仕方がなかったのよ。 それだけ、周りは、その剣に惚れ込んでいるってことなのよ。 だから、安心して使ってみなさい」


 申し訳無さそうにするヴィラレットを見るウィルリーンは、その姿が可愛い妹のように思えたのか、僅かに笑顔になる。


 ただ、後ろの方でユーリカリアとフェイルカミラの声は聞こえていた。


「まあ、あの2人は、ほっといて、試してみなさい。 あなたの命を守る剣だから」


「そうさせていただきます」


 自信の無さそうな声をしているヴィラレットにアドバイスをする。


「あなた、自分の力を信じなさい。 そうすれば、その剣はあなたの思いに答えてくれる。 あなたは、自分の力を、過小評価しているから、それが、剣にも伝わるのよ。 自分に使いこなせると思えば、剣もこたえてくれるわ。 自分に自信を持つのよ」


 そう言われると、ヴィラレットは少し考え込んだ。


 今言われた事を胸に刻むように、自分にも、この剣を使う事ができると思い込む事にしたようだ。


 ヴィラレットの顔つきが変わり、試し斬りの棒に対峙した。


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