表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

850/1356

ユーリカリアの試し斬り

 

 カインクムは、ユーリカリア達を引き連れて、裏庭に行くと、試し斬りをするための場所に向かう。


 その場所は、裏庭の端の方に60センチ程の石が、地面に少し埋めるように置いてあるところに行く。


 壁際にその石はあるが、壁からは1メートルほど離れて配置されている。


 石には、穴が4個開いている。


 明らかに、何かを差し込むように、開けられた穴である。




 カインクムは、その石の前にユーリカリア達を連れていくと、家の脇から、太さ5センチ程の棒を持ってきて、丁度良さそうな石の穴に差し込む。


 穴は入口が広く、徐徐に狭くなっているので、ある程度、棒を差すと軽く固定される。


「とりあえず、この位からいってみるか。 最初は誰が試してみる」


 そういうと、先ほど、口を出したエルフのウィルリーンが、両手を肘のところで曲げて手のひらを向ける。


「私は魔法職だから、長剣は得意じゃないので、今日は見る専で、お願いします」


 そういうと、ユーリカリアが、興味があるのだろう。


 直ぐに、試し斬りの話に入ってきた。


「私は戦斧だから、微妙に違うんだけど、両手剣だから、ちょっと試させてもらう」


 そう言って、太刀を受け取って、剣を鞘から抜いて、鞘をウィルリーンに渡す。




 棒の前に立つと右肩の前に剣を立てて構える。


「これだと、重量バランスは違うが、曲剣だから使い方は戦斧に似ているな」


 そう言って、振りかぶると、一気に袈裟斬りに太刀を振り下ろす。




 ユーリカリアは、自分が使ったことのある剣や戦斧の感覚から、カインクムの剣の斬れ味をイメージしていたのだが、その感覚と全く違うと感じたのだ。


「?」


 ユーリカリアは、棒に刃が当たった感覚は有ったのだが、スムーズに刃が入り、木を斬る際にかかる摩擦も思ったよりもかからずに棒を斬り裂いた。


 斬れた棒は、地面に落ちて、ユーリカリアは落ちた棒と立っている棒の切り口、そして、太刀が棒に当たった部分を、ユーリカリアはマジマジと見る。


 ユーリカリアは、斬った時の感覚が残っているのだ。




 いつも使っている戦斧であれば、切れるのではなく、折れるだろうと思っていたのだが、棒の切り口は綺麗に切れており、斬れ味の鋭さを物語っている。


 そんな初めて味わう感覚に、ユーリカリアは、信じられないような表情を浮かべる。


 そんな中でユーリカリアの頭の中に浮かぶものがある。


(魔法付与された剣なのか? これだけの斬れ味を出せているのだから、多分そうなんだろうが、そうなると、銀貨10枚、中銀貨1枚か。 少し安すぎるんじゃないのか?)


 ユーリカリアは、考えながら、剣と切れた棒の切り口、そしてカインクムを見る。




 この世界の貨幣は、白銅貨、黄銅貨、銅貨、銀貨、金貨なのだが、白銅貨以外は、中間サイズの貨幣があり、金貨だけは、大金貨が存在する。


 貨幣の価値は、下からだと次のようになる。


 白銅貨、黄銅貨、中黄銅貨、銅貨、中銅貨、銀貨、中銀貨、金貨、中金貨、大金貨


 それぞれ、10枚で一つ上の貨幣と等価値となる。


 中銀貨1枚となると、白銅貨が100万枚となる金額になる。




 一般的な剣を新品で購入するとなれば、安い物なら銀貨1枚程度だが、高価な物なら、中銀貨1枚と言われても、上位の冒険者なら購入する。


 ただ、魔法紋を付与した魔剣なら、そんな値段では購入する事ができないのだ。


 それを考えると、斬れ味は、魔剣並みで、価格は、一般的な高級剣程度となっているので、そのギャップが、ユーリカリアには理解に苦しんでいるのだろう。




 ユーリカリアは、剣を見ながら、カインクムに問いただす。


「おい、この剣、魔剣なのか。 魔法付与された剣なのか?」


 斬れ味の鋭さに、ただの剣なのか、それとも何らかの魔法紋が刻まれていて斬れ味を増すようにされているのかと思ったのだろう、ユーリカリアがカインクムに尋ねる。


「あぁ、そうか、その剣に魔法紋を刻んだら、もっと、斬れ味が上がるし、耐久性も上がるなぁ」


 カインクムが、呑気にそんな事を言うと、それを聞いて、ユーリカリアは、顔を痙攣らせる。


 ただの剣に、これ程の斬れ味が有るとは、思ってなかったのだろう。


 かなり驚いた表情で、カインクムに聞き返した。


「これ、魔法付与も無く、これだけの斬れ味を維持しているのか」


「あぁ、何の付与もしてない、ただの剣だ」


 ユーリカリアは、自分の持っている太刀をマジマジと見つめる。


 何の魔法付与も無く、剣の持つ性能だけで、木の棒を斬った事に驚く。


 そのユーリカリアの試し斬りを見ていた、他のメンバーも自分のイメージと違う事に違和感を持っている様子だ。




 斬れ味の鋭さに、唖然として剣を見ているユーリカリアは、その表情が、だんだんと新しいおもちゃを手に取った子供のようになる。




 それをみてウィルリーンが、このままだと、その剣を手放さなくなると思ったのだろう、慌てて、ユーリカリアに話しかける。


「あんた、自分だけ試し斬りをするために来たんじゃないだろう。 ほら、今の試し斬り見て、気になっているのが、他にも居るんだから、変わってあげて」


 そう言うと、メンバーの3人がうなづいているが、ヴィラレットだけは、不安そうにユーリカリアを見ている。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ