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アリアリーシャの兜


 ジューネスティーンは、微妙な顔をしている。


 アリアリーシャの耳の開閉構造について、考えているのだろうが、あまり、良い顔をしていない。


(頭は、後頭部の部分を観音開きにするつもりだったけど、耳の事も有るから、それだと、構造的に複雑になりすぎるかもしれないなぁ。 そうなると、上にスライドさせる?)


 ジューネスティーンは、何かを考えては、表情を色々に変えている。


 アイデアが出ては、問題が生じて悩む顔になり、その問題が解決すると、また、表情が戻る。


(いや、スライドも難しいかもしれない。 そうなると、頭頂部から扉が開くみたいに上に上げるしかないのか。 それだと、デザイン的に頭の上に平面ができるのか)


 ジューネスティーンは、アリアリーシャの頭と、石板を交互に見ながら考え込んでいる。


(ん? 前頭葉部分の兜の高さを工夫すれば、頭頂部に平な面ができなくて済むのか。 ただ、それだと、頭の長さが異様に長くなるのか……? あ、帽子の様なデザインにして違和感を減らすって手もある。 そうか、それでいこう)


 ジューネスティーンは、考えがまとまった様子で、強張った表情が緩んできた。


 そして、アリアリーシャを見ると、背中をジューネスティーンに向けて、まだ、耳を立てたり畳んだりしていたのを見る。


「アリーシャ姉さん。 何で続けているの? 耳の運動か何か?」


 それを聞いて、アリアリーシャは、耳が立ったまま止まると、ゆっくりと兜を両手で脱ぐ。


 ゆっくりと振り返ると、その顔は、かなりイラついた顔をしている。


 それが、徐々に顔を赤くして涙目になる。


「ジュネス! あんたが、耳を動かせって言ったから、そうやってたんでしょ」


 そう言われて、ジューネスティーンは、耳の折り畳みを、止めてもいいと言ってない事に、気がついた様だ。


「あんた! ここが部屋の中でも、普段着のまま、加工中の兜を被らされて、私は耳の折り畳みをしてたんです。 周りから見て、その格好の違和感が分からなかったのですかぁ!」


 そう言って、兜でジューネスティーンの頭を叩く。


 ジューネスティーンは、叩かれた頭を両手で抱えていると、その前に仁王立ちして、腰に手を当てたアリアリーシャが、今度は、睨みつけていた。


「ふん!」


 アリアリーシャは、兜をテーブルの上に置くと、アンジュリーンの横に行って座ると、顔をアンジュリーンの腕に埋めている。


 アンジュリーンは、アリアリーシャを抱える様にしてから、ジューネスティーンを見る。


 ジューネスティーンは、痛みを堪えつつ、アリアリーシャの方を見ると、アンジュリーンと目が合う。


 アンジュリーンは、軽蔑する様な目を向けると、直ぐに視線をアリアリーシャの方に向けて、アリアリーシャを抱擁するように抱える。


 ジューネスティーンは、何でなのか分からない様な顔をする。


 よく分からないまま、隣にいたシュレイノリアを見ると、バカな者でも見る様な顔で睨まれる。


「女子に、あまり、恥ずかしい思いはさせるな」


「すみません」


 ジューネスティーンは、何が何だか分からないといった感じで答えた。




 アリアリーシャの耳の動きを掴んだジューネスティーンは、兜の加工に入った。


 兜の側面から、後頭部にかけて、耳を畳んだ時に入るスペースを確保する。


 兜の上面から見ると、側頭部から斜め後方にツノが生えた様になっており、側面から見ると、顎の部分から、後頭部の後ろ、10cmの辺りまで、高さは頭頂部と同じ高さへ緩いRを描いた弧の様な形、こめかみからきた辺と繋がっている。


 三角形というか、扇形を中心で切ったのではなく、1箇所を中心より円の方で切った様な形のものを側頭部に取り付けた様になっている。


 また、兜が無かった時は、三つ編みにした髪を、頭の上に置いた状態でパワードスーツに乗り込んでいたので、髪の毛がパワードスーツから出ていたのだが、兜を取り付ける事で髪の毛の問題も出た。


 首の後ろでカットさせようとしたところ、もう反対にあって、結局、兜の後ろに髪の毛を入れるスペースを用意することとなった。


 後頭部のカバーは、頭頂部に扉の様に持ち上がる様にしたので、それを髪の毛の長さに合わせて、背中まで、覆うようにしておくことになった。


 その後頭部のカバーには、髪の毛を止めるフックを用意しておいて、背中が閉じた時に髪の毛が挟まらない様に配慮させられた。


(アンジュのパワードスーツも、髪の毛について何も考えてなかったから、アリーシャ姉さんの方法を使えば対応できる。 それにシュレにしても、後ろ髪だけ長くしているから、それも同じだろうな。 女子に髪の毛を切るとかって、言うのはやめておこう)


 ただ、この髪の毛をどう扱うかは、今後、アンジュリーンとシュレイノリアとも同じ様なことで揉める可能性があるので、今のうちに対策を施せれば、次のパワードスーツにも対策を施せる。


(今のうちに基本設計を決めておけば、後は、ほぼ同じ方法で考えれば、設計修正程度で済むな。 基本コンセプトは、アンジュ達がクレームを付けなければこれで決まりそうだ)


 ジューネスティーンは、基本コンセプトを頭の中でまとめると、石板に簡単な絵を描いておく。


 残りの2台のパワードスーツも髪の毛の取り扱いを同じ様にしようと考えての行動だろう。


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