耳に合わせた兜の加工
加工用の素材を購入して宿に戻ったジューネスティーンは、食堂で昼食を済ませると部屋のリビングに戻って兜の加工に入る。
兜は、ジューネスティーンの錬成魔法で、兜の形を変形させる。
最初は、加工が簡単に出来そうだったレィオーンパードの兜から始めていた。
耳の位置を確認して、その部分を耳の形に錬成魔法で変形させるため、指を兜の内側、耳のあたる位置に合わせて、魔力を込める。
飴のように兜が変形して耳の形になる。
左右の耳の形に兜を変形させてはかぶり当たり具合を確認させる。
丁度良い形になったら、外側に兜と同じ素材の金属を当てて補強し前方から、外側にスリッドをいれる。
レィオーンパードに確認してもらい、 “OK” が出ると、額の上の辺りに飾りを取付けられる様にすると、飾りの形のリクエストを聞く。
「うーん、飾りかぁ。 ……。 にいちゃん、石板貸して。 少し考えてみる」
ジューネスティーンは、自分の持っていた石板をレィオーンパードに渡すと、シュレイノリアの収納魔法から、新たに石板を出してもらう。
飾りについて、デザインは、レィオーンパードが考えることになった。
その飾りには、防御魔法の魔法紋を描いた物を取付ける事になるが、それは、シュレイノリアが行うことになるのだ。
ジューネスティーンは、その間にパワードスーツに取り付けるために、兜にマスクと顔の側面を作っていき、パワードスーツに固定できる様に細工を施していく。
レィオーンパードの兜が、完成しても、飾りのデザインについて、レィオーンパードが、手間取っているので、その間にアリアリーシャの兜に入った。
兜の形は、耳を畳んだ時に合わせ、戦闘時以外は、耳を出せる様にするので、耳の位置から、側頭部の後ろ側に、細長く切れ込みをいれる事になった。
こめかみの上、その少し後ろから、耳にそって切れ込みを入れたので、側面から見ると、左右ともに、耳の手前、こめかみから顎にかけて、一本の線が入り、こめかみから、徐々に上に向かって後頭部付近まで、その先端を顎に向かって、三角形の形に兜の側面が開けられる。
その兜をアリアリーシャに被らせると、耳だけが、兜から出た状態になる。
アリアリーシャに耳を立てたり、畳んだりしてもらって、可動域を確認する。
耳の位置を簡単に石板に描いてから、おおよその形をイメージする。
耳を畳んだ時の状態と、パワードスーツに入るときに耳が引っ掛からない事を考える。
背骨が開いても、首から上が無かった状態では、耳が引っ掛かる事は考えなくて良かったのだが、今度は、長い耳が引っ掛からない様に工夫が必要になる。
たとえ、耳といっても、装着時に耳が挟まってしまっては、大問題なので、意外に面倒な作業になったようだ。
ジューネスティーンは、アリアリーシャに兜を付けさせたまま、横から見ていたのだが、その後は、後ろを向かせて同じ様に耳を立てたり畳んだりさせる。
ジューネスティーンは、何か思い付いたのかアリアリーシャに尋ねる。
「アリーシャ姉さん。 パワードスーツを装着する時って、耳を立てた状態で装着してもらっても構わないかなぁ?」
突然のジューネスティーンの質問に、アリアリーシャは、若干戸惑ったようだ。
「うーん。 問題ないですぅ。 でも、何でなのですかぁ?」
「多分、耳を畳んだ状態だと、パワードスーツを閉じた時に耳が挟まる可能性がありそうなんだ」
それを聞いて、アリアリーシャは、両手で自分の耳の先を押さえる。
「それは、絶対にダメですぅ。 耳は大事なんですぅ」
その態度を見て、ジューネスティーンは、兜の方向性を決めた様である。
「やっぱり、そうなるよね。 じゃあ、悪いけど、アリーシャ姉さんは、装着の時には耳を立てて装着してね」
「分かりましたぁ。 絶対にそうしますぅ」
アリアリーシャの声は、何だか泣きそうな声で答えた。
耳を何かに挟まれるのが本当に嫌だった様だ。




