帽子の購入
ルイネレーヌとの会食で、敵になるのは、大ツ・バール帝国だけではない事が分かった。
それをハッキリと指摘を受けた事で、警戒する必要が有る内容が増えている事を知ると、ジューネスティーン達は、多少でも目立たない様にということになり、帝国風の服もだが、アンジュリーンとアリアリーシャの要望で、帽子を用意する事にした。
翌日は、フィンシェルの店に行き、帽子を売っている店と、防具か、その素材を扱う店を、数店、紹介してもらう。
最初は、紹介された帽子の店に向かう事にして、女子2人の帽子を買う事にした。
そのついでに、男子2人の帽子も用意しようかと、考えていたのだ。
幸い、大ツ・バール帝国は、内陸部ということもあり、降水量が少なく、晴れの日が多いため、日差し避けの帽子をかぶる習慣が有るので、帽子の店も近くにあった。
ただ、シュレイノリアだけは、自分の帽子が有るので、購入する事は無かった。
全員が、大きめの日差し避けのハットになるのだが、かなりツバの広めのハットを選んだ。
アンジュリーンは、自分の耳よりも広いツバの帽子で、ツバが少し柔らかいのだろう。
波打った様なツバが、丁度耳の前の辺りが下がっており、前から耳の半分以上が隠れる様になっているが、形が波打っているだけの様で、ツバはそれほど柔らかくはない様だ。
女の子らしさが強調された帽子を選んでいる。
そして、帽子の右側の側面には、花の飾りが付いており、アンジュリーンの性格を表す様に、自分の存在をアピールする様な感じである。
カミュルイアンもツバの広い帽子を選んでいた。
カミュルイアンは、見た目から、男女のどちらか見分けが付きにくい事を、嫌がっている為なのか、アウトドア向けのサファリハットを選んだ。
広めのツバは、僅かに下の方に向かっているので、アンジュリーン程ではないが、デザイン的にも耳が分かりにくい様な形になっていた。
そして、ライトグレーの色が、多少ではあるが、保護色の様になっている。
レィオーンパードは、最初は、キャップを選んでいたのだが、耳を隠す為なのだと、ジューネスティーンに言われて、少しガッカリしながら別のものを探し始めた。
ただ、レィオーンパードは、エルフの2人や、アリアリーシャ程、耳が長くないので、エルフの2人が選んだようなツバの広いものではなく、それ程広くは無い中折れハットを選んでいた。
そのレィオーンパードの選んだ中折れハットを見て、ジューネスティーンも同じデザインのサイズ違いの色違いの物を選んでいた。
ジューネスティーンは、耳を隠す必要も無かったのだが、1人だけ帽子無しだと、逆に目立つと思ったのだろう。
積極的に選ぼうとして無かったので、レィオーンパードの選んだものを見て、直ぐに選んでいた。
ただ、1人だけ、中々決まらなかったのは、アリアリーシャで、自分の耳が隠れてしまうのが嫌な様だ。
そんな中、アンジュリーンが、髪の毛が外に出せるサファリハットを見つけてくる。
「髪の毛が出せるなら、耳も出してしまえばいいでしょ。 逆に、帽子の脇から出た耳が、飾りの様に見えるんじゃない」
そう言って深めのサファリハットをアリアリーシャに被せて、多めの白い髪を三つ編みを帽子の後ろの穴から出すと、耳の部分のツバの部分を指して提案してきた。
隠すのではなく、逆に見せる事で、飾りの様に見せてしまえばという、アンジュリーンの提案を聞いて、納得すると、その帽子を加工してもらって使うことにした。
その加工のお陰で、帽子屋では少し時間を食ってしまうが、アリアリーシャは納得した様子で、かなり気に入った様である。
店を出る時にアリアリーシャは、アンジュリーンにお礼を言っていた。
ただ、アンジュリーンを見ていると、凄くテレたような顔をしているのが気になった。
アリアリーシャは、何か食い下がっている様だが、アンジュリーンは、顔を少し赤くして、胸の前で手のひらを見せる様にして、断る様に両手を振っていた。
どうも、アリアリーシャがお礼を言う時に、何かを言った様であるが、女子達だけの間にしか伝わっていなかった様だ。
男子には、聞かれたくないというか、知られたく無い女子だけで通用する、お礼をしてあげると言ったのだろうが、アンジュリーンは、それを断っている様だ。
帽子を購入してから、全員で防具屋と素材屋を回る。
服装には、全員が帽子が追加されて、着ている服はそのままだが、腰には護身用に全員が剣を下げる様になった。
ただ、シュレイノリアだけは腰に剣を下げずに魔法職用の杖を手に持ったままだった。
女子3人が帽子をかぶった事で、かなり、感じが変わってきた。
特に、前にいるアリアリーシャの耳と後ろ髪が帽子の外に出ているのを後ろから見るのは、何とも言えない感覚である。
今までは、三つ編みの髪が背中に掛かっていたので、首を左右に動かしてもそれ程動いたように見えなかったが、帽子から髪の毛が出て、その髪がツバの上に乗っているので、首を動かすたびに大きく揺れるのだ。
特に、アリアリーシャの身長が、130cmで、シュレイノリアが160cm、アンジュリーンが162cmと2人がほぼ同じ身長と言うこともあり、女子3人で並ぶと、アリアリーシャが中央に来ることが多い。
そうなると、おしゃべりの際には、アリアリーシャは、左右両方に顔を向けるので、その都度髪の毛が左右に揺られているのだ。
また、店で加工してもらって、アリアリーシャの耳が帽子の外に出ているのだが、通常は後ろに折っており、それも、何かの飾りのように見える。
後ろから見ると、姉2人の間に妹が並んで歩いている様に見える。
ただし、それはあくまでも後ろから見た時の話である。
今日の買い物の目的は、前衛2人の頭部の装備の変更になる。
昨日の様な魔物でも、不意を突かれて、頭に怪我を負ったら、致命傷になりかねないので、その対策を行うためである。
また、本来の目的である東の森へ入ると、今以上の魔物になる。
街道での戦いは、目標物が分かっていたが、新たな土地で情報も乏しい状態となるので、魔物に奇襲をされた時のことを考えての対応である。
また、亜人拐いを警戒するために、歩き方も工夫して、後ろから1人で付いてくるような事にならない様にして、基本は、女性3人が並んで前に、男3人がその後に続くといった感じである。




