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ギルドに戻って


 日が殆ど沈み、空が赤く染まり周囲が徐々に暗くなってきた頃に、ジューネスティーン達は、ギルドに戻る事ができた。


 夜になると、夜行性の魔物に襲われる危険性が増すので、依頼でも無い限り、塀や城壁の外、街道などの夜の移動は冒険者でも避ける様にしている。


 ジューネスティーン達は、シュレイノリアの魔法の実験の影響で、ずぶ濡れになってしまった事と、パワードスーツの内装が濡れてしまったりで、それらを乾かしていたことで、戻る時間が遅くなってしまい、結果として、ギルドに着いた時には閉店寸前だった。




 ジューネスティーン達はギルドの入口付近に馬車を止めて、ジューネスティーンとカミュルイアンとレィオーンパードの3人が降りる。


 シュレイノリアが革袋に入った魔物のコアをジューネスティーンに渡すと、馬車から降りて地竜の頭や首を撫でにいく。


 シュレイノリアに地竜が懐いているので労いに行っている。


 御者席にはアリアリーシャが座り、シュレイノリアが地竜と戯れているのを眺めている。




 3人はギルドに入ると、ギリギリだったので受付嬢達は閉店の準備を始めていた所だった。


 受付嬢達は閉店間際に来たジューネスティーン達をみて嫌な顔をしていたが、ルイゼリーンが快く対応してくれた。


「今日は遅かたですね」


「すみません、湖の水をかぶってしまった服を乾かしていたら、時間が掛かってしまいました」


 ジューネスティーンは遅くなった理由を説明しつつ、依頼されていた魔物のコアをカウンターの上に置く。


「あら、湖で水遊びですか、たまにはいいかもしれませんね。 でも、1ヶ月前ならまだしも、今の時期はおやめになった方がよろしいですよ。 風邪をひきますから」


 ルイゼリーンの顔は笑顔で、言葉は少し悪戯っぽく言うと、ジューネスティーン達は苦笑いをする。


 その表情を面白そうに見るルイゼリーンだが、周りの受付嬢が視線で早く終わらせろと言っている。


「いえ、そうでは無くて、ちょっとしたアクシデントがあって、湖に入ったわけではないんです」


 言い訳をすると、ルイゼリーンは、頭を傾げて、何だろうという顔をしたが、考えるのはよして、立ち上がって、カウンターの魔物のコアを手に取りはじめ、前屈みになってジューネスティーンに自然に顔を近づける様にして小声で話しかけてきた。


「そうですか。 でも、あまり無理はなさらない様にして下さいね」


 魔物のコアを受け取ると、コアの査定を行って、依頼の報酬とコアの買取金額と合わせて、カウンターに置く。




 換金が終わると、ルイゼリーンが、思い出した様に、ジューネスティーンに声をかけた。


「そうでした。 あなた宛に電信が来ておりました。 ジュエルイアン商会から、 “近いうちに残りの荷物も出発できる” と、連絡が入っておりました。 遅かったので、てっきり、明日になるかと思っていたので、うっかりしてしまいました」


 何気に、遅くなった事を責めている様に思える発言に、悪いなと思いつつ、ジューネスティーンは答える。


「ああ、ありがとうございます。 それ以外には何か有りましたか」


「いえ、それだけでした」


 残りの荷物とは、3台のパワードスーツのことを指す。


 計画通りなら、残り3台が納品になる手筈になっている。


 もし、計画に影響が出た場合は、何か言ってくるであろうが、そんな事は無かった様子なので安堵する。




 ルイゼリーンは、それだけ伝えると、今日の依頼のお礼を言ってきた。


「でも、今日の依頼は助かりました。 足の速い魔物なので、引き受け手が居なかったので助かりました」


 ルイゼリーンは話を切り替える。


「攻撃力は、それ程無かったけれど、あのスピードで複数に攻撃されると厄介ですね」


「ギルド内でも、どのパーティーに依頼を出しても引き受けてもらえなくて、困っていたんですよ。 引き受けて頂けて助かりました。 金額が低目だったので、費用対効果が良く無いとかで、他のパーティーが引き受けてくれなかったもので」




 すると、ルイゼリーンに合図を送ると、ジューネスティーンは今の話に載せて、パワードスーツの報告を行う。


 ただ、可能な限り周りに聞かれても、どうという事の無い様に伝える事にする必要があるのだ。


「こちらとしても、初めての魔物だったので、いい勉強になりました」


 ジューネスティーンは、少し考える。


 その様子を見ていたルイゼリーンは、2台のパワードスーツの組み立ても終わっている事を、情報部から報告を受けていた事で、ジューネスティーンは、今後の東の森へ行く為の準備が、進んでいることも知っていた。


 その事から、ジューネスティーンが、その話をしたいのだろうと思った様だ。


「ああ、適当に言葉を変えて、話していただければ構いませんよ。 まだ、準備は完全じゃないでしょうから、今は、大凡の事が掴めれば構いませんから」


 そう言って、ジューネスティーンを安心させてくれた。


「ありがとうございます」


 そう言うと、ジューネスティーンは、安心して話し始めた。


「装備の方も、いい感じでした。 今後の課題も見えてきたので、戦い方に少し修正を加えようかと思ってます。 それと、装備の手入れなんかも、行うことになりそうです」


『新たなパワードスーツの試運転はいい結果だった。 それで修正箇所があったので、調整をしようかと思っています』


 ルイゼリーンもジューネスティーンの思惑が通じたので、それらしい反応を示した。


「そうですか。 それは良かったですね。 でも、装備の手入れとかは、大変じゃ有りませんか? 時間がかかりませんか?」


『いい結果が出て良かった。 装備の修正に時間は掛からないのですか?』


 ルイゼリーンは、それを聞いて笑顔を向けた。


(ああ、時間がかかる変更か銅貨聞いているのか)


「それぞれから確認しながら、行っていくだけなので、それ程、大変な作業にはならないと思います」


『要望を確認しながらの修正ですので、作業に時間は多く掛からない』


(ああ、それぞれの要望を聞いて、修正を加えるのね。 それには、時間は大して掛からないのか)


 話を聞いた限り、順調に進んでいると、ルイゼリーンは思った様だ。


 それなら、目的の、東の森の調査について、計画通り進めていくことで、帝国から依頼を引き受ける事も可能だろうと、安心したのだ。


「そうですか、それは良かったですね」


 周りに聞かれても、冒険者と受付嬢の日常的な会話ではあるが、お互いに相手の思惑を受けている。


「これからしばらく、依頼を受けたり、反省会をしたりになります」


『しばらくは、魔物と戦って、問題点を修正しつつになります』


(おお、完成したからといって、それで終わりだと思ってないのか。 あの装備は、まだまだ、新装備や新しい武器とかが付きそうね。 楽しみだわ)


 2人は、自分達の会話が面白いと思った様だ。


 お互いに相手の思惑を、言葉の中の単語を拾って読み取ることが面白い様子だ。


「分かりました。 依頼はそちらのご都合に合わせます。 今のペースでこなして頂ければギルド的には問題ありません」


『それで良いでしょう。 スケジュールに問題はありません』


 お互いに相手の言葉の内容から、目的の言葉を当てはめて、パワードスーツの状況報告も終わる。


「それでは、これで失礼します」


「はい、今後ともよろしくお願いします」


 挨拶をするとジューネスティーン達3人はギルドを後にするのだった。


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