事後処理
湖の水が、湖畔に津波となって流れ出た。
湖は、ほぼ円形をしており、入り組んだ地形ではないので、湖の全周を見渡す事は可能だ。
向こう岸まで約200メートルといったところだろうか。
シュレイノリアの魔法の影響で湖の水が、津波となって、湖の中央から、湖畔に向けて1メートル程の高さの津波となって湖畔の外側にむっかって流れたのだが、運動エネルギーが尽きたところで、津波は止まり、押し上げた水は、ゆっくりと湖に戻った。
だが、湖面は、その余波が湖面を行ったり来たりしている。
それと、湖の湖面は、シュレイノリアが魔法を放つ前より、僅かに低くなっている。
一旦、湖の外に流れていった水が、全部は、戻ってきてないのだろう。
ジューネスティーンは、パワードスーツ内のビュアーで周囲を確認すると、湖の水がもう一度津波となって押し寄せる気配は無いと判断したのだろう。
抱き抱えていたシュレイノリアの体に回していた腕を広げて、シュレイノリアを解放して立ち上がる。
立ち上がると腕の盾が、足元の方に伸びていた。
津波に対して背中を向けていたので、腕の盾が水の力がかかってしまうと、咄嗟に盾を腕の先の方に伸ばして、やり過ごした様だ。
そのままの状態で、ジューネスティーンは、パワードスーツから出る。
地面に降りたって、湖畔を改めて確認する。
ジューネスティーンは、湖畔までの距離が少し遠くなったと感じている様だ。
岸辺の見えている土の感じもだが、自分とシュレイノリアの2人が立っていた位置と湖畔までの位置を何度か目で追っていた。
ジューネスティーンが、そんな事を確認していると、後ろでシュレイノリアがぼやいた。
「うー、ビショビショになった」
シュレイノリアが呑気に水に濡れたことをいう。
湖を見ると、湖畔の水辺がが先に行っているので、明らかに湖の水の量が減っている事がわかる。
湖の水辺が後退したとジューネスティーンは、感じてから、左右を見る。
左右の湖畔には、津波と一緒に湖の魚が、一緒に流れてきたのだろう。
湖畔に魚が打ち上げられて、跳ねている。
「確かに、これなら熱気の影響は無かった」
イラッとしているジューネスティーンが、シュレイノリアに呟く。
「でも、これだけの影響がでるとはどういうことなんだ」
「空気中の燃える物質だけを集めて、圧力を加えて、発火させた。 ただそれだけ」
魔法の事ではなく、湖の水が減って、魚が打ち上げられている。
その状況についての話をしたつもりなのだが、シュレイノリアははぐらかそうとしているのだろう。
話を魔法の方に逸らそうとしているのが見え見えである。
「急激に圧力を加えて圧縮すれば、気体の温度が上昇するから、着火温度に達してしまえば、爆発するだろうな」
「うん。 次から気をつける」
あっけらかんと言い放つシュレイノリアを、困ったものだと言う顔で見るが、どんな魔法だったのか気になる。
「ところで、今回の魔法はどんな魔法だったんだ?」
「大気中の水素と酸素を2対1で集めた。 それを圧縮させる。 圧力が上がると温度が上がる。 水素の発火点まで圧縮して温度を上げれば爆発する。 爆発と同時に加えた圧力を解除する。 ただそれだけだ」
体積が小さくなる様に圧力を加えれば、温度が上がる。
水素の着火温度になれば燃える。
水素濃度が高ければ燃えると言うより爆発する様に燃えるなと原理を考えていた。
理に叶ったことだと思いつつ、周りを見ると、湖畔に湖の魚が打ち上げられて跳ねている。
ジューネスティーンは、パワードスーツを収納魔法に収めさせると、2人で4人の元へ行く。
近づいてみると、全員髪の毛がビショビショに濡れてしまっている。
カミュルイアンは、地竜を宥めてくれていた様だ。
地竜の手綱を持って、首のあたりを撫でている。
「大丈夫か?」
すると、アリアリーシャが、少しベソをかくように答える。
「ひどいですぅ。 髪の毛が、ずぶ濡れですぅ。 それに、首元から、水が入ってきましたぁ」
「ああ、にいちゃん。 俺も首から水が入ってきたぁ。 ちょっと、少し、乾かしたよ」
そう言ってパワードスーツから出ようとするので、ジューネスティーンは、待つ様にいう。
「ああ、そこじゃあ堤防とかが有るから、場所を変えてからにしよう」
それと、後ろのアンジュリーンを見ると、着ていた服もずぶ濡れで、体にくっ付いてしまっているのが気持ち悪いのか、服を肌から離すような仕草をしている。
「このままじゃあ、病気になりそうだから、少し乾かしてから戻ることにしよう。 それに、周りには、魚も打ち上げられているから、少し食べてからにしよう」
そう言うと、ジューネスティーンは、カミュルイアンを呼ぶと、一緒に薪を探しに行く。
「残りは、堤防を戻して、かまどを作っておいて、それと、少しだけ、打ち上げられた魚から、ちょうど良さそうな大きなのものを、拾い集めておいて」
そう言うと、シュレイノリアが、ジューネスティーンに話しかける。
「この程度の堤防なら、すぐになおる」
そう言うと、ロットを堤防にかざすと、崩れるように外側に広がる様なり、地面は平になった。
「はいはい、ちゃんとできたね」
ジューネスティーンは、子供をあやす様な言い方をする。
「パワードスーツの中は、私が、乾かしておく。 薪も濡れていても構わない。 私が魔法で火をつける」
そう言うと、レィオーンパードとアリアリーシャを並べて配置すると、2人ともパワードスーツから出てもらう。
背中は、開いたままにしておくと、シュレイノリアは、ロットをかざす。
「暖かい空気を循環させる。 しばらくすれば、中は乾く」
そう言うと、ジューネスティーンに向く。
「何してる。 さっさと薪になりそうな物を探してくる」
「ああ、分かった」
ジューネスティーンは、シュレイノリアの魔法に見入っていて薪を集めるのを忘れていた。
カミュルイアンも同様だった様なので、声をかけてから、薪を集めに行く。
シュレイノリアは、かまどの錬成に入ると、残りは、湖畔に打ち上げられた魚を集めに行った。




