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ファールイの逮捕


 戻ってきた、誘拐の実行部隊が御者を残して全滅したことを知ると、ファールイに怒りが込み上げてくる。


(次の手を考えなければ! このままでは、フゥォンカイを出し抜いた意味が無い! そうだわ、国務大臣で国内警務担当であるソツ・キンクン・コルモン伯爵に動いてもらえばいいのよ。 そうよ、彼に冤罪をでっち上げさせて、6人全員を逮捕させて、こっちに回させればいいのよ。 そうよ。 この時の為に遊ばせてあげてたのだから、今回は私の為に動いて貰えばいいのよ。 そうよ。 駆け出しの冒険者なら何とでもなるわ)


 大臣の命令で、ジューネスティーン達を捕らえさせたのち、秘密裏にこちらに引き渡させれば良いのだと、ファールイは考えた。


(最初に、この案をお願いしようとしたけど、会う事ができなかったけど、今度は、絶対にコルモンと接触して、首を縦に振らせる)


 そう思うと、馬車が到着した事を伝えにきて、そのままファールイに着いてきた執事に、ファールイは、指示を出す。


「コルモンの所に行くわ! 直ぐに支度を!」


 執事は、死体を見て呆けていた。


 今まで、捕まった奴隷を見る事はあったが、死体を見る事は無かったので、驚いてしまった様だ。


「何を呆けているの! さっさと、用意をしなさい!」


 呆けている執事に、ファールイは、檄を飛ばした。




 ファールイが執事に指示を出していると、御者が、コルモンと言われて思い出したようにファールイに伝える。


「それともう一つ、ソツ・キンクン・コルモンはこちらについた。 お前との縁は切れた。 そう言ってました」


 それを聞いて、ファールイは、何を言っていると言う顔をする。


(どう言うこと? コルモンとは、何度も夜を共にして、自分の上に乗りあった仲なのよ。 今迄、どんな時でも、呼び出されれば、どこにでも行って、望む通りの事をさせてあげたのよ。 そして、必要とあらば、私の奴隷達を弄ばさせては楽しませていたのだから。 コルモンは、私の願いを叶える義務が有るのよ)


 ファールイは、青い顔をしている。


(コルモンの事は、他の貴族にも、彼の家族にも知られる様な、へまはしてない。 この屋敷もコルモンが安く購入したものを私が高額で買い取っている。 賄賂にならない様に、取引と称して、渡った金額は莫大なものなのよ。 その金のおかげで、子爵から伯爵になり今では国務大臣の国内警備担当になっているの。 だからコルモンは、私を裏切る事はできないのよ。 皇族の血筋でも無く、皇族の血縁者と婚姻を結んでもいないのに、そこまでの地位と名誉を与えるために、私が貢いだ金が物を言ったのに、その縁がそう易々と切れるはずがないわ!)


 ファールイがそう思っていると、屋敷の玄関の方が何やら騒がしくなった。




 すると、停車場の屋敷側のドアが開くと、帝国の警ら隊が入ってくる。


 警ら隊は、ファールイを見るなり、全員を囲むように広がる。


 そしてファールイの足元に転がっている男の姿から明らかに死んでいると分かる。


 それを見た、後から入ってきた、警ら隊の隊長らしき人が、ファールイに宣言する。


「レミン・インファ・ファールイ! 殺人の現行犯として逮捕する」


 それを聞いて、唖然とするファールイが、一瞬、信じられないといった顔をすると、慌てて、警ら隊の隊長らしき人に訴える。


「何を言っているのですか?」


 そう言うが、足元に転がっている死体を、隊長らしき人が、指して答える。


「その足元にある死体が動かぬ証拠だ。 1班、ファールイ達を取り押さえろ!」


 そう言うと、その場にいた、ファールイ達を、取り押さえる様に部下に指示をする。


 隊長は、余った部下を見て、次の指示を与える。


「2班は、馬車の中も調べろ。 それと、残りの班は、敷地内の人は、全て逮捕、取調べ後に、奴隷と分かった人と亜人からは、話を聞き誘拐罪の証言をとる。 屋敷の中は、徹底的に調べ、書類は全て押収、それと建物以外の物品は、リストを作成しつつ、財務省に移送する。 分かったら直ぐに取り掛かれ!」


 取り押さえられたファールイが、罵声を隊長らしき人に浴びせる。


 すると、直ぐに取り押さえている隊員に指示を出す。


「ファールイは気が触れたようだ。 面倒なので、この猿轡を噛ませろ」


 隊長は、停車場の壁に掛かっていた、猿轡を指差して、取り押さえに参加している隊員の1人に指示を出す。


「騒ぐ様なら、ファールイ以外にも使ってよし」


 退院は、隊長に言われるがまま、猿轡を噛ませる。


 ファールイは、いつもは自分が奴隷紋を刻む時に使う猿轡を、自分にかまされたのだ。


 暴れたことで、綺麗にセットされた髪も、かんざしが取れてしまい、長い髪がはだけてしまう。


 猿轡をかまされていて何かを訴えていたのだろうが、連行されていく時には、うーうーと唸り声が聞こえていただけだった。


 その目は血走らせていたが、猿轡のせいで、誰にも言っている事はわからなかった。


(危なかった。 ソツ・キンクン・コルモン様の名前を出して騒がれるかと思っていたが、直ぐに猿轡を使わせて正解だった)


 彼は、ファールイが、自分の上司でもある、大臣のコルモンの名前を、だされるのが嫌ったのだ。


 ファールイが連れ去られた後に隊長は、馬車の前と中の死体が、馬車の横に並べられたのを見るとつぶやいた。


「準備していた死体は不要だった様だな」


 そう言って3体の死体を確認する。


 どう見ても、女のファールイの手によって殺された死体では無いが、十分な証拠となると、隊長は思った様だ。


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