戻った実行部隊
ファールイは、実行部隊からの連絡要員によって、エルフの男女と人属の女の誘拐を実行すると報告を受けた。
体型からして、かなりの強者だと思われる、ジューネスティーンと別れて、3人が別行動をした事を聞き、エルフを捉える絶好の機会と判断したのだ。
ファールイは、予め実行部隊に優先順位を伝えてあるので、ジューネスティーンと別れて、エルフの2人が別行動に移った事で、実行部隊は、行動に移ったのだ。
その報告を受けたのだ。
また、メンバーが6人から3人になれば、残りの亜人も、自分のものにする為のチャンスは出てくる。
今回の方法でも構わないし、パーティーの人数が減れば、人を集めて、魔物との交戦中に、対象達を襲う事も容易になると、考えているのだろう。
手筈通りに実行部隊を動かしているなら、直ぐにここに連れてくる事になる。
最近は疎遠になりつつある帝国貴族であって、国内警務担当の大臣でもある、ソツ・キンクン・コルモン伯爵に、若いエルフを娼婦として遊ばせることで、ファールイは、自分への関心を呼び戻す事にするつもりでいた。
(若いエルフを抱かせて、自分がコルモンの体を刺激してやれば、直ぐにでも虜にできる。 若い時から、コルモンが刺激を感じる場所は全て知っているのだから、じっくりと楽しませてあげるわ)
ファールイは、これから先の計画を立てて、顔を綻ばせている。
(でも、動きが早かったフゥォンカイには焦ったわ。 あの老人達に頼んで正解だったわね。 この時の為にしっかり、私の上で遊ばせてあげたのだから当然の事だわ。 まあ、これが成功したらもう一度抱かせてあげないと、まだ、私の役に立って貰うこともあるかもしれないから。 でも、老人を満足させるのは、時間が掛かるけど、その程度は我慢してあげるわ)
ファールイは、話を合わせてもらった長老達への報酬は、自分の体で支払うので、安い物だと考えているのだった。
(問題は人属の女をどうするかなのだけれど、ほとぼりが覚めるまで、ここの地下牢で精神的に痛めつけてもいいし、酒や薬漬けにしても構わないわね。 言う事を聞く様になってから、どこかの娼館に売って仕舞えば終わるわね。 それとも、あのエルフと一緒に貴族達の慰み者として使ってみるのも悪くはないわね。 大勢の女とするのが好きなのも居たから、その時の為に用意しておいてもいいのかもしれないわ)
すると、ドアがノックされると、執事が入ってくる。
「馬車が戻ってまいりました」
「分かったわ。 直ぐに行きます」
(いつもより早く馬車が戻ったわね。 邪魔が入らなかったのかしら)
ファールイは、部屋を出て、停車場に向かう。
ファールイの襲撃用に使う馬車は、4頭立ての高速馬車を使っている。
特注の馬車で、軽量化も施されているので、かなり速く走れる。
追手がかかれば、その4頭立ての高速馬車が威力を発揮するのだ。
馬車も可能な限り軽量に作らせて高速で逃げられる様にしているので、慌てて追いかけても、直ぐに差は広まってしまい、通りを何箇所か曲がれば、見失ってしまうことになる。
そうなれば、屋敷に戻るまでには少し時間が掛かってしまう。
ファールイは、追手が無かったのかと思いつつ、屋敷の停車場に向かう通路を歩いていた。
停車場は、屋敷の脇にあり、屋敷の馬車専用の通用門から入ってしまえば、停車場までに続く壁と屋根で覆われているので、敷地の中からも外からも見る事が出来ない。
その通路中を通り過ぎると、停車場の扉を開いて中に入る。
敷地に入った時点で外からは確認されずに中に入れる。
そして、停車場には地下牢に続く階段もある。
ここまで来れば逃げられる事は無いと思いつつ、ファールイは、戻ってきた馬車を見る。
ただ、外に居るのは御者だけで、実行部隊の姿はない。
それに獲物の女達も馬車の外に出されてない。
「何をしている。 捕まえてきた獲物を出して、私に見せなさい」
ファールイは、御者に馬車から捕らえてきた女達を出す様に言う。
御者は仕方無さそうにドアを開けると、男が1人ドアから崩れ落ちた。
ファーレイは、崩れ落ちたその男の顔は、自分が使っている実行部隊の1人だと直ぐに理解したのだろう。
直ぐに顔色が変わる。
馬車のドアから崩れ落ちたその男は、右肩と右頬が当たって肩の上に顔が乗せられた様になって崩れ落ちている。
明らかに首の骨が折れて絶命していると判断できる。
それを見たファールイは、御者に問いただす。
「こ、これは一体どう言う事なの? 説明しなさい!」
御者も、中の様子は、今初めて見るので、少し気が動転している様子だ。
少し間を置いて、ファールイに答える。
「誘拐する寸前に襲撃を受けました。 ナイフで脅されている間に、中で何かあった様でした。 それで、直ぐに戻って、報告をする様に言われましたので、慌てて戻ってきました。 それで、中の様子は私には確認できませんでした。 それと、伝言を伝える様に言われてます」
御者は、そこまで喋ると、少し気を落ち着かせる様にして、男に言われた内容をファールイに伝える。
「これ以上、彼らに付き纏う様なら、次はお前の番だ。 と言ってました」
ファールイは、慌てて馬車の中を確認すると、馬車内の前席には、顔から胸までが血だらけで倒れている男と、後部席には顔が背中の方を向いている男が転がっていた。




