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奴隷商達の会談


 フゥォンカイが席に座ると、直ぐに後から誰かが入ってくる。


 入ってきたのは3人で、それは、よく知った顔だった。


 3人とも奴隷商で、どちらかと言うと、次の世代に引き継ぎを行い始め、隠居気味の御老体だが、いまだに発言権は大いに、ある3人だった。


 3人が席に座ると、早速、重鎮達がフゥォンカイに話しかけてきた。


「やあ、フゥォンカイ。 元気そうじゃないか」


「商売も順調みたいだな。 随分と取引する奴隷が多いみたいじゃないか。 このところ、お前の店に入って来る奴隷の数が、随分と多くなったみたいじゃないか。 結構結構」


「私達の店も、お前の店にあやかりたいモンだな」


 フゥォンカイは、4人の出方を黙ってその話を聞いていると、最初に話しかけてきた、重鎮が本題に入ってきた。


「お前、ジューネスティーンと言う、南の王国から来た新人パーティーの亜人達を、狙っているらしいじゃないか」


「あれは、私たちが最初に目をつけていたんだ。 通達を出していたら、君の所からも通達が来たと、ファールイから聞いたのでな」


「ファールイの話では、私たちの後から、聞いたので、慌てて私達に教えてくれたんだよ」


 フゥォンカイは、自分と取り分の取り決めと思ったのだが予定が狂う。


 黙ってフゥォンカイを見て、何も言わずにいるファールイの表情には、勝ち誇ったような笑みが見える。


 その表情から、この話は、フゥォンカイの連絡を受けてから、この3人に言い含めて話をでっち上げたのだろうと判断できる。


 彼らなら、ファールイの話を聞いて協力する程度の事はするのだろう。


 若い頃から、ベットの上で手懐けていたのだから。


「だから、あの新人パーティーの亜人達は、私達に優先権がある」


「そうなのだよ。 ランクも低い新人なのだし、簡単な仕事だ。 別に亜人奴隷のルートを持っている君のことだ。 今回の4人を商品にしなくても困る事はないだろう」


「今回は、私達に譲っても、君には損はないはずだ。 今後は、私達3人が君の力になるんだ」


 フゥォンカイは、今の話の中に、“ランクも低い新人” と言った事に引っかかったのだろう。


(ファールイ達は、ジューネスティーン達が、東の森の魔物を倒した話を知らないのか? 直ぐに手出しをしないのは、帝国軍の監視がついていることがあり、不用意にジューネスティーン達に手出しをして、帝国軍と対峙する訳にはいからじゃないのか。 ファールイは、ジューネスティーン達のギルドランクは、ジューネスティーンとシュレイノリアがCランクで残りがDランクだった事から判断して、人属以外は、それ程の能力は無いと判断しているのか)


 フゥォンカイは、思案を巡らせているのだろう。


 重鎮達の話を聞くだけで答えようとしていない。


(ファールイは、ジューネスティーン達パーティーの実力を見誤っている可能性が高い。 東の森の魔物を倒したパーティーなら、ユーリカリア達のパーティーより実力が上の可能性が高い。 ファールイも、ユーリカリアのパーティーを襲撃して撃退されている。 その時より、ファールイの実行部隊の実力が上がってはいない。 むしろ、その当時より実力は落ちている。 なら、ファールイの襲撃は失敗する)


 フゥォンカイは、ガッカリする様な表情をする。


 肩を落とした様子をして、ため息を吐くと、初めて話を始める。


「わかりました。 どうも、自分は遅かったみたいです。 ジューネスティーン達の優先権は、私には無かったと分かりました」


 3人のご老体の面子を保つため、それならばと、ジューネスティーン達に手を出すのは止める事にする。


(ファールイか、このジジイたちの誰かが、ジューネスティーン達に手を出してもらえれば、ジューネスティーン達の、真の実力も見える。 ここは、優先権を渡して、様子を見た方が、得策だ)


 フゥォンカイの思惑など、気に求めず、フゥォンカイの言葉を聞いて、ファールイは笑いが止まらないのか、手に持っていた扇子を開くと口元を隠す。


 それをフゥォンカイは悔しそうな顔で睨む様にして話を続ける。


「優先権は、そちらに有ります。 ただ、こちらの出席者の方々の、一番最後の権利で構いませんので、その権利を私に回していただければ構いません。 その為の監視活動だけはさせて頂けないでしょうか?」


 ファールイは勝ち誇った様な目をしてフゥォンカイを見ている。


 だが、彼女は一言も発言はしてない。


「おお、フゥォンカイ。 わかってくれたか」


「いやいや、君は商売が上手い。 私達も何か有れば、君を支援しようじゃないか」


「優先権は5番目になる。 それは、私たちが保証しよう」


 その言葉の中には、先程、自分達3人に優先権が有るのに、フゥォンカイが優先権を主張したとファールイから伝わったと言っていたのに、いつの間にか、ファールイも優先権がある事になっている。


 フゥォンカイが、さっき、一番最後の権利と言ったことで、作り話に綻びが出てしまったのだ。


(ふん、ジジイどもめ、自分達の作り話の辻褄も分かってないな。 だから、ジューネスティーン達の実力を見間違うんだ。 ファールイが実行部隊の増強をしていたとしても、そうでなくても、これで彼らの実力が確認できる)


 フゥォンカイは、悔しそうにテーブルの上に置いた手を強く握りしめる。


 周りに対して、交渉に負けたと思わせる為なのだが、周りには、その真意が伝わってない。


「ファールイ。 君達が手を引くまではこちらから一切の手出しはしない。 約束を破った時、私は、帝都を出る事にする」


 そう言って、フゥォンカイは悔しそうに、ファールイに先攻を譲る事にする。


 演技とは知らずに、それを見てファールイは勝ち誇った笑いをフゥォンカイに向けるのだった。


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