奴隷商達の動き
フゥォンカイが監視を始めさせると、翌日に同業者も監視に入った様だと報告が入った。
どこも狙いは、ジューネスティーン達のエルフと亜人なのは聞かなくても分かる事だ。
(おかしい。 こっちは、あの新人パーティーの亜人達に目をつけていると伝えている。 先に監視をつけているので、優先権は、こっちにある。 だが、こちらに何も言わずに監視に入ったと言う事は、どういうことなのだ。 まあ、直ぐに何らかの接触が有る。 その時に話を付ける事になるか)
本来であれば、自分が狙っている獲物を先に同業者に伝えた方に優先権が発生するはずなのだ、その情報によって、他の奴隷商は、最初の襲撃が失敗した際に次の誘拐の権利をお願いするのだが、そんな話もなく、監視が入ったのだ。
だが、今回に限っては自分が最初に目を付けていたというアドバンテージが有る。
余程の事が無い限り有利に話し合いが持てる。
フゥォンカイはそう考えるのだろう。
奴隷商には組合の様な組織は無いが、トラブルが発生した際は、店の代表同士の話し合いが持たれる。
フゥォンカイに話し合いを持ちたいと連絡してきた相手は、相手は帝国で一番の勢力を持つ奴隷商のファールイだった。
フゥォンカイもそれなりの力を有しているが、彼女の様に帝国貴族との繋がりは無い。
ファールイの繋がりも、ファールイが女性だったことから、夜のお供をすることで繋がっていたのだが、近年はその繋がりもファールイの年齢のせいか疎遠になっていると聞く。
(ファールイとしてもここで、貴族との繋がりを回復したいと考えているのだろう。 そうなると、狙いはエルフの女の可能性が高い。 彼女もユーリカリア達パーティーに居る2人のエルフを狙って返り討ちにされいtからな。 高ランク冒険者を狙うのは諦めているので、今回のジューネスティーン達のエルフを狙っているのだろう。 年齢的にもユーリカリアのエルフより若いとなれば尚の事狙いはエルフの女となる。 それなら、交渉の余地はある)
そうフゥォンカイは考えていた。
フゥォンカイは、早速、ファールイの使いに了解したと伝えると、直ぐに、ファールイからの使いが、会合の場所と時間を指定してきたのだ。
(ファールイにしては、動きが早い。 もう、何か策を考えているのか? ……。 いや、今の状況なら、優先順位は、こっちにある。 だったら、獲物を分けて欲しいという話になるのか。 ファールイの事だ、エルフの女を買う話かもしれないな)
フゥォンカイとしてみれば、今のところ、優位に進んでいるので、ファールイの本当の思惑には気が付いていなかった。
フゥォンカイは指定された店に行くと、ファールイは先に待っていた。
部屋に入るとファールイは部屋の一番奥の席に座っている。
その席から立ち上がる気配が無いので、フゥォンカイはそのまま挨拶をすると、ファールイから一番遠くの席、つまり、入り口に一番近い席に座らされる。
上座にファールイ、下座にフゥォンカイと言うのは、交渉のテーブルでは無いのだ。
本来の交渉の席なら、ファールイは、上座に座る事はなく、テーブルの長手方向に、フゥォンカイと対面するように座るのが筋なのだが、ファールイは、調停役が座る場所に座っていた。
そして、フゥォンカイの席は、ファールイの対面の席となる。
まるで、査問を受けるか、懲罰を尋問する様な配置になっている。
フゥォンカイは、交渉の場に来たつもりだったのだが、どうも、様子がおかしいと思い始めた。
そんなフゥォンカイを、ファールイは、含みのある笑いで見つめる。
「すまない。 客人が全員揃ってないので、少し待って欲しい」
ファールイに言われて、仕方が無いので待つのだが、フゥォンカイは嫌な予感しかしないのだろう。
上座で余裕の表情を浮かべるファールイを警戒する様に睨むのだった。




