奴隷商 フゥォンカイ
帝都は、城塞都市として、有事の際は、強固な城壁によって守られている。
帝都は新たな区画ができても、今までの城壁は、そのままにしてあり、最初の城壁を抜けたとしても、次の城壁によって、侵入を防ぐ様になっている。
皇城に入るには、皇城の南門からとなるが、帝都の入り口は、南・西・東の3箇所となる。
その3箇所を確認していれば、帝都に入ってきた人の情報も手に入る。
奴隷商のフゥォンカイは、帝都に入ってくる人の流れを監視している。
帝都の3箇所の門を監視するだけで、帝都の人の出入りは簡単に確認できる。
また、門番の中に潜り込ませた自分の配下によって、素性も確認しており、亜人の情報は、逐一入手できる様にしている。
フゥォンカイもだが、他の奴隷商達も、最初に、ルイネレーヌのパーティーに居る、エラント系亜人であるマルギーブに目を付けるが、直ぐにパーティーのギルドランクが高い事で、ターゲットに、なり難い事に気がつく。
フゥォンカイにしてみれば、自分以外の奴隷商達に伝わる情報の伝達速度に疑問が有ったようだ。
それは、他の奴隷商の動きを見ていれば分かることだが、そういった動きについては、奴隷商の配下や、その下請けの様なゴロツキの動きを監視すれば、手にとる様に分かるのだ。
その情報の速さによって、フゥォンカイは、今の地位を得たと言って良い。
ルイネレーヌ達が帝都にはいいった翌日に、ジューネスティーン達のパーティーが帝国に入ったことで、フゥォンカイのターゲットは、直ぐに変更になる。
フゥォンカイは、帝都の南門からの情報で、直ぐに見張りの手配を行い、奴隷商仲間にジューネスティーン達の亜人とエルフを狙っている事を、他の奴隷商に告げる様に手配を行ったのだ。
お互いの奴隷商達の実行部隊がかち合って取り逃してしまっては、お互いに損をするだけなので、この様な場合は、早い者勝ちになる。
フゥォンカイは、自分に何の話も無かったことで、今回の亜人誘拐について自分に優先権が取れたと確信するのだった。
ジューネスティーン達のパーティー構成は、人属の男女2人、エルフの男女2人、ウサギ系亜人女性1人、ヒョウ系亜人男性1人の6人パーティーで南の王国出身の新人パーティーと聞くと、直ぐにターゲットを変更する。
ウサギ系亜人のアリアリーシャはその体付きから娼館が高値で購入する事になりそうな事、アンジュリーンのエルフということで上手く貴族に売り付けられれば高額な取引となる。
また、カミュルイアンについては、貴重な男性エルフなので、奴隷の女性エルフに種付けすれば、希少種のエルフの量産が可能となる。
レィオーンパードについては、若いことから労働力としての価値が生まれるなどと値踏みされていた。
しかし、フゥォンカイのところに、直ぐにギルドに潜入させている情報員から、ジューネスティーン達が、東の森の魔物を倒したと報告を受ける事となった。
奴隷商達にとっても、他国から帝国に送られる奴隷の積荷が、東の森の魔物に襲われて全滅した事も有るので、その強さは知っている。
また、帝国軍の広報から東の森の魔物撃退の報道がされる事は有るが、実の所は、東の森へ追い返しただけで、東の森の魔物を倒したという事は無いと下級兵士の話から分かっている。
どの奴隷商も東の森の魔物の強さは身に染みており、その魔物を倒したパーティーとなったら、迂闊に亜人を攫う事は出来ない。
早速、夜にでも攫おうかと考えていたのだが、強硬策は保留となり、状況の確認のため監視に入る様に指示を出していた。
(新人なら帝都内で隙を作って、少人数で行動する事になるかもしれない。 その時に大人数で狙えば捕らえることも可能だろう。 監視をつけて、少人数で行動した時に、行動を起こせば有利にこなせる可能性が高い。 若い冒険者なら、時には個別に行動する可能性も高いのでその時を待てば良い)
直ぐに行動に映るのは危険、相手の戦力を確認する事が必要だと、情報を持つものなら誰もが判断する事だろう。
フゥォンカイは、早速、監視をつけて動向を見張ろうと思ったのだろう。
金の帽子亭には、ユーリカリアのパーティーが使っていることもあり、以前、彼女達を狙って返り討ちにされていることから、二の足を踏んでいた。
すると、直ぐに、金の帽子亭に帝国軍の監視が先に入ったと報告が入ったのだ。
そのため、金の帽子亭の隣にある、金敷亭に宿を取って監視させる事にしている。
(帝国軍が何で、あの新人パーティーに監視を付けるんだ。 東の森の魔物を倒したからか? だとしたら、帝国軍が監視を付けるのは納得できる。 そんなパーティーから誘拐なんてできるのか? とりあえず、今は情報を集めることの方が重要だ。 行動に移すのは、それからになる)
フゥォンカイは、帝国軍の監視が入った事で、ギルド内部からもたらされた情報の真実味が増したと判断したのだろう。
実行部隊を待機させておく事にした様だ。




