監視者達
昨日、カインクムの工房で組み立てた、レィオーンパードとアリアリーシャのパワードスーツの試運転を行う事になるのだろう。
アリアリーシャは、いつもと変わらないが、レィオーンパードは、ソワソワしている。
装備の性能の確認、何か問題点が無いか、本来の目的の為に確認をしておく為に簡単な魔物の討伐から行う様にする。
宿に使っている金糸雀亭は、ジュエルイアンの秘書であるヒュェルリーンが手配してくれたので、かなり良い部屋を当ててもらえた。
リビングと寝室3室からなる部屋を用意してもらえたので、出発前に装備のチェックをリビングでする事もできるので助かっている。
金糸雀亭はギルド帝国支部に近い事から冒険者の利用が多い。
一般的な部屋は個室が多いのだが、上位パーティー用に家族型の部屋も用意されている。
ジューネスティーン達の室内には、簡単なリビングとそこに続く3部屋からなっているので、家族用というより、場合によっては、貴族の家族が使える様な高級感もある。
一般的なパーティーが借りる場合は、個室を希望される事が多いが、家族型の部屋にしたのは、個室だとスペースの問題が有るので、何らかの形で装備の点検などを行う際、第三者に見られない様にと、ジュエルイアンか、ヒュェルリーンが配慮した為だと考えられる。
上位ランカーのパーティーはこの様な部屋を使う事が有るかもしれないが、一般的な冒険者は個室を各々借りるか、パーティーメンバーで数人が泊まれる部屋を借りる場合が多い。
それは冒険者達の懐事情によるものだ。
そう言った顧客の為に、フロアーには、談話が出来るスペースも用意されていて、個室を使うパーティーの相談用にテーブルと椅子が各フロアーには用意されている。
だが、ヒュェルリーンはジューネスティーン達に、その様な場所を使わせられないと考えたのだろう。
上位ランカーが使う家族型の部屋をあてがわれた。
リビングを使えば、他人に見られる事もなく収納魔法から装備を出し入れ出来る。
装備だけでも他者と異なるのに、収納魔法持ちが居る事で更に目に着かせても困るので配慮されたのだろう。
昨日、カインクムの店で、レィオーンパードとアリアリーシャのパワードスーツの組立を完了させて持ち帰ったので、動作確認を行う予定なので、手頃な依頼か、狩場の確認が必要となる。
武器の確認と戦い方の確認のための狩に行くので、都合の良い依頼か、適当な狩場を探す必要がある。
ジューネスティーンは、少し考えている。
(もし、二手に分かれたら、帝国の監視は、どう動くのだろうか? ギルドまでのお使い程度なら、一本道だし、問題ないか)
ジューネスティーンは、指示を出す事にする。
「シュレ。 アンジュ。 それとカミュー、ちょっといいかな」
3人を呼ぶと、ジューネスティーンは指示を出す。
「3人でギルドに行って、適当な依頼を確認してきてもらいたい。 この前の受付嬢のルイーゼに相談すれば何か教えてくれるだろう。 出来れば人の少ない所の依頼がありがたいが、都合の良い依頼が無ければ、何処か人気の少ない狩場を教えてもらってきてくれ」
ギルドのお使いの話を終えると、シュレイノリアに、帝国軍の監視役について確認してもらおうと思う。
「監視役が魔法で通信を行おうとした場合は、その内容を確認しておいてくれ。 ギルドの様にプロテクトをかけた通信は行わないだろうから、お前なら、魔素の流れから、その内容を聞き取ることもできるだろう。 それと、このフロアにパワードスーツを出しておいて欲しい。 お使いの間に点検しておく」
「分かった」
そう言うと、収納魔法から、パワードスーツをそれぞれ壁際に離して3体を出す。
シュレイノリアは、魔素の流れが確認できる魔法を持っている。
サーチ魔法の応用で、魔法の痕跡があれば、魔素が魔法に反応して動くので、魔素の動きを探れば目に見えない様な魔法であっても確認が取れる。
特に通信系の魔法となると、火魔法や水魔法などの様に目に見えないので、一般の人には感じる事は不可能に近いが、シュレイノリアならば、魔素の流れから検知が可能だ。
アンジュリーンは、ジューネスティーンに出かける様に言う。
「じゃあ、ちょっとギルドまで行ってきます。 それ程時間は掛からないでしょうから、直ぐに戻ります」
「3人で動いているといっても危険はあるかもしれないから、カミューは二人を護衛してくれ」
カミュルイアンは、なんとも言えない顔をしている。
「ねえ、護衛って言っても、ギルドは、そこの通りの先だよ。 そんなに警戒する必要が有るの?」
「ああ、お前の役目は重要だと思ってくれ、何か動きがあれば、お前が頼りなんだ」
「はーい」
カミュルイアンは、呑気そうに返事をする。
カミュルイアンとすれば、もう少し頼りにされる様な仕事を言いつけられたかったのだろうが、金糸雀亭からギルドまでなら、そう大した距離では無い。
そんな距離のお使いに護衛なんて必要なのかと思ったのだろう。
だが、それに対する様々な思惑が交差する事になるとは、メンバーの誰も知らない。




