表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

804/1356

ヴィラレットのレイビア


 カインクムは、店でユーリカリアを待っていると、それ程、時間も掛からずに、ユーリカリアとそのメンバーが店に来た。


 今日の収穫をギルドに買い上げてもらっただけなので、それ程時間は掛からなかったのだろう。


「カインクム、恩に着る」


 リーダーのユーリカリアが、店に入るなりお礼を言う。


「なぁに、良いってことよ。 それよりどうしたんだ」


「ちょっと、ヴィラレットの剣と防具を見て欲しいんだ。 技には、目を見張るものがあるのだが、こいつはまだ駆け出しだから、まだ戦いに慣れてないのでな。 それで、道具の扱い方がイマイチなので、専門家の目で見て貰いたいんだ。 万が一の事が有るといけないので、お願いします」


 そう言って、隣に居るヴィラレットを紹介すると、


「あんたは、新人の面倒見が良いんだな。 分かった、ちょっと剣を見せてくれ」


 そう言われて、ユーリカリアは、ヴィラレットに合図をするとヴィラレットがカウンターに座っているカインクムの前に、腰から鞘ごと外して剣をカウンターの上に乗せる。


「お願いします。 私、まだ、駆け出しなもので、剣の具合とかよく分からないので、お願いします」


「あぁ、構わないよ」


 そう言って、鞘から剣を抜く、細身の双刃のレイビアであるが、刃こぼれが何箇所かにある。


 明かに、この剣で斬った時に付けた傷である。


 その傷を見て、カインクムは、剣の使い方と、使っている剣が合ってない事を見抜いたのだろう。


 剣を抜いて直ぐに顔を曇らせた。


「嬢ちゃんは、剣で刺すのではなく、斬る方が得意みたいだな」


「えぇ、何方かというと斬る方になります。 それで、後から双刃の刃を入れて貰いました」


 剣を見ただけで、本質を突かれたので、少し驚き気味にヴィラレットは答える。


 今の答えでカインクムは、武器選びに失敗した事にに気が付いたのだろう。


 顔を少し俯き加減にすると、剣に対するウンチクを話し始める。


「直剣というのは、刺す為に設計された剣なので、先端にだけ刃を入れるんだ。 側面は受け流しをするだけで、剣で斬る事は行わないんだよ。 直剣は刺す事に特化しているから、硬い素材で作られている。 嬢ちゃんの様に斬ると、直ぐに剣が折れてしまうんだ。 もし、斬る方が得意というなら、直剣だと、刃幅の広い物を使うか、でも、刃幅が広くなるとその分重量も増すから、直剣ではなく、反りの入っている曲剣を使うと良いよ。 ちょっと待ってな」


 そう言って、剣の棚から一本の曲剣を持ってくる。


「こんな感じの剣だ」


 そう言って、剣を鞘から出して見せる。


「こういった感じで反っている剣は、反りの外側だけ刃を入れてある。 反りの内側には刃が入ってない。 最悪の場合、柄と棟を使って……、あ、棟は剣の反りの内側を言うんだ。 それを手で抑えて使う事も可能だ」


 そう言って、剣の棟に左掌を当てて見せる。


「そうだったんですか。 私がこの剣を買った時、側面には刃が無かったので、後で入れてもらったんです。何で刃が無いんだろうと不思議に思ってたんです」


「新人には多いな。 剣の特性を知らないで使うから、それと、他のメンバーは嬢ちゃんの様な長い剣を使う人が居なかったから仕方が無いな」


 そう言って、リーダーのユーリカリアに視線を向ける。


「私も剣士だったら色々教えられるんだが、御主人の様に知っている人に解説してもらえて助かるよ」


 ユーリカリアが言うと、ウィルリーンの顔を見た。


「お前は、直剣と曲剣について、何か知らなかったのか?」


 ウィルリーンも剣については、そこまで詳しくは無いのだろう。

 申し訳なさそうな顔をして答えた。


「師匠から、一通りの武器の扱い方は、教わりましたけど、剣についてそこまで詳しくは聞いてません。 それに教わったのは、50年も前の話ですよ。 ユーリカリアと会ってから今日まで、私が剣を使ったのなんか、数えるほどしかなかったんですから、そこ迄、詳しく説明できるなんて思わないでよ」


 ウィルリーンは、魔法と一緒に、他の武器の使い方を師匠であるエルフのお婆さんから教わっているが、本職ではないので、カインクムの様に教えることは出来なかったのだ。


 それを言い訳の様に伝えた。


 それを聞いていたカインクムだが、本職の剣士でもなければ、道具の事についても、その程度だろうと思ったのだろう。


 ウィルリーンの話は、そのまま聞き流しただけで終わった。


「まぁ、大事に使ってくれ。 刺す事に特化すれば、この剣も長持ちする。 でも、戦ってみて斬る方が良いなら相談に乗るよ。 もう少し待って貰えれば、新しい技術で作った曲剣も完成する。 出来上がったら教えるから、見に来てくれ」


 ヴィラレットは、嬉しそうにする。


「ありがとうございます」


 そう、答えると、カインクムは少し考える様な顔をする。


(多分、この嬢ちゃんは、斬る方法を冒険者になる前に教わっていたのだろう。 話の感じから、冒険者になった時に見つけたレイビアを気に入って買ったんだろうな。 ユーリカリアが、メンバーにしたのなら、この嬢ちゃんに何か光るものでも有ったのかもしれないし、お得意様だから、もう一つ大事な事を伝えておくか)


 ヴィラレットが剣を教えられた時に、その師匠に当たる人が、刺すための剣ではなく、斬るための剣を教えたのだろうとカインクムは考えているのだろう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ