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カインクムの後ろに見えるジュネスの影


 ユーリカリアは、カインクムの仕事の相手が、ジューネスティーン達じゃないかと、薄々、感じている様子で、カインクムに話しかけていたのだ。


 カインクムは、ユーリカリアの質問の意味がわかったのか心の中で焦っていた。


 必死に表情を変えないようにしながら、ユーリカリアの質問に答えようとした。


「それは判らない。 俺は鍛冶屋だから、冒険者がどんな仕事をしたのかは興味が無いんでな」


 否定ではなく、分からないとカインクムは言った。


 カインクムは、倒した魔物については、ジューネスティーン達から聴いてはいなかったのが幸いした。


 この質問には、正直に答えられたのだ。


(そうだった、カインクムは鍛冶屋なんだから、その答えも有りだ。 じゃあ、直接、ジュネスの名前を出す? いや、それは早計だ。 話の感じからジュネス達だと思える。 最近、帝国に来た新人の中でカインクムの眼鏡にかなうなんて、あいつら位だ。 これは、もっと調べておく必要が有りそうだ)


 ユーリカリアは、何かを考えていたようだったが、直ぐにカインクムに社交辞令的に話をする木になったようだ。


「そうか。 あんたの眼鏡に叶う新人なら会ってみたいな。 すまんが、今度機会を作ってもらえないか」


 相手がジューネスティーンの可能性が高いと思いつつ、それなら、カインクム経由で会うのも良いかもしれないと思ったようだ。


 それで、カインクムにジューネスティーン達と、会う機会をお願いしてみたのだ。


 ただ、カインクムとすれば、いい迷惑である。


 帝国内でカインクムとジューネスティーン達との接触を知られる訳にはいかないのだ。


 そうなると、ユーリカリアに、差し障りの無いように答えるしかないのだ。


「まぁ、あんたらなら安心だ、今度会ったら話してみる」


 カインクムは、冷や汗が出る思いだったのだ。


 これなら、この場も凌げる事になるし、次に今の話がどうなったかを聞かれるまでは時間が稼げる。


 それにジューネスティーン達は、直接、カインクムの店に入る事は無い。


 そうなったら、ユーリカリアは、ジューネスティーンとカインクムが接触している事を知る事はない。


 なら、次に聞かれた時は、まだ、会ってないのでとか、話ができてないでも通ってしまう。




 一方、ユーリカリアは、ここで、面白い話を聞けたと思ったようだ。


 カインクムと会う前より、清々しい顔をしている。


 ただ、そんな事より本題に入らなければと思ったようだ。


 ユーリカリアの顔つきが少しだけ真剣になった。


「その話は、よろしく頼むよ。 それより、今日は、この後どうなっているんだい?」


 ユーリカリアは、カインクムを引き留めた本題に入った。


「今日は、店に戻るだけだ」


「それじゃあ、すまないが、一つ、武器を見てもらえないか。 できれば、ちょっと手入れもして貰いたいんで、後で寄っても良いか?」


「あぁ、この後なら問題は無い。 後は、飯を食って寝るだけだ」


 それを聞いて、ユーリカリアは、少しイタズラ心を出したようだ。


 顔が少しにやけている。


「それは、ちょっとすまなっかったな。 若い美人の奥さんの手料理なら、帰って直ぐにでも食べたかったな。 それに、奥さんは、料理の腕もいいって評判だからな。 この前、食堂の奥さんが、料理について教わったって聞いたぞ。 それに、昔から味に定評のある店の常連だったらしいじゃないか。 料理上手で、舌もこえているんだから、お前さんは幸せ者だな」


 ユーリカリアは、少しからかったつもりだったのだが、カインクムは、かなり赤い顔をしている。


 そして、冗談で済まそうと思っていたのだろうが、カインクムの言葉は違っていた。


「あっ、フィルランカを褒めてくれて、ありがとう。 あいつも、ユーリカリアが、褒めてくれたと話したら、喜んでくれると思う」


 ユーリカリアは冗談のつもりで話したのだが、カインクムは本気で答えていた。


 そのカインクムを見て、これ以上、フィルランカの話をしたら、恥ずかしさから、真っ赤になって茹で蛸のようになってしまいそうだったので、ユーリカリアは少し戸惑ったようにして、話を切り上げてきた。


「それじゃあ、ギルドの用事が済んだら寄らせてもらうよ。 じゃあ」


 そう言って、ユーリカリアは受付の方へ、横にウィルリーンが寄り添うようにして歩いて行く。


 それを見てカインクムはギルドを出て自分の家に向かった。




 ウィルリーンは、ユーリカリアを少し睨むようにみた。


「ダメですよ、カインクムにフィルランカの話なんて。 帝国一のデレデレ夫婦って噂だってあるんですから。 親子ほど離れていて、もう4年も経つのに新婚夫婦のままだって話なんですよ。 カインクムの前でフィルランカの名前を出しただけで、メロメロになるって話も聞いたことがあります。 これからは、気をつけてください。 大事な鍛冶屋さんなんですから」


 少し強い口調で、ウィルリーンは注意した。


「ああ、さっきの態度を見て、カインクムをフィルランカのネタで揶揄うのは、やめることにするよ。 まあ、お前に、カミュルイアンの話をするようなものだからな」


 それを聞いて、ウィルリーンも顔を赤くするのだった。


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