アンジュリーンの買い物について
アンジュリーンの買い物に出たいという希望を持っていたのだが、帝都では簡単に買い物に出れなかったことで、欲求不満だったのだが、思わぬところで、その希望が叶うはずだったのだが、その事をアリアリーシャに指摘され、自分の思惑が露呈してしまったので、決まりが悪そうにジューネスティーンを見た。
「あ、ああ、うん。 そうです。」
アンジュリーンは、これで、買い物に行く計画は終わったと思ったようだ。
アンジュリーンは、がっかりしているのだが、ジューネスティーンは、そうでもなさそうな表情をしていた。
「ああ、そういえば、帝都に戻ってから、アメルーミラの訓練がてら、魔法の訓練を中心にしていたから、遊びに行く事も無かったな。」
ジューネスティーンは、今までの事を思い返していたようだ。
その言葉に、アンジュリーンの表情が、買い物の可能性が出てきたと思ったのか、表情が戻った。
ジューネスティーンとしたら、リーダーとしてメンバーの心のケアも考える必要が有るので、アンジュリーンの話しを真摯に受け止めていたのだ。
そして、帝都に戻ってから、メンバー達に娯楽が無かった事を思い出したようだ。
「旅の帰路が、のんびりだったから、少し引き締めるためもあったはずだ。」
ジューネスティーンが、少し反省しているような表情をしていたのだが、それを一蹴するようにシュレイノリアがポロリと漏らした。
そう言われて、アンジュリーンも、帰路は、のんびりと旅を楽しんでいた事を思い出したようだ。
(そうだった。 帰りは、急ぎでも無いからって、のんびり移動していたから、体も少し鈍り気味だからって、戦いの感を取り戻すためにも、アメルーミラの訓練がてら、南門の前の魔物を狩ろうって話だった。)
6人の中では、帝都にというより、この大ツ・バール帝国に来た理由があるのだから、ツノネズミリスの討伐などは、そのついでの仕事なのだ。
本来なら、そんな依頼を受けなくても問題は無かったのだ。
これは、接触したユーリカリア達の事もあるので、往路は強行軍で移動したのだが、帰路は、彼女達に可能な限り合わせることも、そして、娯楽の提供ということで、ゆっくりと移動するようにしていたのだ。
そのため、帝都に戻ってからは、戦闘を中心の活動に切り替えていたのだ。
「うーん。 こんな時位は、買い物に出てもいいんじゃないか。 アメルーミラのバックを買うだけだ。」
ジューネスティーンは、ここ数日、アメルーミラの魔法訓練と自分達の戦闘の感を取り戻すように毎日続けていたのだ。
突然、アメルーミラが帝都から逃走したこともあり、このような状況で訓練をしても、身が入らないだろう事から、怪我をしてもらっても困ることもあり、そして、ギルドで聞いた、荷物を送る事ができると聞いて、気分転換をさせるために、アメルーミラの荷物をまとめて、ギルドに届けてもらうつもりでいたのだ。
そして、アメルーミラの部屋に来て荷物をまとめるために荷造りをするためのものが必要となっていたのだ。
それなら、アメルーミラに渡すのなら、今ある荷物を持って移動できるようにしておきたいと、ジューネスティーンも考えたようだ。
「せっかくだから、この荷物を届けるのなら、これから先も冒険者として活動するなら、拠点の移動もあるだろうし、それなら、旅に出る事も考えてあげないといけないんじゃないか。 今日は、休みにしたのだから、買い物にも行こう。」
それを聞いて、アンジュリーンの表情が一転した。
「ああ、ルーミラのバックだけだからね。 アンジュは、そろそろ控えた方がいいよ。」
そして、アンジュリーンは、固まった。
「アンジュは、帰路の時に、色々、買い込んでたでしょ。 あまり、無駄使いをしてたら、お金がなくなっちゃうよ。」
そして、さらに青い顔をした。
「ギルドの残高は、どうなっているんだろうね。」
最後の一撃を食らったような表情をして、アンジュリーンは、ガッカリしていた。
その様子から、色々買い込んでしまったこともあって、自分の懐具合については、メンバーの中ではギルドに預けてある残高が一番少ないのだ。
「アンジュは、ほどほどにしておけよ。 借金する程買い込まなければ構わないよ。」
その言葉にアンジュリーンは喜んだのだが、ジューネスティーンは、もう一言釘を刺しにきたので、ぎくりとしたようだ。
その様子をみて、もう一つ、注意しておく必要を感じたようだ。
「ああ、カミュー。 お前は、ウィルとシェルに、ちゃんと何か買ってやれよ。 それに、これから先、お前に言いよるエルフの女性は多いだろうから、借金の申し入れは断るようにね。」
その一言で、また、アンジュリーンの表情は曇っていた。
アンジュリーンとカミュルイアンは、同時に転移してきた。
そして、メンバーの中では、エルフということもあり、34年間一緒に暮らしていたこともあり、お互いに持ちつ持たれつしていたこともあり、ギルドの高等学校に入るまでは、お互いに補って暮らしていた。
ただ、補う側と補われる側の偏りは有ったようだ。
ジューネスティーンは、アンジュリーンが、必要に応じてカミュルイアンからお金を借りるかもしれないと思い、カミュルイアンの嫁であるウィルリーンとシェルリーンの2人の名前を出して釘を刺しておいたのだ。
それが、どこまで有効かは、分からないだろうが、リーダーとして念の為、必要な事だと思い声をかけたようだ。
アンジュリーンは、カミュルイアンから借りる事が無理かと思ったのか、少しがっかり気味にしていた。
「ねえ、アンジュ。 ウィルとシェルへプレゼントをしたいんだけど。」
カミュルイアンは、少し恥ずかしそうに、アンジュリーンに話しかけた。
「あの2人が喜びそうなものを選ぶのを、手伝って、くれ、ないか、な。」
最後の方は、何だか、心配そうに声も小さくなっていた。
シャイなカミュルイアンとしたら、自分の事のために同時に転移してきたアンジュリーンにも、少し遠慮があったようだ。
しかし、アンジュリーンは、ご満悦のような表情をした。
「いいわよ。 手伝ってあげるわ。 あの2人が、泣いて喜ぶようなものを、私が選んであげるわよ。」
アンジュリーンの機嫌は完全に治ったようだ。
要するに、アンジュリーンは、買い物ができたら、それでよかったので、自分のモノを買うのではなく、誰かのモノを買うのを手伝う事で、店を物色して、アレコレ選ぶことが楽しいので、カミュルイアンの提案でも嬉しかったようだ。




