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金糸雀亭の対応


 ルイセルは、眠い目を擦りつ、アズミーシャの言葉を聞いたのだが、その言葉を聞いた瞬間、一気に眠気が覚めたようだ。


「アメルーミラさんが、戻ってこない。」


 ルイセルは、金糸雀亭の女主人として、この店を切り盛りしている。


 アメルーミラは、猫系の亜人であり、帝都で1人で居るなら、亜人奴隷として、攫われる危険性が高いのだ。


 今まで、店の周りで、夕涼みをすることが、日課だった。


 そして、今まで、何事もなく、戻ってきていたので、今日も問題無いと思い、いつものように、外に出したのだ。


 だが、今日に限って、いつも帰ってくる時間になっても戻らないのだ。


 そして、アズミーシャは、気になり、金糸雀亭の玄関から顔を出して見える範囲を確認したが、アメルーミラの姿は無かったのだ。


 そして、インセントが、ルイセルを呼んできてくれたので、アズミーシャは、アメルーミラの事を話したのだ。




 ルイセルは、アズミーシャから、状況を聞き、問題の重要性について考えていた。


(アメルーミラさんは、ジューネスティーンさんのパーティーメンバーだけど、ここ最近、メンバーになったのよ。 最初の頃の話だと、准メンバーとしてとかって、言ってたわね。 ・・・。 ジュエルイアンさんからの依頼は、ジューネスティーンさんと他の5人について、宿をお願いされたわ。 安全の確保は、護衛の必要はないが、盗賊のような輩に入られなければ構わない。 護衛は、別に居るから安心しろという事だったわ。)


 ルイセルは、金糸雀亭として、どうするのが一番良いのかを考えているのだった。


(ジュエルイアンさんの依頼の中には、アメルーミラさんは、入ってない。 後から、押しかけてきたメンバーなのだから、ジュエルイアンさんの依頼の範囲外よね。 でも、彼らの様子を見ていると、年齢も同じ位だから、仲も良かったから、突然、居なくなったとなれば、・・・。 やっぱり、ショックを受けるでしょうね。)


 何かを考えるようなルイセルを、アズミーシャは、心配そうに見ている。


 その視線をルイセルも感じたようだ。


(ああ、そうよね。 アメルーミラさんは、猫の亜人なのだから、亜人奴隷による誘拐も考えられるわけよね。 ・・・。 その可能性が、一番、高いわけよね。 でも、この時間に、そんな届出をしても、取り合ってもらえるのは、明日の朝になるわね。 ・・・。 いえ、それより、ジューネスティーンさん達への説明を、・・・。 どうしたら、・・・、いいのかしら。)


 宿屋の主人ならば、外に出たと思った顧客が、帰ってこなかった場合、宿代の踏み倒しの問題が気になるところだろうが、宿代は、ジューネスティーンのパーティーから支払われているので、宿代の踏み倒しについては、全く、問題が無い。


 それに、ジューネスティーン達が、ツノネズミリスの討伐のため、ツカ辺境伯領に行って、帰った後に、アメルミーラの宿代は、前払いでもらっているので、むしろ、返却する必要が出るのだが、アメルーミラの使っていた部屋は、一般的な1人部屋で、浴室も無い部屋だったので、それ程高い金額ではない。


 ルイセルとしたら、そんな自分の宿代より、ジューネスティーン達と、ジュエルイアンとの信頼関係が悪くなることの方が、問題である。


 特に、この第9区画における、ギルド支部の通り沿いは、ジュエルイアンが開発を一手に担っていたこともあり、そのジュエルイアンの伝手で、亡くなった父母の後、借金の方として、元の宿屋を持って行かれてしまい、兄弟共々、路頭に迷うところを、昔の吉見で、宿屋の経営を任されているのだ。


 その恩人である、ジュエルイアンから、宿の世話を頼まれたジューネスティーン達6人だが、そこに、新たに加わったアメルーミラが、行方不明となってしまったのだ。


(いえ、ジュエルイアンさんからの依頼は、ジューネスティーンさん達6人の事だから、ジュエルイアンさんと、アメルーミラさんの接点は無いわ。 それについては、ジューネスティーンさん達か、私達が、ジュエルイアンさんに話をしなければ、何も問題が発生するわけではないのだから、ジュエルイアンさんが、アメルーミラさんの安否を気にすることはないのよ。)


 ルイセルの表情が、少し和らいだようだ。


(そうね。 特に、問題になるような状況ではないわね。 普通に泊まっていた顧客が、夜に外に出たと思ったら、帰ってこなかっただけなのよ。 後は、ジューネスティーンさん達にどうするのかだけね。)


 ルイセルは、何か、納得するような表情をした。


「そうね。 もう、夜も遅いし、こんな時間に捜索に出たら、二重遭難になる可能性もあるわ。 朝まで、待って、それから、ジューネスティーンさんと相談しましょう。」


 ルイセルは、アズミーシャに自分の決断を伝えた。


 アメルーミラは、若い女性でもあるのだ、好きな男の1人も、外に居ないとも限らない。


 そんな男性が居たなら、ジューネスティーン達には、知られたいとは思わないはずである。


 ならば、黙って、外に出て、合挽きをしていることもある。


 もし、そうだったとすると、今、ここで、騒ぎになるような事になった場合、アメルミーラの立場が、不味くなる。


 宿屋としては、そんな個人の思惑も分からずに、慌てた対応をしたとなっては、ジューネスティーン達、そして、その背後に居る、ジュエルイアンに対して、面白い話にはならないことになる。


「ひょっとしたら、明日の朝、こっそり、帰ってくるかもしれないわ。 だから、朝まで、帰ってくるのを待ちましょう。」


「はい。」


 ルイセルは、結論を出した。


 それをアズミーシャも受け入れた。


 帰らないアメルーミラの問題は、朝まで、持ち越すこととなったのだった。


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