表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1343/1356

アメルーミラの帝都脱出


 ヲンムン軍曹の言葉に、アメルーミラは、喜んだ。


 しかし、これから、西街道を進んでとなると、帝都を出なくてはならない。


 ここは、未開発地区といっても、堀は完成しており、その堀を抜けるには、泳いで渡る事になる。


 アメルーミラは、この後の事を考えると、少しうんざりしたようだ。


(ここから、西街道に向かうとして、帝都を出るには、門を抜けるか、ここなら、堀を泳いで渡るしか無いわ。 また、濡れることになるのかしら。 でも、自由と引き換えなら、それも仕方がないと思うけど、・・・。 でも、あまり、面白くはないわ。)


 アメルーミラは、堀の方を見ていた。


 そして、少しうんざりしたような表情をした。


「アメルーミラ。 帝都を出るのは、南門からだ。 俺は、帝国軍情報部だからな、その肩書きを使ったら、この時間でも、問題無く門を抜けられる。」


 それを聞いて、アメルーミラは、ホッとしたようだ。


(よかった。 門から出られるなら、濡れることはないわ。 ・・・。 だったら、荷物を取ってくることもできるわ。)


 そして、何か嬉しそうにした。


「ああ、途中に金糸雀亭があるが、もう、金糸雀亭に戻らないでくれ。 お前は死んだ事になったのだから、これからは、可能な限り、人との接触は避けたい。 だから、お前の荷物は諦めてくれ。」


 ヲンムン軍曹の話を聞いて、アメルーミラは、ガッカリした。


(ああ、ジュネスさん達に、もらった衣装とかは、持っていけないのか。 ・・・。 でも、これから、歩いて移動だから、持ち物は少ない方が、ありがたいのかもしれないわね。)


 しかし、すぐに気を取り直したようだ。


 これから、西街道を徒歩で移動となるなら、持ち物は、少ない方が助かる。


 アメルーミラは、ヲンムン軍曹が、用意してくれた冒険者風のシャツとズボンの姿、もらった銀貨は、ポケットに入れてある。


 手に持っているのは、濡れたワンピースと、下着の上だけだ。


 すると、ヲンムン軍曹が、持ってきたバックをアメルーミラの前に出した。


「今の濡れた服は、これを使って持っていけ。」


 ヲンムン軍曹は、せめて、今日のワンピースだけでも、持たせようと思ったようだ。


「ありがとうございます。」


 アメルーミラは、バックを受け取ると、濡れたワンピースと、下着の上をバックの中に入れた。


 そして、バックを左手で下げると、ヲンムン軍曹は、護身用の短剣を腰から、鞘ごと抜いて、アメルーミラに渡した。


「魔物避けの石は持っていても、万一という事がある。 これを持っていけ。」


 アメルーミラは、短剣を受け取ると、本当に大丈夫なのかと思ったようだ。


(武器は助かるわ。 街道を歩いていて、魔物避けの石を持っていたとしても、心配だから、短剣があるだけでも心強いわ。 でも、貰って構わないのかしら? )


 心配そうに短剣を見ていた。


「こんなもんでは、お前の損失分を穴埋めできないが、持っていけ。 それに剣の使い方も、教えてもらえたから、随分、上手に使えるようになったじゃないか。 夜は、魔物も活性化しているからな。 あった方がいいだろう。」


 その言葉に、アメルーミラは、ホッとしたようだ。


 その表情を見て、ヲンムン軍曹も、多少は後ろめたさが緩和されたようだ。


「それじゃあ、行こうか。」


 ヲンムン軍曹は、誘うと、出入口の方に歩き出すので、アメルーミラも、後に続いた。




 第9区画は、南側の城壁沿いを進んだ。


 少しでも、人に出会わないように向かうのだった。


 ただ、第9区画の西から、南門までの移動は距離があったが、時間が深夜となっていたので、人と出会うこともなく、南門にたどり着く事ができた。


 ヲンムン軍曹は、南門の詰所の扉の横にある呼び鈴を鳴らした。


 すぐに、夜勤の門番が現れ、扉の小窓を開けた。


「こんな夜更けに、何か用ですか? 」


 すると、ヲンムン軍曹は、自分の身分証明証を見せた。


「帝国軍情報部のヲンムン軍曹だ。 緊急の用事で、1人、外に出したい。」


 その話を聞くと、小窓が閉められて、扉が開いた。


「かしこまりました。 それでは、中で帳簿にサインをお願いします。」


 門番が、そう言うと、ヲンムン軍曹は、門番の手に何かを握らせた。


「すまない。 これは、極秘任務なんだ。 俺は、ここまでだが、後ろの亜人を外に出したい。 それと、外へ彼女が出たことは、忘れて欲しい。」


 門番は、握らされた物を見ると、納得したような表情をした。


「かしこまりました、ヲンムン軍曹。 今日は、誰も南門には来ていませんから、安心してください。」


 門番は、ヲンムン軍曹の話を、胡散臭くは思ったようだが、握らされた物が、中銅貨1枚だった事と、ヲンムン軍曹の身分証明証が、本物だったことから、軍の秘密任務ということに納得したようだ。


「では、中に入ってください。」


 そう言うと、ヲンムン軍曹を詰所に案内したので、ヲンムン軍曹は、アメルーミラを連れて、詰所に入った。


「夜中にすまないな。 どうしても、人に見つからないように出さないと不味いので、手数をかけてしまったな。」


 ヲンムン軍曹は、詰所の中にアメルーミラと一緒に入ると、門番に言った。


「いえ、帝国軍の任務でしたら、問題ございません。 私は何も見てませんから。」


 門番は、そう言いつつ、扉の鍵を開いて、奥の小部屋に入っていった。


 門の大扉は、開く事ができないので、詰所の中に人が通り抜けられるようになっている。


 そして、門の内部側と、外側への部屋が用意されており、もう一度、外側の部屋に移動するための扉を抜けた。


 万一のためと、有事の時のためにこの小部屋には仕掛けがあり、非常事態の時は、扉を開かせないための仕掛けが用意されていた。


 今は、そのどちらでもないので、扉の鍵を開ければ、簡単に通り抜けられる。


 3人が外に抜ける小部屋に入ると、門番は、入ってきた扉の鍵を閉め、最後の門の外に抜ける扉の鍵を開け、扉を開くと、ヲンムン軍曹は、アメルーミラに目配せをした。


 アメルーミラは、その視線を受けると、扉を抜けた。


 そして、部屋の中を振り返ると、ヲンムン軍曹に、お辞儀をしたので、ヲンムン軍曹は、慌てて敬礼した。


「任務の成功を祈っている。」


 そして、顎を軽く振って、さっさと行けと言うように、態度で示した。


 敬礼を戻すと、門番の方を向き、扉を閉めろと言うように視線を向けると、門番は、扉を閉めて鍵をかけた。


(アメルーミラのやつ、そのまま、立ち去ればいいのに、あの状況で、お辞儀なんかしたら、怪しまれるだろう。 ・・・。 まあ、あいつなりの、お礼の意味もあったのだろうが、声に出さなかっただけでもよかったってところか。)


 すると、門番が、元の扉の鍵を開けていたので、ヲンムン軍曹は、その扉を抜けた。


 そして、帝都側の扉を開けてもらうと、ヲンムン軍曹は、門番を見た。


「助かったよ。 これで、任務の遂行ができたよ。 それと、この事は、軍内部でも極秘なんだ。 誰にも言わないように頼む。」


「かしこまりました、軍曹。 今日は、誰もここを抜けていませんから、安心してください。」


 門番は、分かっているといった様子で答えてくれた。


 門番は、敬礼すると、ヲンムン軍曹も敬礼を返し、なおると、ヲンムン軍曹は、南門を後にすると、門番も、何事も無かったように、扉を閉めた。


 アメルーミラは、深夜に帝都を脱出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ