アメルーミラに対するヲンムンの考え
アメルーミラは、ワンピースごと水場に入って、血のりを落とすと水浸しで、上がってきた。
そのため、ワンピースは、肌に張り付くようになり、そして、スカートの裾から水を滴らせていた。
そんなアメルーミラに、ヲンムン軍曹は、乾いたタオルを渡した。
「服も用意してある、その濡れたスカートを脱いで、体を拭け。 それで、こっちの服に着替えろ。」
ヲンムン軍曹は、持ってきていた、バックの中から、冒険者用のズボンとシャツを出すと、アメルーミラとは反対の方を向いた。
アメルーミラは、ヲンムン軍曹が、気を利かせてくれたことにホッとすると、ワンピースを脱いで、濡れた胸の下着だけの姿になると、体を拭き始めた。
そして、腹から下を先に拭くと、血のりを付ける前に脱ぎ捨てていた下着を拾った。
(血のりを付ける時、下着を脱げと言われて恥ずかしかったけど、今となったら、助かったわ。 濡れた下着を履いているのは、気持ち悪いから、この後は、乾いた下着を履いていられるわ。)
アメルーミラは、ホッとした様子で、下着を広げると、足を通して、腰まで上げ、足と足の付け根あたりに出ている尻尾を片方の手で持つと、もう片方の手で、腰まで、下着を上げた。
下着を上げて、腰が隠れると、持っていた尻尾を、下着のお尻の部分にある、尻尾を出す穴を、広げるようにして、下着に自分の尻尾を通すと、尻尾の位置を確認するようにしつつ、位置を決めると、下着全体の位置を正すようにした。
そして、今度は、濡れた、胸の下着を外して、下着の下や、脇の下をタオルで拭いた。
体を拭き終わると、ヲンムン軍曹が、出してくれた冒険者用のシャツを素肌に着た。
ただ、男物なのか、大きめのシャツなので、肩の位置が、二の腕の上に掛かっており、裾も太ももに掛かり、下着を完全に隠して、太ももの中ほどまで下がっていた。
そして、用意されたズボンを履くが、ウエストが、大きくあまり、そして、足も長いので、アメルーミラは、座り込んで、ズボンの裾を折曲げていき、丁度良い長さにした。
ただ、大きく余っているウエストは、腰骨にも引っかからないので、仕方なさそうに片手で持つようにした。
「着替え終わりました。」
アメルーミラが、ヲンムン軍曹に言うと、ヲンムン軍曹は、振り返った。
ブカブカのシャツに、大きめのズボンを片手で、落ちないように持つアメルーミラを見ると、ヲンムン軍曹は、バックの中から、ベルトを取り出して、アメルーミラに渡した。
受け取ったベルトをズボンに入れる。
「あの、ヲンムンさん。 なんで、こんな、手の込んだ事をしなければいけなかったのですか? 」
ヲンムン軍曹は、面倒臭そうな表情をした。
「ああ、ヲルンジョン少尉は、あの通りの人だからな。 お前が生きているとなったら、毎日、お前をベットに呼び込むはずだ。 いつもは、娼館で遊んでいたみたいなのだが、お前の存在に気がついたから、これから、毎日、お前を呼ぶ事になるだろうからな。 だから、ヲルンジョン少尉には、お前が死んだと思い込んでもらいたかったんだ。」
アメルーミラは、ヲルンジョン少尉が、毎日、自分の体を貪るのかと思うと、ヲンムン軍曹の言うように、自分が死んだと思わせるのは、有効な手段だと思ったようだ。
ただ、そうする事によって、ヲルンジョン少尉以外の人に対してどうなるのか、アメルーミラは、気になったようだ。
(帝都で活動しているジュネスさん達と、私は、一緒に居るのだから、このまま、ジュネスさん達と一緒に居たら、ヲルンジョン少尉に、私が生きている事が、伝わる可能性が有ると思うのだけど。)
アメルーミラの視線が、不思議そうにヲンムン軍曹を見ていた。
「ああ、お前には、これから、南の王国に行ってもらう事にする。」
「・・・。」
アメルーミラは、ヲンムン軍曹の言葉を聞いて、意味が理解できてないという表情をした。
「アメルーミラ、お前は、このまま、南の王国に行って、冒険者として暮らすんだ。」
「・・・。」
アメルーミラは、何で、南の王国へ向かう必要があるのか、理解できずにいるようだ。
(どう言う事? このまま、私が、南の王国に行ったとしたら、私の任務は、どうなるのかしら? え! ジュネスさん達も、南の王国に向かうから、私も、南の王国に行けと言う事なのか。)
ヲンムン軍曹は、アメルーミラに説明を始めてから、その表情を見ていたのだが、どうも、アメルーミラの表情を見て、不安になったようだ。
「ああ、ジューネスティーン達への侵入は、終わりだ。 後の事は気にせず、南の王国へ行くんだ。」
「はい。」
アメルーミラは、ヲンムン軍曹が、僅かに命令口調だったので、返事をしたが、その返事には、納得できないというより、何でそんな命令が出るのか、気になっているようだ。
「それで、これから、南の王国に向かうんだ。」
「こ、これからですか。」
アメルーミラは、ヲンムン軍曹の言葉に驚いた。
今は、深夜となるので、今から、帝都を出て南の王国に向かうとなると、街道を使うにしても、魔物の脅威もあるのだから、命の危険が、昼間より、リスクが高いので、場合によっては命を落とす。
どんなに腕に自信がある冒険者でも、夜の移動は、最小限に抑える。
ましてや、この時間から出発するとなったら、死なずに次の宿場町に辿り着くのは、奇跡に近い話なのだ。
(どう言う事なの? 私に死ねと言うのは、嫌だから、死の可能性の高い命令を与えているの? )
アメルーミラは、このままだと自分は、魔物に食われて死ぬ可能性の高い命令を受けた事になる。
ヲルンジョン少尉に、死んだと見せかけるのではなく、死ぬ確率の、かなり高い命令を、アメルーミラに与えたと思うと、アメルーミラの表情は、急に暗くなった。
そんなアメルーミラの表情の変化を見て、ヲンムン軍曹は、自分の話た事を振り返っていたようだ。
「ああ、悪い。 話が飛びすぎて、意味が通じないな。」
ヲンムン軍曹は、そう言うと、息を大きく吸った。
「まず、お前との奴隷契約は、終わりにする。 そして、お前には、帝都を離れて、南の王国に向かってもらう。 ただ、奴隷紋の解除ができないのは、申し訳ないと思うが、緊急になってしまったからな、正式な解除は、諦めてくれ。」
「は、はぁ、い。」
アメルーミラは、唖然として答えた。




