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偽装工作の後始末


 水場の中で、尻餅をついてしまったヲルンジョン少尉を、ヲンムン軍曹は、思わず吹き出しそうになったようだ。


「少尉、丁度いいですから、そのまま、体を濡らしてください。 そうなったら、きっと、門番にをごまかすことも、リアリティーが出て、かなり、信憑性が増します。」


「そうか。 わかった。」


 そう言うと、ヲルンジョン少尉は、その水場で、寝転んだ。


(おいおい、それは、大丈夫なのか? )


 ヲンムン軍曹は、ヲルンジョン少尉が水場で寝転んでしまったことに、少し驚いた様子で見ていた。


「もう、大丈夫でしょう。 上がってきてください。」


 ヲルンジョン少尉は、言われて、体を起こして、立ち上がって、水場をでた。


「それじゃあ、このまま、さっき入ってきた隙間から、この場を立ち去ってください。」


 ヲンムン軍曹は、アメルーミラが、自分の体で隠れるようにしつつ、ヲルンジョン少尉と並行して歩き、塀の隙間の部分に向かった。


「これから後のことは、自分の方で、行っておきます。 呉々も、アメルーミラが死んだことは、伏せておいてくださいね。 誰に、何を聞かれても、奴隷の事は、知らぬ存ぜぬですよ。」


「ああ、そうする。」


 ヲルンジョン少尉は、落ち着いてきたようだ。


「それと、第2区画へ入るのは、南門を使ってください。」


 そのヲンムン軍曹の言葉に、ヲルンジョン少尉は、なんでだといった表情を見せた。


「ああ、人との接触は、抑えた方が得策です。 ここから一番近い、第5区画を通って、第2区画ですと、門を2階通過します。 だったら、遠回りになろうが、1回で済む南門を使った方がいいでしょう。 それに、第9区画を作った時に、第2区画の前にある堀は、そのままにされてますから、その堀に、酔って落ちてしまったなら、言い訳も立ちます。 ですので、第5区画の門を過ぎた少し先から、第9区画の北側を歩いていってください。」

 ヲルンジョン少尉は、ヲンムン軍曹の話に納得したようだ。


「そうか。 そうだな。 君もちゃんとした情報部員だ。 その方法で説明したら、直ぐに、門は抜けられそうだな。」


 ヲルンジョン少尉は、ヲンムン軍曹の提案に満足したようだ。


 すると、入ってきた塀の隙間まで来たので、そこをヲルンジョン少尉が潜ろうとすると、ヲンムン軍曹を見た。


「ヲンムン軍曹、助かったよ。 近く、辞令が出ることになるから、よろしく頼むよ。」


 そう言って、入ってきた隙間を抜けて行った。


 ヲンムン軍曹は、ヲルンジョン少尉が抜けた、その隙間から、様子を伺っていた。


 実は、ヲンムン軍曹を疑っているのを察知されないようにしつつ、話を合わせていたとも限らないので、隙間を抜けて、通りの方に抜けると、その跡を追って、ヲルンジョン少尉が、戻ってくる気配か、疑っていないかを確認した。


 そして、通りを早足で歩いて、この場を去っていく、ヲルンジョン少尉を、見えなくなるまで確認し、少し止まって、周囲の様子を確認する。


 ヲルンジョン少尉の気配を探っているのだ。


 騙す側としたら、何か、些細な落ち度で、嘘が瓦解してしまう。


 実は、知らないフリをして、ぐるりと回ってきて、ヲンムン軍曹の前に現れないとも限らないので、慎重に周囲の警戒を行った。


 そして、問題無いと判断すると、塀の隙間から、未開発地区へ入っていく。




 その先には、アメルーミラが、血だらけで、転がっていた。


 その側に来ると、ヲンムン軍曹は、アメルーミラの全身を見る。


(酷い状態になっている。 これだけ血だらけだったから、うまく誤魔化せただろう。)


 アメルーミラは、死体の役を続けていた。


「おい、もう、いいぞ。」


 ヲンムン軍曹が、アメルーミラに言うと、アメルーミラは、血のりで、血だらけになったといっても、下半身を剥き出しにしていたので、スカートを下に下ろすようにして、体を起こした。


 そして、ため息を吐くと立ち上がった。


「すみませんが、私も血のりを落としても構わないでしょうか? 」


 そう言いつつ、アメルーミラは、立ち上がり、ヲンムン軍曹を見た。


「ああ、そうだな。」


 ヲンムン軍曹が、了解すると、アメルーミラは、ヲルンジョン少尉が、血のりを洗った水場に向かった。


 水場の脇で、靴と靴下を脱ぐと、そのまま、水場の階段を降りていった。


 アメルーミラは、水場に降りると、直ぐに、水の中に入り、その場に座り込んでしまった。


 そして、口の周りに、両手ですくった水を口周りに持っていき、口元の血のりをぬぐい始めた。


 腹から下は、水の中に入って、流すようにしていた。


 ただ、アメルーミラには、一つ、疑問があったようだ。


(でも、なんで、ヲンムンさんは、こんな、手の込んだ事をしたのかしら? )


 こんな事をしたら、ヲルンジョン少尉に見つかっては困ることになるのだが、そんな事をする必要が、アメルーミラには、分からなかったのだ。


 ヲンムン軍曹としては、このまま、アメルーミラを自分の奴隷として、使い続けた場合、ヲルンジョン少尉のセクハラに悩まされることになると思うと、嫌気がさしていたのだ。


 ヲルンジョン少尉の性格なら、毎日でも、アメルーミラに伽を命じるように言ってくる可能性が高いので、その都度、ヲンムン軍曹が、アメルーミラに、伽をするようにと命令する必要が出てくる。


 そんな事が続くとなれば、潜入スパイとして、使い物になるのか、数日もしたら、メンバーに異変を知られてしまうことになる可能性が高くなる。


 そんな事になったら、潜入が失敗する可能性が高くなるのだ。


 だったら、ヲルンジョン少尉には、アメルーミラが死んだと思わせておくことが、一番良いのだ。


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