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ヲルンジョン少尉の不当な命令


 酔っているとはいえ、ヲルンジョン少尉の命令は、流石にヲンムン軍曹も驚いた。


 そして、その命令を横で聞いていた、アメルーミラは、恐怖に震えていた。


 ヲンムン軍曹は、ヲルンジョン少尉の命令に、自分が、どうやって対処しようか迷っているようだった。


 アメルーミラは、奴隷なので、ヲンムン軍曹が、ヲルンジョン少尉の相手をしろと命令したら、断ることは出来ないのだ。


 ただ、ヲンムン軍曹としても、初めて使う亜人奴隷なのだ。


 獣の耳を持ち、尻の割れ目の間の部分から出ている尻尾程度の違いしかない。


 人と亜人の違いといった、そんな見た目程度しかない。


 普通に話もできること、初めて雇う亜人奴隷に戸惑っているようだ。


「少尉、流石に、それは、自分には、命令できません。」


 ヲルンジョン少尉は、顔色を変えると、ズカズカと歩いてくるが、酔いの為フラフラしていた。


 そして、ヲンムン軍曹の前に来ると、ヲンムン軍曹の胸ぐらを掴み、酒臭い息を無意識のうちに吹きかける。


「おい、お前は、俺の部下だ。 それに、後ろの亜人の女は、お前の奴隷だ。 お前は、黙って、俺の命令に従えばいい! 」


 そして、後ろにいるアメルーミラを、ヲルンジョン少尉は、嫌らしい目で見た。


「むふふ、いつもの娼館の女達より、若い娘じゃないか。 ・・・。 久しぶりだな。 こんな上玉を、今日は抱けると思うと、あっちの方もはち切れそだぞ。」


 ヲルンジョン少尉は、自分の欲望の求めるまま、言葉にしたようだ。


 酒に酔っている事もあり、足元もおぼつかない状況では、まともな判断もできていないようだ。


 ヲンムン軍曹は、酔っ払いの戯言として処理して良いのか、悩んでいた。


 まだ、今の酔い方なら、記憶も残っているはずである。

 断って、明日、呼び出しを受けて、叱責されることは無いだろうが、その恨みは、長期にわたって残ることになる。


 ならば、後から、どんな仕返しを受けるのか、ヲルンジョン少尉の、今までの事を考えたら、どんな仕返しが待っているのか、場合によっては、手足や、片目を失ったり、最悪の場合は、命の危険を伴う命令を受ける可能性もある。


 特に、帝国は、広大な東の森に接しており、そこには、討伐不可能とされた、東の森の魔物が生息している。


 最近、ジューネスティーン達が、一匹を退治したが、まぐれという可能性もあるが、ヲンムン軍曹には、東の森の魔物を倒すことができる装備など持ってはいない。


 いや、帝国軍でも、東の森の魔物を倒せるものなど、何も持っていない。


 帝国軍が持っているのは、魔物避けの魔道具なので、魔道具によって、追い返す程度なのだ。


 ヲルンジョン少尉なら、大事な情報、命の危険が考えられる、例えば、東の森の魔物の存在を隠して、調査の命令を出し、ついてみたら、東の森の魔物と対峙することになり、あっさり、命を落とすことも考えられるのだ。


 そんな事を平気で命令しそうな上司なので、ヲンムン軍曹は、アメルーミラにヲルンジョン少尉の伽の相手を命令するかどうか悩んでいたのだ。


「さあ、お前の奴隷に、俺の相手をするように命令をしろ! 」


 ヲンムン軍曹は、悩んでいる。


「お前の出世も未来も、それを命令できるかにかかっているのだぞ。 俺は、貴族だ。 私は、ある筋の傘下にいる。 その力を使えば、お前1人の出世の取り立ても、家族諸共消えてなくなるのも、私の一言で決まるのだぞ! 」


 ヲンムン軍曹は、精神的に限界にきている。


 本来であれば、メイカリア中佐から、アメルーミラに対して、奴隷としてではなく、スパイとして扱うようにと言われているのだから、ここで、ヲルンジョン少尉の性奴隷として提供することはできないと、突っぱねれば良いはずなのだが、ヲンムン軍曹には、そこまで、頭が回らなかったようだ。


 そして、ヲンムン軍曹は、一つの秘策を思いついたようだ。


「少尉。 アメルーミラに伽の命令をします。 ですが、奴隷商から購入した際、表に出ない奴隷紋を用意して、対象達に、奴隷だと気付かせないようにしてます。 その代償として、特殊な命令には、別の呪文が必要になります。 その呪文を使いますので、今しばらく、お待ちください。」


 その答えを聞いて、アメルーミラは、ヲンムン軍曹の背後に隠れていたが、ヲンムン軍曹も、自分が生き抜くために、アメルーミラを犠牲にしたので、アメルーミラは、ゆっくりと後ずさっていく。


「止まれ! アメルーミラ! 」


 ヲンムン軍曹の命令によって、アメルーミラは、その場で止まった。


「それでは、少尉! 命令の呪文を使いますので、少々お待ちください。」


「お、おお、早くするのだぞ! 」


 アメルーミラの見えない奴隷紋に、ヲンムン軍曹の言った、特殊な呪文も命令も無い。


 だが、ヲルンジョン少尉は、それを信用した。


 ヲンムン軍曹は、ヲルンジョン少尉の様子を確認すると、敬礼して振り返る。


 そこには、後退りながら、立ち止まっているアメルーミラが居た。


 アメルーミラの耳元にヲンムン軍曹は、顔を近づけると、何やら、言葉にならないような唸り声のようなものを発した。


 そして、アメルーミラに語りかけた。


 最初は、自分の未来が、ヲルンジョン少尉の慰み者になるのだと思って、悲しい顔をしていたが、耳元で笹やれていると、表情が変わってきた。


 すると、最後の呪文と言わんばかりに、ヲンムン軍曹が、変な唸り声と共に呪文を言うと、アメルーミラの横に避けると、ヲルンジョン少尉を見た。


「これで、ヲルンジョン少尉の伽を、アメルーミラは、断れなくなりました。」


 それを聞いて、ヲルンジョン少尉は、いやらしく笑った。


「そうか、そうか。 今日は、たっぷり楽しませてもらうぞ。」


 そう言うと、アメルーミラが、ヲルンジョン少尉の前に寄った。


「では、まいりましょう。 とても、興奮する場所を用意します。」


 そう言うと、ヲルンジョン少尉の腕を抱くようにして、片手に持っている酒瓶を取り上げた。


「さあ、とても気持ちの良くなる方法も知っておりますから、今日は、何度も昇天させてあげます。」


 アメルーミラは、娼婦のような話し方をしていた。


 ヲルンジョン少尉には、ヲンムン軍曹の命令には、そんな事も可能な命令があったのだと、鼻の下を伸ばしているようだ。


 ヲルンジョン少尉の酔いの回った頭では、深く考えられていないようだ。


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