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メイカリア中佐とヲルンジョン少尉 4


 ヲルンジョン少尉は、昨日、メイカリア中佐が、置いておいた、連絡用石板を見落とした事を指摘されて、焦った表情をしていた。


 本来なら、その程度の事で、ヲルンジョン少尉が晒し者になる事は無い。


 通常なら、申し訳ないと、詫びを入れて、済むような事なのだが、いつもの行いの悪さから、周囲に聞こえるように、ヲルンジョン少尉の問題を、他の職員に聞こえるように言う事は無い。


 メイカリア中佐の執務室で叱責すれば済む程度の事なのだが、ヲルンジョン少尉が、いかにも悪人であると、周囲の職員に周知させるように、メイカリア中佐は、話を進めていた。


 焦っているヲルンジョン少尉に、メイカリア中佐は、追い討ちをかける。


「ヲルンジョン少尉、ヲンムン軍曹から、監視対象の中に潜入させた者からの報告はどうなっている。」


 これも、メイカリア中佐は、直接、ヲンムン軍曹から報告を聞いており、周囲の職員もヲンムン軍曹が、報告のために、ここの執務室に訪れていたことを知っている。


「あ、は、はい。 ヲンムン軍曹から、報告は受けていません。 ち、近いうちに、・・・、いえ、今日にでも呼び寄せて、報告を聞くようにいたします。」


「そうか、ヲンムン軍曹は、まだ、報告に来てなかったのか。」


「は、はい。」


「ヲンムン軍曹は、ヲルンジョン少尉に、報告には来てなかったのか? それとも、ヲルンジョン少尉が、ここに居なかったから、ヲンムン軍曹の報告を受けられなかったのでは無いのかな。」


 メイカリア中佐は、本当の事を言ったので、ヲルンジョン少尉は、ギクリとしたようだ。


「い、いえ、そ、そのようなことは、ご、ございません。」


「そうか。 ヲンムン軍曹は、この執務室に、報告に来て無かったと言うのだな。」


「は、はい。 そ、その、通りです。」


 メイカリア中佐も、そこに居る職員達も、ヲンムン軍曹が、毎日、昼前に、この執務室に来ては、ヲルンジョン少尉を待っていたことを、誰もが知っている。


 それは、メイカリア中佐も一緒で、メイカリア中佐自身が、ヲンムン軍曹から、報告を聞いていたのだ。


「なるほど、ヲンムン軍曹は、ヲルンジョン少尉には報告をしてないのだな。」


「は、はい。」


 メイカリア中佐は、ヲンムン軍曹がヲルンジョン少尉にだけ、報告してないのか、ヲンムン軍曹が報告してないのか、その辺りを明確にはせず、話をした。


 それは、ヲルンジョン少尉が、その後、どんな事を言い出すのか気になったからだ。


 ヲルンジョン少尉は、メイカリア中佐のそんな思惑が、見えてこないのか、返事だけをしたようだ。


 しかし、周囲の職員達は、ヲンムン軍曹が、毎日、‘ヲルンジョン少尉に報告のために来たのだが、ヲルンジョン少尉が、席を外していたので、報告に来ても報告できずにいたのだ。


 そして、先日、メイカリア中佐に声を掛けられていたことを、周囲の職員は知っている。


 周囲の職員は、状況証拠から、ヲンムン軍曹は、メイカリア中佐に、直接、報告しただろうことは、勘付いているので、ヲルンジョン少尉が、この場をどう切り抜けるのか、気になっているようだ。


「そうか、彼らも、そろそろ、帝都に戻ってくるはずなので、潜入工作員の話を聞きたかったのだが、少尉のところに、報告が届いていないのか。」


 メイカリア中佐の言葉を聞いて、周囲は、オヤと思ったようだが、ヲルンジョン少尉は、助かったと思ったようだ。


「ええ、ヲンムン軍曹が、まだ、報告に来てないので、ジューネスティーン達は、まだ、帝都には戻ってないのではないでしょうか。」


 ヲンムン軍曹が、この場に居ないので、ヲルンジョン少尉は、それを言い訳として使い始めた。


「あの男は、やる気が無いところが、ありますから、その辺を注意していました。 今回の仕事が上手く行けば、昇進もありうると伝え、やる気を出させてはみましたが、どうも、よくありません。 私の方から、ヲンムン軍曹に、状況報告をするように、キツく言っておきます。」


 それを聞いていた周囲の職員は、調子に乗ったヲルンジョン少尉を、冷たい目で見るのだった。


「そうだな。 実は、ある筋から、ジューネスティーン達が、帝都に入って、コアの提出を始めているらしいと聞いたのだよ。」


 ヲルンジョン少尉は、それを聞いて、一瞬、考えるような素振りをすると、メイカリア中佐を見た。


「これは、失礼いたしました。 早速、ヲンムン軍曹を呼び出し、状況報告と、情報が遅れた事を叱責しておきます。 メイカリア中佐には、お手を煩わせてしまい、誠に申し訳ありません。」


 メイカリア中佐は、ニヤリと笑った。


「そうか。 いや、私の情報源は、自分の直属の上司が、全く、自分の席に顔を出さずに、どこかに隠れてしまったので、毎日顔を出しても、結局、報告ができないと嘆いていたのでな。 それで、私が、その話を代わりに聞いてあげたのだよ。」


 ヲルンジョン少尉は、それを他人事のように聞いていた。


「そうですか、それは、大変な上司に引っ掛かってしまったようですね。 そう言う事でしたら、私の方で調査を行いましょうか。」


 そこまで言うと、メイカリア中佐は、右の掌をヲルンジョン少尉に見せて、話を止めた。


 しかし、今の話を聞いていた、周囲の職員は、笑いたいのだろうが、この場で笑う事ができずに、そのまま、顔を背けていた。


 周囲は、ヲルンジョン少尉から、自分の表情を見られないように工夫しつつ、自分の仕事も止めて、メイカリア中佐とヲルンジョン少尉の話に聞き耳を立てていた。


「その必要は無い。 そんな事に手を煩わせる必要は無い。 むしろ、資料室の整理の方が、重要なのでは無いのか。」


 メイカリア中佐の話を聞いて、ヲルンジョン少尉は、ホッとしたような表情をした。


 ヲルンジョン少尉としても、部下は、ヲンムン軍曹だけになってしまっているので、もし、その仕事を引き受けたら、自分が動く事になると、言った後に思いついたようだ。


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