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カルンコン准尉の話


 昼になっても、ヲルンジョン少尉は、現れなかった。


 仕方なく、ヲンムン軍曹は、昼食をとるため、執務室を出て、職員食堂に向かった。


 食堂で、日替わりの定食を頼んで、トレーを持って空いている席を探して移動する。


 空いている席を見つけ、そこにトレーを置き、前の席の人は、もう食べ終わるところだと確認しつつ座った。


 ヲンムン軍曹が、食事を始めると、すぐに前の席に座っていた職員は、食べ終わると席を立った。


 空いた席だが、それを気にする事もなく、ヲンムン軍曹は、自分の食事を食べていると、前の席を使う人が現れた。


「やあ、久しぶりですね。」


 前に座った男は、ヲンムン軍曹に話しかけてきた。


 しかも、自分を知っている口調だったので、ヲンムン軍曹は、食事を止めて、前に座った男の顔を確認した。


 そこには、ソルツ・ヲンゼン・カルンコン准尉が座ったのだ。


 カルンコン准尉は、ヲンムン軍曹より1年後に入隊してきたが、出世は、ヲンムン軍曹を追い越してしまっていた。


 そのため、ヲンムン軍曹としたら、カルンコン准尉は、顔を合わせたくない相手なのだ。


 そんな相手が、自分の前に座って、食事を取ろうとしているのだ。


 ヲンムン軍曹は、一瞬で、食事が不味くなったようだ。


 カルンコン准尉は、不適な笑みを浮かべた。


 すると、周囲に聞こえないようにとヲンムン軍曹の方に顔を近づけると、こっそりと話かけた。


「知っているか? ヲルンジョン少尉は、チェックされているらしぞ。」


 それを聞いて、ヲンムン軍曹の手が止まった。


 チェックというのは、帝国軍の内部監査の対象となったということだ。


 素行の悪いものや、成績を伸ばせずにいるものには、その理由を本人からだけでなく、査察を行う部署から、調査される。


 特に、士官は、高給取りが多い事もあり、調査が厳しいのだが、そんな中ヲルンジョン少尉が、対象となったと、カルンコン准尉は言うのだ。


「そうか。 なるほど。」


 ただ、ヲンムン軍曹は、やっと、チェックされているのかと思ったようだ。


 奴隷のアメルーミラを、購入した時、ヲンムン軍曹が貰った金額にも、後で経理に確認したら、足りないことがわかっていた。


 それ以外にも、自分のところにくる金額には、いつも少な目だった事を、ヲンムン軍曹は知っていた。


「お前、大丈夫か? あいつ、自分が助かるためなら、お前に罪を全部押し付けるかもしれないぞ。」


 それを聞いて、ヲンムン軍曹は、心当たりを探った。


(アメルーミラの購入は、中銀貨3枚だが、返還不要の金だ。 あれなら、問題はないはずだ。 ツカ辺境伯領の時は、魔法士団の2人と一緒だった。 あの時は、メイカリア中佐が、陣頭指揮をとったのだから、ヲルンジョン少尉は、関係無い。 はずだ。)


 ヲンムン軍曹は、最近の仕事を含めて考えていたのだ。


 ただ、2人の話を聞いただけだと、ヲンムン軍曹にも思い当たる部分が有ったようだと思えた。


 それは、カルンコン准尉も同じように、ヲンムン軍曹が何か、思い当たることがあるのかと思ったようだ。


「おい、何か、心当たりがあるのか? 」


 ヲンムン軍曹が、心当たりを探っていると、カルンコン准尉が、気になったようだ。


「心当たりは無い。 一応、今まで、何かあったか、確認していただけだ。」


 ヲンムン軍曹は、ムッとした表情で、答えた。


「ふーん。 だったら、いいが、あの少尉だけは、気をつけた方がいいぞ。」


 カルンコン准尉は、他人事のように言う事が、ヲンムン軍曹は、気になったようだ。


「それは、カルンコン准尉も、同じでは? 」


 ヲンムン軍曹は、カルンコン准尉も、同じヲルンジョン少尉の部下だったと、記憶していたので、不思議そうに聞いた。


 それを聞いたカルンコン准尉は、ニヤリとした。


「ああ、俺、7日前に移動になった。 まあ、情報部は情報部なんだが、ヲルンジョン少尉の部署から外れたんだ。 まあ、少尉と准尉なんでな、メイカリア中佐の指示で、移動になった。 何だか、分からないが、移動になって、助かったよ。 あんな奴の下で働いていたら、経費の上前を跳ねるわ、報告した内容は、上の空で聞いているわ、だったから、それに比べると、今は、心配することもないから、安心して仕事ができるぞ。」


 話を聞いて、ヲンムン軍曹は、唖然とした。


 ヲンムン軍曹は、自分の知らない間に、カルンコン准尉が移動になってしまっていたのだ。


「ああ、そうだ、ヲルンジョン少尉の下にいるのは、ヲンムン軍曹、お前だけだぞ。 俺以外も、移動になっているぞ。」


 ヲンムン軍曹は、自分以外の同僚が、ヲルンジョン少尉の部署から移動になっていると聞いて、嫌な気分になっていた。


(なんで、俺だけが、ヲルンジョン少尉の部下なんだ。 移動になるなら、俺が先だろう。 どうなっているんだ。)


 ヲンムン軍曹は、イラついたような表情をした。


「それにしても、ヲルンジョン少尉は、何かあると見られているんだ。 お前も、変な気を起こして、あいつと道連れになんて事になるなよ。」


「ああ、ありがとうよ。」


 そういうと、ヲンムン軍曹は、昼食を食べ終わり、テーブルを立ち上がった。


 そして、戻ってヲルンジョン少尉を待つのだが、就業時間になっても、ヲルンジョン少尉は、執務室に戻ってくることは無かった。


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