魔法訓練 〜フェイルカミラとアンジュリーン〜
アンジュリーンは、カメレオン系の亜人であるフェイルカミラの魔法を見る事になった。
ただ、フェイルカミラというのは、真面目が服を着て歩いているような女子なので、アンジュリーンにとっては、ちょっと苦手なタイプでもあった。
そんなフェイルカミラが、組み分けが決まると、すぐに、アンジュリーンの前に着た。
「アンジュリーンさん。 今日は、よろしくお願いします。」
フェイルカミラは、アンジュリーンに挨拶をした。
それは、アンジュリーンには、堅っ苦しく写った様子で、困ったような表情をした。
「あ、はい。 こちらこそ、よろしくお願いします。」
アンジュリーンは、自分が教える立場な事と、アンジュリーンのいつもの女王様気質からも、上から目線で話しをするだろうと、フェイルカミラは思っていたようだが、アンジュリーンのかしこまった様子に、少し、驚いているようだった。
「あのー、アンジュリーンさん。」
話しかけられて、アンジュリーンは、困ったような表情をした。
「あ、ええ、そのー、呼び方は、アンジュで構いません。」
アンジュリーンは、物静かに答えた。
それを聞いて、フェイルカミラは、分かったといった表情をした。
「分かりました。 では、これからは、アンジュさんと呼ばせてもらいます。」
フェイルカミラは、性格的に物事をはっきりさせておきたいのか、確実にアンジュリーンに伝わる声量で答えたのだが、アンジュリーンには、重く感じたのか、わずかに、頬を引き攣らせていた。
「あ、あのー、そんなに、かしこまらなくて構いません。 できれば、もっと、フレンドリーに話して板田絵kると、こちらとしても、やりやすいのですけど〜っ。」
「失礼しました。 ただ、目上の人には、敬意を払うというのが、小さな頃からの教えですので、エルフで荒らせる、アンジュさんは、私より年上ですので、見た目に関係なく、敬意を払わせてはもらえませんか? 」
フェイルカミラは、自分の事情を話すのだが、アンジュリーンには、今の言葉も重く感じたようだ。
「私は、38歳になりました。 アンジュさんの容姿から、どう見ても、40歳以下には見えませんでしたので、敬意を払って、教えを乞うつもりでした。」
亜人は、人と同じように歳をとる。
今のフェイルカミラは、38歳となったら、人属の38歳と同等の年齢に見えるのだが、アンジュリーンは、エルフなので、成長がゆっくりであり、10歳位の年頃の時に転移してきてから34年になるので、アンジュリーンの実年齢は44歳となる。
しかし、成長がゆっくりなエルフなので、見た目は、人属の16歳程度にしか見えない。
パッと見だと、10代の若造に40歳前後の中年が、教えてもらうような構図になる。
遠目に見て、エルフと人の違いは、その特徴的な耳なので、遠目に見てそれを見分けられるのか、アンジュリーンには、疑問があると思ったようだ。
そして、アンジュリーンは、転移した10歳の時なら、人の5歳位の年齢と同じなので、始まりの村のギルドに保護されてから数年は、小さな子供のような体型だった。
時々、住んでいたギルドの寮に、新たに冒険者になった人たちが、ギルドの寮を利用する事もあった。
南の王国の始まりの村なので、人の方が多いが、中には、亜人も居た。
アンジュリーン達は、そんな人や亜人が、始まりの村の寮を使っても、1年かそこらで、稼げるようになって、寮を出ていくので、そんな彼らにパーティーに入れて欲しとお願いした事があるが、最初の10年は、子供をパーティーには入れられないと、断り続けられた。
軽く、エルフの若造なんていらないとか、罵声を持って、追い払われていたなら、諦めもついただろうが、アンジュリーン達が、パーティーに入れてくださいと頼むと、常に敬意を払って、断ってくる人達がいた。
それは、亜人達だった。
人には、そのような事は無かったが、亜人達は、エルフに対しても敬意を払った対応をした。
この大陸で一番数の多い種族は、人になる。
2番目の人口を持つとしても、人の半分の人口にも満たない。
中でも、エルフとドワーフにおいては、圧倒的に人口比率が低い事もあり、亜人達は、エルフに対しても敬意を払って接してくれた。
アンジュリーンには、フェイルカミラの、その対応が、昔、パーティーに断られた亜人たちと重なって見えたようだ。
「すみません。 私にも色々あるのです。 だから、フェイルカミラさん。 お願いですから、目上などとは言わず、年下の、・・・。 そうです、姪でも扱うようなつもりで接していただけないでしょうか。」
アンジュリーンの懇願にフェイルカミラは、驚いていた。
「見た目は、私の方が、若く見えます。 私たち種族は、歳をゆっくりとます。 だから、見た目の様子で、扱ってもらった方が、助かります。 それに、・・・。」
アンジュリーンは、話に詰まりつつ、ジューネスティーン達の方を、ちらりと見た。
「私は、あそこにいる、ジュネスとシュレに救われたと思ってます。 2人は、人属ですから、この世界に来てから、12年しか経っていません。 でも、私の34年よりはるかに濃い12年を過ごしています。 それを、ギルドの高等学校時代に、思い知らされました。」
アンジュリーンは、寂しそうな表情をしたが、フェイルカミラには、そのアンジュリーンに答える言葉を見つけられずにいた。
「私がまともに使える魔法は、火魔法程度です。 付与魔法については、詠唱してやっと使える程度なんです。 だから、フェイルカミラさんに、どれだけ、教えることができるかと思ったら、本当に自信がないんです。 それに、私も、高等学校時代に、ジュネスに魔法を教えてもらって使えようになったのですけど、カミューとアリーシャの方が、早く覚えてました。 だから、魔法に関して、あのパーティーの中で私が一番下なんです。 ひょっとしらら、今のフェイルカミラさんの方が、火魔法は、大きなものが撃てるかもしれません。」
アンジュリーンは、今にも泣き出しそうな様子でフェイルカミラに訴えるように話した。
今の話を聞いていたフェイルカミラは、アンジュリーンの心の内を聞いたと思ったようだ。
(そうか。 あれだけの力があっても、不安な気持ちはあるのか。 ・・・。 そうだね。 私も、ジュネスやアンジュと出会って、とんでもない経験をさせてもらっているが、アンジュは、もっと前から、こんな経験を積んでいるのか。)
フェイルカミラは、ジューネスティーンの方に目を向けるが、すぐにアンジュリーンに戻した。
アンジュリーンは、俯いたままでいる。
(そうか、高等学校時代は、アンジュにとって、とてつもなく、濃い時間を過ごしたのか。 きっと、今も一杯一杯なのかもしれないな。)
フェイルカミラは、何か納得するような表情をした。
「分かったよ、アンジュ。 今まで、大変だったね。 もう、大丈夫だよ。 これからは、私が、アンジュが不安になった時には、話を聞いてあげるから、安心おし。」
アンジュリーンは、フェイルカミラの一言に今まで心の中に押し込んでいた不安な気持ちが、飛び出したようだったのだろう。
涙をボロボロと流して、フェイルカミラに抱きついた。
フェイルカミラは、それを受け止める。
アンジュリーンは、フェイルカミラの膨よかな胸に顔を埋めていた。
(私に子供がいたら、こんな感じなのだろうか? )
フェイルカミラは、しばらく、アンジュリーンを抱いて、頭を撫でて、落ち着くのを待つのだった。




