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帝都に戻った最初の夕食 2


 夕方になり、日が西の地平に差し掛かった頃、ウィルリーン達が、ジューネスティーン達の部屋を訪れた。


 そろそろ、ユーリカリア達も来るので、夕食を一緒に取ろうとのことだったので、全員が1階に降りる。


 途中で、レィオーンパードがアメルーミラを誘ってくれた。


 1階に降りると、ユーリカリア達も金糸雀亭のドアを開けて入ってきた。




 ユーリカリアは、全員が揃っているのを確認すると、全員で食堂に入っていく。


 一般的な夕食よりは、少し早い時間ではあるが、他の客もまばらに居る。


「いらっしゃいませ。」


 宿の奴隷である、猫系亜人のミューミラが迎えてくれた。


「ユーリカリアさん、ご贔屓にしていただきありがとうございます。 それに皆さんも、お昼に来て下さった時、私はご挨拶ができなかったので、改めまして、ツノネズミリスの討伐完了、おめでとうございます。」


 そう言って、丁寧にお辞儀をした。


「ああ、ありがとう。 でも、ツノネズミリスの討伐は、私より、ジュネス達の功績が大きいんだ。 私たちは、ジュネスの言われた通りに戦っただけなんだよ。」


「でも、皆さんで、協力して倒したのでしょ。」


「うーん。 まあ、そうなるな。」


「そんな方々に、お店を使ってもらえて、本当に嬉しいです。」


 そう言うと、ミューミラは、全員を奥にある個室へと案内してくれた。


「なあ、今日は、ただ、食べにきただけなんだが、なんで、こんないい部屋に通されるんだ? 」


 ユーリカリアが、ミューミラに聞く。


 以前、ジュエルイアン達と食べた個室に案内されたので、ユーリカリアもだが、ジューネスティーン達も、ちょっと、戸惑っていた。


「ええ、ジュエルイアン様から、ユーリカリアさんが訪れたら、店一番の料理を振る舞ってほしいと言われてます。 お代も、お酒も全てジュエルイアン様の商会から頂いておりますから、安心してください。」


 ユーリカリアは、ジュエルイアンの手回しの良さに驚きつつも、なんだか申し訳なさも表情に出していた。


 それを見ていたミューミラが、少し解説してくれた。


「ジュエルイアンさんの商会は、ツカ辺境伯領とは、ご縁が深いんですよ。 だから、ツノネズミリスが討伐されて、商会の方も本当に喜んでおりましたよ。 知らせが有った日は、うちの店で従業員の方々が、遅くまで大盛り上がりでした。 その後、会頭からの指示だからって、荷馬車一杯に酒樽やら食材やら、沢山送ってくれたんです。」


 それを聞いて、ジュエルイアンの顔を思い浮かべていると、ミューミラは続けた。


「突然、沢山の食材やら、酒樽でしたから、倉庫に入れるの大変だったんですよ。」


 ミューミラは、大変だったと言ったが、その表情には、困ったような表情は無く、むしろ嬉しそうにしていた。


「中には、日持ちのしない食材も有りましたから、それは、皆さんがこちらに来る前に賞味期限になってしまいましたので、使わせてもらいましたけど、余った物は、私達の賄いに使わせてもらえました。 ああ、でも、今日、お見えになったので、そういった食材は、今日、買い足してました。」


 話を聞いて、ミューミラ達にも、おこぼれが行ったと思えば、よかったのかと思う事に、ジューネスティーンとユーリカリアは思ったようだ。


 いずれにせよ、ジュエルイアンも商会をあげて喜んでくれたのなら、お祝いとしてありがたくいただく事にしようと、ジューネスティーンとユーリカリアは、お互いを見た。




 ただ、ユーリカリア達のメンバーにしてみると、酒樽が気になったようだ。


 ユーリカリアは、酒樽と聞いて喜んだ様子を見せたのだが、昨日のような事が有ってはと思ったのだろう、ユーリカリアのメンバー達は、ユーリカリアの酒量がどうなるのか気になったようだ。


 今日の午前中の事があるが、昼には元気になってしまっていたのだから、この夕食についても飲み出すのかと思ったようだ。


 そんな不安を抱えつつ、ユーリカリアのメンバー達が不安そうにしているのを、ジューネスティーン達のメンバー達も気が付いた様子で、ユーリカリアを見るようになった。


 周りの様子をユーリカリアは、知ることもなくミューミラに答える。


「そうか、ジュエルイアンも、こっちに、色々、気を遣ってくれたのだな。 だが、今日は、その酒樽はやめておこう。 軽く食前酒だけにしておいてくれ。」


「はい。 かしこまりました。 厨房には、いただいた酒樽ではなく、いつものお酒を用意させてきます。」


 そんなユーリカリアの答えに、周りは、唖然として聞いていた。


 ミューミラが、その場を後にすると、ユーリカリアは、テーブルに歩いていく。


 ただ、周りは全て、入口付近に立ったまま、ユーリカリアを見ていた。


 1人だけ、テーブルの付近に行くと、誰も席に着こうとしないのを、ユーリカリアが見て、不思議そうに声をかける。


「どうしたんだ? みんな、食べないのか? 」


 ユーリカリアに聞かれて、入口付近で立っていたメンバー達は、慌て出すと、ジューネスティーン達のメンバーは、ジューネスティーンを見るが、ジューネスティーンもなんと言っていいのか分からずにいる。


 その沈黙を見て、フェイルカミラが代弁するように話し出した。


「リーダー、珍しいですね。 酒樽は、構わないんですか? 」


 それを聞いて、ユーリカリアは、何を聞いてくるのかと、不思議そうにしていた表情は、そのままで、答えた。


「まだ、コアの換金が終わってないだろ。 酒樽は全ての事が終わった後だ。 だから、今日は、軽く飲むだけで終わらすんだ。」


 それを聞いて、周りは、ホッとしたような顔をするが、直ぐに、表情を曇らせた。


(10日後には、昨日の酔っ払いになるんじゃ無いのか? )


(酒樽って、ユーリカリアさんが飲んだら、どれ位持つの? まさか、1日で飲まないよね。)


(あーっ、10日後のリーダーの姿が目に浮かぶ。 また、私がおぶっていく事になるのか。)


 それぞれが、それぞれの思いを秘めて、テーブルに着いていく。


 食事は、豪華なものが運ばれてきた。


 中には、今まで食べた事の無い料理もあり、美味しくいただく事になった。


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