帝都に戻った最初の夕食
ギルドを出ると、ユーリカリア達は、金の帽子亭に、ジューネスティーン達は、金糸雀亭に戻る事になる。
行き先は、道を挟んで向か合せの宿となるので、一緒に歩いている。
「なあ、ジュネス。 コアの提出だが、10日近くギルドと行ったり来たりになるな。 その間、余った時間はどうする? 」
「特に決めてはませんけど、とりあえず、南門の外で、ルーミラに魔法を教えつつ、時間を潰そうかと思ってます。」
それを聞いたユーリカリアは、丁度良いとおもったようだ。
「なあ、だったら、そのルーミラの魔法の訓練に、私達も参加させてくれなか? 」
「ええ、別に構いませんけど。 でも、ユーリカリアさん達だと、退屈な訓練になると思いますよ。」
「それでも構わない。 時間潰しにもなるだろうし、それに私もシェルリーンも火魔法は使えてないからな。 特に、シェルリーンは、もう一度、基礎からやり直した方が良いのかもしれない。」
ジューネスティーンもユーリカリアが言わんとしている事はわかる。
ユーリカリアには、過去のトラウマを取り除く必要があるが、シェルリーンについては、トラウマが有るとは思えない事もあり、もう一度初めから教えたら、使えるようになるかもしれないのだ。
または、ユーリカリアのようにトラウマが見つかるかもしれないが、原因が分かってないなら、再度挑戦しても良いと考えられるのだ。
また、何も分からない状況で、新たな事を知ると、聞いていても理解できいない部分が多い。
それが、弊害となって、進歩が遅れてしまう事が多いのだ。
特に基礎的な部分についてなら、細部までしっかりと理解を深めることで、進歩を早める事が多い。
基礎を疎かにしていると、ある程度までは進むが、どこかで頭打ちになってしまい、更なる高みに上がることはできないことをわかっている。
それなら、覚えた事を、もう一度聞くと、新たな発見が見つかることもある。
基礎は、貴重なのだ。
だから、ユーリカリアは、アメルーミラに魔法を教えるジューネスティーンを観察する事で、基礎的な部分を高めようと考えてたのだ。
ジューネスティーンも、ユーリカリアが、そんな事を考えて言ってきたのだろうと思ったようだ。
ジューネスティーンは、アメルーミラの魔法訓練について考えていると、ユーリカリアは、別の話を聞いてきた。
「なあ、ジュネス。 ツカディアで会ったあの女、名前・・・。」
ジューネスティーンは、誰の事を言っているのか、直ぐにわかった。
「ああ、ルイネレーヌさんですか。」
出てこなかった名前をジューネスティーンに言われて、ピンときた。
「そう、そのルイネレーヌなんだが、あれから、顔を見せなかったけど、どうなっているんだ? 」
「多分、今日の夕食の時にでも、顔を見せると思います。」
ユーリカリアは、納得するような表情をする。
「ふーん。 そうか。」
一言答えると、ユーリカリアは、何かを考えている様子をしていた。
「あの人は、情報を集めて売る事が本業ですから、ツカディアの件の請求をするため顔を出すでしょう。」
ジューネスティーンの表情を見たユーリカリアは、どうも、いつもと違って冴えてなさそうだと思ったのか、一瞬、鋭い目をすると、すぐに表情をもどすと、ルイネレーヌのもたらした情報について話を始めた。
「なあ、ツカディアで、ルイネレーヌは、6万匹って言ってなかったか? 」
「確かにそうでした。」
その答えを聞いて、ユーリカリアは、ジューネスティーンが、ルイネレーヌの情報に問題が有った事が、頭の中から抜けていると思ったのだろう。
「でも、10万を超えてたよな。 それって、ちょっと見込みの数と大きく違いすぎてなかったか? 」
「ええ。」
ジューネスティーンは、言われた通りだと思ったように答えた。
ユーリカリアは、ジューネスティーンの、その答えに、若干、もどかしさを感じたのだろう、表情が一瞬ひきいつる。
「あれで、情報を売るとうのは、ちょっとご粗末だと思うぞ。」
「そうですね。 言われてみたら、そうですね。 予め聞いていた数の倍ですから、それに、あんな大物まで居ましたね。 今回は、ちょっとルイネレーヌさんの情報には、大きな成果は無かったかもしれません。」
ジューネスティーンは、ユーリカリアに指摘されて、言われた通りだと納得した様子を見せた。
それを見て、ユーリカリアは、天才的な能力を見せるジューネスティーンにも、人としての面を見たようだと思ったようだ。
「やっぱり、お前は、戦い方とかには、本当に細かい部分までよく見えているけど、そんな所は、少し抜けているんだな。」
ユーリカリアは、ジューネスティーンにも人らしく欠点があるのだと思ったのだろう。
「いや、ルイネレーヌは、戦闘が始まる頃には、10万匹を超えるかもしれないと言っていた。」
横から、シュレイノリアが、話に入ってきた。
「ああ、そうだったかもな。」
ジューネスティーンが、呑気に答えた。
「あの時は、戦闘に入る数日前だ。 あの日に調査したとしても、徐々に増えているなら、10万を超えてもおかしくはない。」
シュレイノリアが、珍しく、ルイネレーヌの肩を持つのを、ジューネスティーンは、珍しいと思った様子でシュレイノリアの顔を見た。
「ああ、そうかもしれないな。」
ユーリカリアも納得したような様子で答えたので、ジューネスティーンもそれに倣った様子で話をする。
「確かに、10万匹の魔物を1匹ずつカウントするなんて不可能だろから、単位面積あたり何匹かを遠くから確認して、その数を面積比で算出する程度しか方法はないでしょうね。」
ルイネレーヌの件も有るが、それ以外にもユーリカリアの思惑も有って、ユーリカリアは、ジューネスティーンに提案する。
「それじゃあ、今日の夕食は一緒に取ろう。」
そう言うと、ユーリカリアと残り3人は、金の帽子亭に入って行った。
すると、ジューネスティーンは、カミュルイアンと一緒にシェルリーンとウィルリーンが一緒に金糸雀亭に入ってくるのを見て驚く。
「あのー、ウィルリーンさん、シェルリーンさん。 どうしたのですか? 」
ジューネスティーンが、2人に尋ねる。
「ああ、私達2人は、こちらに部屋を取りました。」
ウィルリーンが、嬉しそうに答える。
「私達なら、ベット一つで済みます。 大きなベットが一つの部屋を取りましたの。」
さらに、シェルリーンが答えると、ジューネスティーンは、何となくオチが見えたように思たようだ。
「ですので、夜は、カミューさんをお借りします。」
「ああ、夕食後から朝食までですから、それ以外の時間は、ちゃんと皆さんに、カミュルイアン様は、お返ししますから、昼間は、パーティーとして活動してください。」
「後、夜にミーティングとかの場合は、そちらを優先させますから、ご心配なく。」
ジューネスティーン達は、カミュルイアン以外、何とも言えない表情をすると、カウンターで鍵を受け取って、部屋に戻っていった。
そして、午後は、自由時間とした。
休んでも良し、道具の手入れをするもよしとした。
長旅の疲れを癒す事にしたのだ。




