ソフィアのジオルド攻略
投稿遅れてすみません!
本当意味分かんない。
なんで私がジオルドに怒られなきゃいけないのよ。
あの悪役令嬢め!本来ならジオルドからは嫌われているはずなのに。
ふんっ、でも大丈夫よ。せいぜいレジーナは妹止まり。
家族よりも恋人の方が優先するに決まってるわ。
そしてジオルドの恋人候補になるには今日の歓迎会のイベントは必須だった。
なぜかと言うとジオルドの元婚約者と会えるイベントだからだ。
魔術テストでレジーナに負けたせいで歓迎会の参加権を得られなかったときはどうしようかと思ったけどやっぱり神は私の見方なのね。
まさか当日にエミが体調を崩してしまって私が変わりに出ることになるなんて。
これがヒロイン修正ってやつに違いない。
ジオルドだってさっきはちょっと怖かったけど今は私の隣で笑ってデルラリア共和国の魔術師たちと談笑をしている。
何の話をしているかはさっぱり分からないがどうやら新しい混同魔術についてのようだ。
「ソフィア様は全属性持ちなのですよね。いやー、素晴らしい。ぜひとも今度私たちの研究に参加していただけたい」
話を振られたけど貴族の受け答えなんて分からないのでとりあえず笑っておく。
魔力を持っていると分かった時から国からマナーの先生がつけられた気がするがゴマゴマうるさくてムカついたのでまともに参加したことはない。
「ソフィアはまだ学生ですしそういうのは……」
「はっはっは、それもそうだな」
特に私が何も言わなくてもジオルドが相手をしてくれるので楽ちんだな。
適当に愛想笑いだけしていると話がひと段落したのか魔術師たちは去っていった。
次にやってきたのはジオルドよりも少し年上の上級貴族。
さっきから私を睨んでいた性格の悪そうな女たちである。
「ジオルド様、わたくしと一曲踊ってくださいませんか?」
「ええ、」
「ジオルド先生。行っちゃうんですか?私、こんな大きなパーティー初めてだから一人だと不安で不安で」
くいっとジオルドの服のすそをつかんで上目遣いにそう尋ねるとジオルドは笑顔で頷いてくれた。
「ああ、分かった。行かないよ。すみませんが今日は可愛い教え子を連れてきているので踊るのはまた今度でお願いします」
「そんな」
呆然と呟いた令嬢は私のことをキッと睨んで去っていった。
ああ、なんて快感なんだろう。ジオルドを独り占め出来るっていうのは周りからの視線がたまらなく気持ちいい。
前世だったら絶対に私はジオルドみたいな人の隣に立っていないし、女子から嫉妬されることもなかった。
えー、ジオルド攻略も迷うな~。
でもジオルドって攻略難易度ぶっちぎりのトップなんだよね。
まず第一に年上であり、先生という立場。圧倒的に女慣れしているため簡単には靡かない。
だからこそ唯一三年間をかけて攻略するキャラなのだ。
そして難易度に拍車をかけている要因はもう一つある。
それはジオルドルートに限っては悪役令嬢役がレジーナだけでなくもう一人いるということ。
それがジオルドの元婚約者エリーゼだ。
ほら、早速やってきた。
「相変わらずモテるのね。私が婚約者だったときから何も変わらない」
「エリーゼ……」
「こらこら、あんまりちょっかいを出すな。妬けるだろう」
「そんなんじゃないわ」
来たのはエリーゼとエリーゼの夫でありデルラリア王国の第一王子であるイザヤ王子だ。
「初めまして、ですよね。ジオルド様とは」
「ええ。直接会うのは初めてですね」
「妻が大変お世話になったようで」
「昔の話ですから」
男の子二人はにこやかに笑いながら握手をした。
不穏な空気に昼ドラを見ている気分になりながらも一応は不安そうにジオルドに身をよせる。
チラッとエリーゼは私を見ると興味を失せたように視線をずらす。
それから私から見ても社交的な笑みをジオルドに向けた。
「懐かしくてつい気分が舞い上がってしまったようです。申し訳ありません。今は私もジュネーブ国の姫ですのでお互いの国のための繁栄を願っています」
「ええ。こちらこそ」
「ジオルド様は優秀な魔術師だとエリーゼから聞いております。デルラリア王国も魔術の研究には力をいれてるんです。いつかこちらにいらしてください。歓迎しますよ」
「ありがとうございます」
最初に会ったときと全然態度が違う。
こうして見るとエリーゼも姫だということがちゃんと分かる。
本当に社交的な理由で挨拶に来ただけのようで今度はすぐに立ち去る。
立ち去り際にエリーゼは私にこう呟いた。
「ジオルドに本気になったって無駄よ。この人は女なら誰でもいいんだから」
ふんっ、それはあんただからじゃない。私は違うの。
私はフラりとジオルドにもたれかかった。
「大丈夫?」
「あ、すみません。なんだか疲れてしまって」
「いろんな人と話して疲れちゃったんだね。ちょっと外の空気吸いにいこうか?」
ジオルドはバルコニーまでエスコートしてくれる。
うふふ、なんだか本当のお姫様みたい。
ジオルドがモテるのも納得だ。
バルコニーはまだパーティーが序盤だからかあまり人はいなかった。
私はジオルドを攻略するための言葉を紡ぐ。
このゲームを攻略するための言葉だけはなぜか頭にずっと入っていて忘れたことがない。
これもヒロイン修正の一つなのかな。
「ジオルド先生、さっきのエリーゼ様の女の子なら誰でもいいってどういうことですか?」
「ああ。ソフィアを面倒くさいことに巻き込んでごめんね。エリーゼの言ったことなら気にしないで」
「気になりますよ。……それはジオルド先生が偽物の笑いを浮かべているのと関係あるんでしょう?」
「え、気づいてたの?」
「はい……」
嘘だけどね!
ジオルドは常に私好みの王子様みたいな笑顔で両親がやる愛想笑いとは全然違う。
分からないけど知っているだけだ。
「……そのままの言葉の意味だよ。僕は母が昔から病気がちでね。悲しい時に慰めてくれるのはいつも女の子で、僕は女性はみんな美しいと思うし守りたいって思っちゃう」
王道チャラ系きたー!
そう、これだよこれ!いろんな女の子をフラフラしてる攻略対象者が段々と一人だけを特別に思うようになるやつ!
私が一番好きなタイプなんだよねー。
うーん、今のはかなりグラッときちゃった。
っと、いけない、いけない。
下手に難しいキャラにいって失敗するわけにはいかないんだから。
やっぱり第一候補はあの時のヒーロー君!
でもジオルドも一定以上は好感度をあげておかなきゃだからな。
「ジオルド先生は優しいんですね」
「え、なんで?大体女の子は皆この話をすると怒るのに……」
「ジオルド先生が怒られるんですか!?」
「うん、誰でもいいの?って言われるんだ」
「えー、だってジオルド先生は女の子皆に笑顔でいてもらうために頑張っているんですよね。私、ジオルド先生といるの楽しいですもん。それはジオルド先生が私に最大限気をつかってくれているからだと思うんです。それを優しいって言わないでなんて言うんですか?」
出来るだけ無邪気に聞こえるように、明るくジオルドの目を見てセリフを言う。
「フフッ、面白い考えだね。うん、ありがとう」
よしっ、ガッツポーズしたいのをなんとか抑える。
ジオルドのこの柔らかい顔は好印象を与えられたに違いない。
最後にもう一言だけ足す。
「でもジオルド先生が本気で誰か一人を好きにならば無敵ですね!」
「いや、そんなことないよ。そもそも恋愛対象にもなれないんだから」
苦笑するジオルドの言葉はちょっと引っかかる。
まるで本気で好きな人がいるみたいな。この時点ではまだ私のことはそこまでじゃないと思うんだけど?
「うっ!」
頭をひねっていると急にジオルドが胸を抑えて倒れた。
あー、もう一個のイベントが始まったのか。
私はドレスの内側にひそめた石を握りしめてニヤリと笑った。




