↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/32

雨の化身

黒38、大禍時


海沿いの森。奥の奥から轟く唸り声が、濡れた空気に響いた。

まどろむような、寝起きのあの不機嫌さのような、寝ぼけた声だ。


太陽はすでに見えなく、青緑色の空が西の端から迫ってくる。

月明かりが冴えて、ゆらりと大地を照らした。


黒39、宵


『うぅー……うぅー……』


仲間を求めるような、哀れな声が夜風に乗り森を抜け通る。

声に呼ばれた黒雲に、少しずつ、ゆっくりと埋められる月。


少しずつ、ゆっくりと闇が濃くなってゆく。

木々の後ろ、泉の奥に、常闇が息づいた。


大地に夜が降り注ぎ、やがてどんよりと重い雲がのしかかる。雨が降り始めた。

ずるりと、沼から何かが這い出した。


黒40、丑三つ時


太陽さえ海へ沈んだ新月の夜空に、汚れた影が小さく見えた。

夜風を縫うように体をうねらせ、空を飛ぶ小さな影。


死の香りがぬったりと王都を越え、ザアザア不協和音が夜の闇に響く。

黒く染まった唸り声が、沼の息と響いた。充満する沼の匂いと血の香り。

下界の迷惑など気にせずに、彼は進む。汚れた体を雲に滑らせ、憎き彼女の元へ、愛しき彼女の元へ。


『殺して……コロシテ……コロシテ』


だらだらとよだれの垂れる口元。そこから垂れる言葉など、誰も聞かない。


『コロシテヤル』


そう、誰も聞かないのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。