セシル目線 第7話
そんなことを考えている間に、その女の子はててっとめり込んでいる男に駆け寄って、
「あのー?もしもーし!大丈夫ですか?」
と声をかけた。
「……」
当然ながら返事はない。
突然ぶんぶんと首を振り、ぐいぐいと男を引っ張る女の子。
何がしたいんだろう?
「しっ、死なないでくださいまだ捕まりたくないですごめんなさいごめんなさいやりすぎましたぁあぁぁ!」
大慌てだ。
どうやら、殺したくなかったらしい。
一応恩返しをしようかと思って耳をすますと、僅かだけど鼓動が聞こえた。
「……死んではないですよ。」
勇気を出して、ぼそりと呟いてみる。
「死んではないです。僅かですが鼓動があります。多分……ほっといても大丈夫でしょう。」
「し、死んで無い!?本当ですか!?良かったー、本当に良かった!」
そう続けると、女の子はあからさまに喜んだ。目を潤ませてまで喜んでいる。
本人は気付いてないけど、尻尾が長くなったり太くなったりしながらぶんぶんと揺れて、周りのいろいろなものを吹っ飛ばしいる。犬みたいだ。
そんなに喜ぶなら最初からあんなに叩かなければいいのに……。
そんなことを考えていると、女の子は突然こっちに近づいてきた。
「………?」
本能的に警戒する。
魔法が使えない今、戦ったら明らかに負けるし魔法を使っても勝てるかどうかわからない。
次はお前だ、とか言う女の子の姿を想像する。でも……
「あぁあ、私はあなたに何もしませんよー?」
その子は、少し困ったように僕の前に座り込んだ。
「な、にか用ですか?」
少し声が震えてしまった。少しの感情の機微も逃さないようにじっと見つめる。
「えっと……家は何処?一人で帰れる??って思って…もしよければ送って行くけどと…」
なんだか少し怯えた様に答えた。変な人だ。
家……か。さっきまでのことを思い出して思わず目を伏せてしまう。
「……私には帰る家などありません。」
「え、あのえっと……」
少し困ったように口ごもり、僕を見つめる女の子。
改めて女の子を見る。
ウェーブのついたピンクの髪。白くきめ細かく、小さくて細い体。大きな瞳。長い睫毛美しい顔。
ツノと尻尾を差し引いても、美少女ってこう言う子の事をを言うだろうか?といった容姿だ。
頼りなく、吹けば飛ぶような体つき。こんな子がさっきのような技を繰り出すなんて、今までの僕なら信じなかっただろう。
さて、この子は天使か悪魔か。
家具から飛び出してきた時、思わず天使のように見えたのにな……。
「そんなの絶対無理です!」
「はい?」
突然大声を出した。何が起こったんだろう。
主にこの子の脳内で。事故ですか、救急ですか?
「ちょっと私と一緒に暮らしましょう!」
「はあ?」
思わず目を丸くする。何を言い出すのだろうこの子!
「あなたみたいな子が一人で居たらまた悪い人に捕まってしまいます!ダメです!」
「え、えっと……」
否定はできない。魔法も使えない今見を守る術は何もない。けど……。
「ね!一緒に行きましょう!我が家へ!」
「え、ぼ……私が貴方の家に行くのですか?一緒に暮らす、え?」
「その通りですよ!」
「え!いや……それはえっと」
常識から離れすぎだ。そもそも突然に無理だろう。
「ダメですか?」
「え?……………ダメ、ではないですけどでも……」
「じゃあ決まりですね!」
「えっちょま」
急に手を取られた。そして、お姫様抱っこされる。
同い年の女の子にこんなことをされる、のはちょっと……
慌てて離して貰おうとした、瞬間。
刹那━━━━━
周りの景色が勢いよく流れていく。
冷えた風が髪を吹き上げて少し痛い。
あっという間に王都の門を超える。
「えっ、嘘速いですちょっととま」
思わずそう言うと、
「しゃべると舌を噛みますよー?」
「…………!!!」
くっそ怖い。




