97話 妹
「なんか疲れたなぁ。」
僕はいま陰陽師達の話し合いを抜け出した蘆屋家の庭を散歩している。庭と言っても山だから登山みたいなものだが。
話し合いでは、大まかなことは決まったがまだまだ細かいことをみんなで話し合っている。
「それにしても冴久先生があんなこと言い出すなんて。どんな理由であれ人を殺すことに賛同はできないなぁ。」
でも、僕にできることなんてあるのだろうか。
考えながら歩いていると小さな池が見えてきた。
「綺麗な池だなぁ。」
山の地下水が湧いており水が透き通っている。
僕は池を覗き込んだ。
すると何と異界の気配というのだろうか。なにか違和感を感じた。
「これって…」
僕は池に手を沈める。冷たい水の感覚が手から伝わってくる。
今度は異界に入るように手を池に入れる。すると、今度は水の感覚はなくなり、向こう側に繋がったのがわかる。
「どこかに繋がってる。」
僕は池にのなかに入った。
異界は入る前にの森の中のようなところで、家が池の近くにあった。
僕は家に向かっていく。
「誰かいるのかな?」
僕は扉をノックする。
「はい。」
綺麗な透き通った女の人の声が聞こえた。
扉を開けたのは着物を着たサラサラの綺麗な長い髪なとても綺麗な女性がだった。
「あれ?貴方は?どうしてここに?」
女の人が尋ねてくる。
「えっと、気分転換に山を歩いていたら異界があって。気になって入ってきちゃいました。やっぱり入っちゃダメでしたか?」
「今日うちで開かれている会議のお客様ですかね?いえ、いいですよ。私はいつも退屈しているので。どうぞ上がってください。」
「ありがとうございます。」
僕は家に上がり、畳の居間に通された。
それにしてもこのひとすごい霊気をダダ漏れにしてるけど何で何だろう。制御できてないというよりあえて垂れ流しにしてるような感じだ。
「こんなものしかありませんが。」
そう言って僕にお茶と茶菓子を出してくれた。
「あっお構いなく。ありがとうございます。」
「私は蘆屋紫亜と申します。貴方のお名前は?」
そう言って彼女。紫亜さんは僕の正面に座った。
蘆屋?ってことは冴久先生の親族の人かな?
「僕は涼風真広と言います。紫亜さんは冴久先生の親族の方ですか?」
「はい、私は冴久兄様の妹です。真広さんは兄のお弟子さんかなにかでしょうか?」
「妹さんでしたか。はい、そんなようなものです。ところで、なんで紫亜さんは霊力をそんなに垂れ流しにしてるんですか?」
失礼かもしれないが気になったので聞いてみた。
「やはり気になりますか。私はとある病で自分の霊力に対して自分で攻撃してしまうのです。なので、お兄様の術で霊力を適度に抜いてあるのです。」
そう言って服の中に隠れていた首に下げている札を見せた。
「そうだったのですか。少し僕がみてもいいですか?なにか力になれるかもしれない。」
僕だって神としてかなり力をつけたのだ。人を癒すこともできるだろう。
「いいのですか?ありがとうございます。」
僕は紫亜さんの背中に回り、背中に手を当てた。僕の力を紫亜さんの身体に回す。身体の中を探っていく。
「なんだかポカポカしますね。」
そう言って紫亜さんが微笑む。
「あれ?呪いも病いも見つからない?」
「実はこれは生まれつきなのです。なので、呪いでもないですし、誰にも治せないのですよ。」
身体の中を探ってもう一つわかった。身体に湧き出る霊力よりも出ていく霊力がわずかに上回っている。
「これじゃあ…あっ。」
僕は思わず声が出てしまった。
「ふふふ。すごいですね。そうです。ずっと霊力を垂れ流しにしているので、湧き出る霊力がだんだん少なくなり、今最小で霊力を垂れ流しているのですが、それでも垂れ流す量が多くなってしまいました。でも、霊力が減っていく分、私の体調は良くなっているんですよ?」
「霊力が全部なくなったら…」
「もちろん死んでしまいますが、私はもう寿命だと思っています。今は歩けるようになりましたが、前はトイレに歩くのがやっとでしたから。この空間も私の痛みや苦痛を緩和するように作られていて私のためにお兄様が使ってくれたんです。…これ以上お兄様に迷惑をかけられません。
でも、願うことなら、着飾って色んなところに出かけてみたかったですね。」
とても儚げに紫亜さんは言った。
紫亜さんの病はかかったものでもなく、呪いでもない。もともとそういう風に産まれてきたのだ。だからあの神木の巫女に貰った神薬でも治らないし神木の巫女にも治せないだろう。治す術は思い浮かばない。
でも、なぜだろう。僕は治せる気がする。
霞はどうやったら治せるの?僕なら治せるでしょ?そんな気がする。
ー…彼女の病は先天的なものです。だから誰にも治すことはできません。人にも神にも。しかし、ただ2柱の神のみ彼女を癒すことが。いや、創り変えることができますー
霞ともう一方の神だね。
ーえぇ、私達は根源を作り変える力を持っています。つまり、彼女のそう産まれてきたという根源を作り変え、この病をなかったことにできるのですー
そしてその力はコピーである僕にも備わっている。
ー…その通りです。しかし、根源を変えるということは世界を編集するということ。真広に資格があったとしても、それ相応の力が必要ですー
つまり、まだ僕にはできないと?
ーはい、できないです。今はまだ真広は世界をなにも変えられませんー
そうか、僕はまだ力が足りないんだね。
「ごめんなさい、紫亜さん。今の僕にはなにもできないみたいだ。」
「いえ、いいんですよ。お兄様でも延命が精一杯でしたもの。」
「せめて、これだけは…」
僕は神力を使い、ほんの少しだけ紫亜さんの霊力の性質を変える。根源は変えられない。でも、ほんの少しなら今の僕にも性質を変えることができた。自分の力をあんまりいじめないように霊力の活動性みたいなものを穏やかにした。
「こ、これは。」
紫亜さんは自分の霊力の変化に目を丸くする。
「今の僕にできるのはそれだけ。でも、きっと貴方を治せるようになりますので、その時は冴久先生と一緒に出かけましょう。」
「は、はい。」
紫亜さんはすこし頬を赤くする。
「僕はそろそろ戻りますね。また会いましょう。」
そういうと僕は立ち上がる。
「ありがとうございました。また、お待ちしてますね。」
そう言って紫亜は微笑んだ。




