6話 エモンのお礼
目の前にいたイケメンと美女はなんとオークだったのだ。今までのオークのイメージとあまりにもかけ離れていたのだ、そのギャップに驚愕した。
「えっ!?君たちはオークだったのか!?」
「いかにも。我はエモン・ザ・オークと申す。シェリー殿から話は聞いている。この度は我が同士を救ってくれて誠に感謝いたします。お礼ははずもうぞ。」
エモンというイケメンのオークは貴族的な上品な声で俺達に語りかけてきた。
しかもお礼もはずんでくれるというじゃないか。善意でしたことだが、見返りがあると嬉しいものだ。
「お礼だって、やったじゃない、エスウィン!」
「ああ、正直嬉しいよ、シェリー。」
「やった~。しかも魔物のみんなも思った以上に親切そうで良かったね~。」
「ああ、オークって女騎士襲ってるイメージしかなかったから、優しそうな魔物で安心したよ。」
「ちょっ、おにいちゃんっ!その発言ヤバイよっ!?」
あっ、しまった。思わず失言してしまった。すぐに撤回しなくては・・・。だがそれも遅く、ヴィオレは顔を激しく強張らせていた。
「貴様!無礼だぞ!そこに直れ!」
「すまん!」
ヴィオレは剣を抜いた。切り掛られる前にすぐさま俺は土下座して謝った。
「ヴィオレ、剣を抜きなさい。それが人間世界での我々の評判なのだ。真摯に受け止めなくてはいけない・・・凹むものだがな・・・」
エモンはすかさずフォローを入れてくれた。しかしあまりにも失言だったので謝らなくてはな・・・
「ホントにすまない。偏見で物事を見てしまった。だがやはり俺達が人間社会で教わっていることと真実は異なっているんだな?」
「その通り。まあ今は詳細は省くが、我々オークはエルフと違って人間に従順しなかった・・・そのため、『醜い敵』として扱われ、怠惰で醜悪で下品な生物とでっち上げられ、誇りを奪われてしまったのだ。」
オークにも色々な事情があるらしい。今は深く聞かないでおこう。だが一つだけわかったことがある。それは、オークは決して『醜悪な生き物ではない』ということだ。
「ヴィオレ、エモン、本当にすまなかった。さっきの言葉は訂正する。人間である俺をこうして手厚く招待してくれた君達はまさしく傑物といえるだろう。心から謝罪する」
「ふんっ!今更言っても遅いわ!貴様何か企んでいるのではないだろうな?」
「よせ、ヴィオレ。この者たちは我ら仲間の恩人だ。話を戻そう・・・皆を救ってくれたお礼だ。少ないがぜひ受け取ってほしい。」
エモンは俺達にコインが入った袋を手渡してくれた。かなりずっしりした重い袋だった。・・・なんと100万エーンもはいっていた!?
「うっそ~、こんなに!?」
エリリンは喜ぶを超えて驚愕していた。俺も同じだ。いくら俺達が傷ついた魔物を救ったとはいえ、さすがに100万エーンは貰いすぎだ。人間社会なら、薬草と毒消草があれば誰だって治療できる。薬草が5エーン、毒消草が10エーンだから、100人の魔物を助けたとしても、褒美は高くて3万エーンが良いとこだ。むしろちょっと裏があるのだろうかと勘ぐってしまう。
「ありがとう。だがこんなに貰っていいのか?別に5万エーンでも俺達は満足なんだが・・・」
「ははっ、貴公は謙虚な男だな。むしろこちらとしては安すぎるくらいで申し訳ないと思っていたくらいだ。なにせ治癒アイテムの薬草1個は5万エーン、毒消草は10万エーンもするのだからな。それもそのはず、治癒アイテム1つあれば1人の魔物の命を救うといわれる。10万エーンの価値はしかるべきものぞ。そのため、魔物の住家やダンジョンに宝箱として奉っている者も中に入るくらいだ。」
俺はもっと驚愕した。まさか人間社会と魔物社会でこれほどまでにモノの価値に差があるとは・・・そして良いことを思いついた。
「エモン、もっと多くの魔物を救う方法がある。俺を信じてくれないか?」