エピローグ
こうして、俺たちの学祭中庭ライブは――俺たちの物語は終わった。
いや、後日談がある。
それも、とびきり陽気なやつが四つも。
一つ目は――
♪ ♪ ♪
「ちょっと、離してくださいよ、先輩方!」
ライブの後、俺はアオ先輩とくれなゐに両腕を引かれて、校舎の裏へと連行された。
「なっ、何ですか? 二人とも、何か顔が怖いんですけど……」
「「…………で」」
二人が仁王立ちして、言った。
「「どっちと」」「付き合うの?」「付き合うんですか?」
二人とも、笑っている。
目、以外は。
「「やっちゃん?」」
怖い。
誰か助けて。
♪ ♪ ♪
二つ目は、一週間後に学園祭ライブのやり直しが開催された、という話。
考えてもみれば当然の話だ。
あの五分の後のバンドは――プロミュージシャンも含めて――全部、演奏できなかったんだから。
そりゃ仕切り直すよね、というお話。
俺たちが死に物狂いで五分間の演奏をしなくても、やり直しライブでアオのお父さんに演奏を届けることはできたわけだ。
とは言え、あの五分間のメドレーは録画・UP・拡散されて有名になっており、『青子緑子』の良い宣伝になった。
青子緑子の中の人がめっちゃ美人って評判だ。
あと、美女・美少女揃いのバンドの中で唯一男の俺がめっちゃ叩かれてた。
『何このモヤシ』
ってコメントを見つけたときには、号泣しそうになったよ。
アオ先輩とくれなゐ先輩がよしよししてくれたから、耐えられたけどさ。
♪ ♪ ♪
そして、三つ目。
「アオ先輩、俺、一ヶ月前からずーーーーっと気になってたことがあるんですけど」
「ん、何だい? 何でも聞くと良い。ボクのスリーサイズかい? それなら上から――」
「声!」
「ん?」
「何でアオ先輩が赤ちゃんだと気付けなかったのかずっと不思議だったんですけど、声が全然違うんですよ。十年前と、全然、まったく! 十年前の赤ちゃんの声は、言っちゃ何ですけど、か細くて、弱々しくて、とてもボーカルに耐え得るような声じゃなかった」
「声のことは、ボクもずいぶん悩んださ。変えようとして、いろいろ試してみたものだよ。ボイトレ、ヘリウムガス、デスソース直飲み――」
「デスソ直飲みって、よく生きてますね……」
「どれも駄目だった。けれど、最後の最後で泣きながら試したやつが、上手くいった」
「泣きながら? 何を試したんですか?」
「ほら。舌の先、ちょびっと欠けてるだろう?」
「ま、ま、まさか……『コインロッカー・ベイビーズ』!? 先輩の部屋に転がってた文庫本! アレ、伏線だったのぉおおおおおおおおおおおおおおおお!?」
「キミとボクがこの先どうなるのかは、まだ分からないけれど。もし付き合うことになったなら、そのときはしっかり味わわせてあげるよ」
そう言って、アオ先輩は舌の先をチロチロと見せながら笑った。
♪ ♪ ♪
四つ目。
学園祭ライブの数ヵ月後、超有名ボカロP『青子緑子』がファーストアルバムを発売した。
さらにその数ヵ月後、青子緑子のコピーバンド『キング・ホワイト・ストーンズ』がYouTubeでランキング入りするようになった。
アオとアオの父との折衷案で、リアルバンドとしても活動することになったんだ。
そんなわけで、使い捨てバンド『キング・ホワイト・ストーンズ』は使い捨てではなくなった。
今日も今日とて俺は、賑やかなバンドメンバーたちと一緒に練習に明け暮れている。
俺たちのアオい春は、まだまだ終わらない。




