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届け、すべてへ

 そこには溢れる音があった。歌があった。


 会話をしているわけではないのに、対話を進めるように奏でられる音たち。




 抜けるような青空の下で。

 乾いた軽い空気を音は賑やかに震わせて、聴く者の心も軽くしていた。




 がんちゃんの音に、私が応える。

 がんちゃんと私のやりとりに、キョウさんが合の手を入れる。


 スルドの音を軸に、リズムの音が重なり厚みを増す。リズムの土台にメロディと歌が乗り、音楽に合わせてダンサーは踊る。



 歌う声には、歌い手の愛が。

 奏でる調べには、奏者の希望が。

 打ち鳴らす律動には、奏者の感謝が。

 躍動する肉体には、ダンサーの情熱が。


 誰かが誰かを思う。

 目に見えない気持ちは、同じく目には見えないけれど、確実に存在していて、物理現象として計測できる音という現象に宿って放たれる。聴く者に振動として届いた音は機関を通し脳を経由して心に辿り着く。




 がんちゃんの音。地平を超えていけるような強

く逞しい音に、私は応える。


 私の音が、高く澄んだ空へ吸い込まれるように響き溶けていく。




 音よ。届け。


 ひとの耳へ、その心へ、魂の芯までも。





 音よ。届け。


 地平の先へ、天空の彼方へ。



 


 滲む汗が目に入ったのか、その汗にメイクが溶けていたのか、目が少し染みた。


 目から溢れる雫など流れるままで構わない。





 音よ。何もかもを超えて届け。





 重ねた時間も蟠りも身体という枠も個性という違いも価値観に捉われた理性も想いに形作られた心をも超えて。




 音よ。ひとの人生さえ変えてしまえる可能性のある、希望そのものの音よ。




 音が。

 音が届いた人が。人の心が。

 心が届いた人が。社会が。環境が。

 新たな音を生み、新たな思いを届けてゆくのだ。



 音は。

 今を超えて、この場所を超えて。

 未来にも世界にも広がる。拡がり続ける。届く。届き得る。


 可能性の塊たる、音。






 一音一音に魂を込めて。

 想いを込めて。

 祈りを、込めて。



 私はスルドを奏で続けた。



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