激突編5
「私はあの白アーマー、そして不可思議の半分を回収しますので、先に進んで下さい」
そう言われて、少しだけ俺は不満だった
「いいなぁ」
俺だって体を動かしたい、戦いたい!
普段ならそんな事思わないのに、今はめちゃくちゃそう思う。だけど本当に負ける気がしないんだ。
逃げるナオとは違い、残って戦うナオに、一応聞いてみる。
「でもお前、あの不可思議と白アーマーの二つを相手に……大丈夫か?」
俺の出番が……?
「私も不可思議みたいなもんです、大丈夫ですよ。メイドの戦いにご主人を巻き込むなんて事は……絶対にできません」
残念ながら、付け入る隙は無さそうだ
「そうですよ、ご主人はダメでいいんです、たっぷり私に依存して一人じゃ何も出来なくなって下さい、私がついてますから」
スグにそう言う事を……ハァ
余計に支払いをさせようって話なのはみえみえだぞ
「では予定通りにお願いします」
ナオに言われた通り、片目を閉じて不可思議の方を見続ける
理由や理論は一切教えて貰えなかったが、ナオが嘘をつくなんてありえないし、これまで嘘をつかれた事が無かったので、ナオの言う事を素直に受け止め、行動に移した
「半分になった!本当になった!」
すげぇ!なんか未来が見える!
「場所は見ましたか?収容ケースは……」
でも5秒先の未来なんだろ?話してる時間ないっての!
大丈夫だ、今ならやれる。
「では私とはココでお別れです」
「ええ、ではまた」
ナオが俺を抱き抱えて不可思議の方にダッシュする
予想の数倍早い!
でもな、落下地点もタイミングも分かってんだよ!
高速での移動中、落下する不可思議を手のひらの筒に入れる
「ご主人」
「フタもした、大丈夫だ」
不可思議回収完了!……半分だけど!
「こっからどうすんだ」
「この部屋の先に扉がありますので、そこまでまた走ります」
しっかしいつやられても女にお姫様だっこされるのは……男のプライドとかがなぁ……
「逆でも大丈夫ですが」
「お前の何分の1のスピードしか出せないと思ってんだ?感情よりも大切な物の為にここまで来たんだ、俺の感情よりも世界の方が大切だよ」
白アーマーとナオが遠くなっていく
しかしあの白アーマーの声、どっかで聞いた事があるんだけど……思い出せない
「なあ、ジャックって男の名前だよな?でも声は女だったし……外国風のキラキラネーム?」
「女性に興味を持つのはわかりますが、女性の前で別の女性の話をするのはよくありません、確かに教えてませんでした」
「誰なんだ、あの白アーマー」
扉を開けて、別の部屋に入った所でナオが教えてくれた。
「クーパーってご主人が呼んでた人です」
ちょ!ちょちょちょ!
「まじ!?いやそもそもあの人戦えないでしょ!?」
クーパーさんは一般職員からここまで出世したもんだとばっかり……え?あの見た目で戦えるの?
あの美貌は武器だろうけど
「ご主人は少し人を信用し過ぎてる所があります、そもそもクーパーって名前も……」
そこまで言った所で、ナオが急に足を止めた
そして俺を降ろして、後ろに隠れるようにと言ってきた。
ここまで慎重な……いやここまで危険から守ろうとするナオは久々にみた気がする。
「少し、ヤバいです」
いったい、何か
「でっか……何これ」
全身から血を流しながらこちらを睨む巨大な、犬?いや……そんな可愛い物じゃない
脳みそまでむき出しで、爪の大きさだけで俺の腕ぐらいある化け物だ
「いえ、そっちは可愛いもんです」
「問題はアレです」
部屋の中央で、何かを食べている女性の方に視線が向いていた
「ヌペルッツイヤ・オリジナル」
お前が混乱させるために開放した不可思議じゃねーか!
「あれ……あの人は人間なんだろ?」
たしかそう言ってたよなお前
「人間ですが不可思議です……ご主人、横の剥犬の相手は頼みます、あの人間は私が相手します」
ナオがブーツを床に思いっきり、音を立てて踏む
ブーツから刃が現れて、戦闘準備ができている
「よっくわかんねぇし、意味不明だけど任せろ!」
胸のナイフ……じゃなくて、せっかくだしナオから貰った腰のナイフを使おうじゃないか!
腰から二本のナイフ、もとい小太刀を取り出す
持ち手と持ち手がワイヤーで繋がれている、いつものナイフと同じ感じで扱えるようにしてある
「しかし片刃なんだよなぁ、これ」
少しだけ、前のナイフより扱いにくいポイントだ
刃の裏が峰になっている
「これ本当、一本の刀を折って二つに別けたような見た目だよな」
「なあ」
ナオの方向を見ると、どこにもいなかった。
そして不可思議の人間もいない
どこかで戦ってんのか、それともどこかに引き込まれたか
「ま、ナオなら大丈夫……多分」
さて、俺はコイツを片付けますか
「こいよ化け物、殺して収容して蘇生してやるゆ」




