激突編3
「はいご主人、あーん」
人を殺して、死体をいじって……その後すぐに物が食えるかっての、まだ薬効いてないし。
「僕ちゃん……反抗期?」
「お前に出会った時が反抗期のクライマックスだったぞ?」
「ずっとクライマックスじゃないですか」
コーヒーを一口啜り、不可思議と調査員達の方を見る
「なぁ、なんであの白いアーマーの人は発砲しねぇんだ?左手にナイフ、右手に銃のタクティカルなのに」
タクティカル、そう呼ばれる持ち方を白い人はしている
銃を撃つときは左手に乗せて撃つ、その分命中率も高くなる
敵が近づけば左手のナイフをそのまま正面に押し出して突き刺す、そんな構えだ
これは二つ、射撃と斬撃を両立させる構えなのに……何故だ?弾切れ?
「だとしたら……シングルか逆手かにするよな……」
ナオの方をチラッと見ると、答えを教えてくれた
「あの白いのは、真縅の英雄と呼ばれる人間の一人なんです」
「お前が言ってた奴だな、お前なら勝てんだろ?」
ナオは頷いて答える
「私であれば勝てます……で、彼女が発砲しない理由ですが、あの銃にあります」
銃に……?普通のハンドガンより、少し大きいか?
足のホルダーから銃を取り出して見ると、大きさの違いは歴然だった
「あのでっかい銃が何なの」
「あの銃は、狙わなくても発砲さえすれば殺せる銃です……敵味方問わず、ではありますが」
便利なのか不便なのか……つまり仲間がいるから撃てないって事か
「なら銃しまってシングルにするか……」
「彼女の装備を見ましたが、殆どがマガジンですね、ナイフが一本、銃が一丁、危機的状況でアーマーから注入されるアドレナリンが二つ……そして残りの持ち物は全てマガジンです」
銃は強力だけど、それを主軸にするとこうなるのか
……あの銃じゃなければよいのでは?
調査員達が対峙している不可思議、その本体は多分あの人間……みたいな者だ
顔の部分には黒い何かがへばりついており、移動速度が普通の人間よりも遅い。
そして……死体を触ると、本体を守るように動いたり、攻撃させたりしている
「知能があるのか」
「はい」
言い切ったな
「触った死体はどれだけボロボロになろうとも、粉々になろうとも本体が無事ならば襲ってきます」
あんな不可思議……なんの為に出来たんだ?
大体の不可思議には意味がある、いや意味がある物が多いんだ
「それはわかりません」
……ま、どうでもいいか。
本体の防御を突破してオレンジ色の髪の女が間合いを詰めた
「あの女やるじゃん!」
あそこまで詰めれば!
「駄目ですね」「ええ、駄目ですね」
オレンジ髪は何かを本体にぶつけた?殴りつけた?
……何かをしたが、逆に吹き飛ばされてしまった。
あの女はずっと何か大きな物を構えているように見える
透明な……武器?
「あの人、自分でも見えてませんね」
……え?いやいや、そんな事……
「確かに持ち手の部分は大丈夫ですが……刃は自分の方に向いていて、相手には峰を向けてますし……ほら、見てください」
そう言われてオレンジ髪を見ると、何かを肩に置こうとして、肩から出血していた
「ありゃ……アホなんじゃないか?」
周りの調査員が素早く包帯を巻いている、…、えらい早いな!
「多分、しょっちゅうなんでしょう、それでしたらあの速さには納得です」
そんなしょっちゅうがあってたまるかっての
てかその透明な武器って何だよ
「それが私にも分からないのです、透明とは言え、私には見えてますし、アレは透明状態を解除できるハズ……しかし私が知っている物であれば人間には扱える物ではありませんし……」
ナオにも分からないって、よっぽどだな
……知識人のナオならわかるんだろうか
オレンジ髪の女は飛んでくる死体を、透明な何かで切り捨てている
不可思議本体にもう一度近づき、頭めがけて思いっきり振り下ろした。
「ナオ、これなら」
ナオは首を横に振っている、駄目なのか
「そんなに軟ではありませんよ、アレは」
不可思議がオレンジ髪の女の首を掴み、持ち上げている
助けようと他の調査員が不可思議に発砲したり、近接武器で攻撃したりしている
「悪夢に引きずり込む、効果はこれだけですが」
白いアーマーとヘルメットの人間が床を滑るように移動してきて、ナイフを突き刺した
「単純な不可思議こそ、普通に面倒くさくて普通に厄介なんですよ」
ナイフが刺さった不可思議……いや不可思議に取り憑かれた人間が悲鳴を上げている
「アレはダメージをうけません、よかれと思って、皆にも見てもらって経験を共有させてあげたい、ネジ曲がった親切心の不可思議です」
しかし、見ているだけでは退屈だ
「さっさと捕らえたい、今はどうだ」
「もう少しです、もう少しですら」
何かがおこる、そう言われてなだめられる。
何故かは分からないが、とても戦いたい
今なら……どんな奴でもぶっ飛ばして殺せる!
ナオが少し笑った気がしたが
「気の所為ではありませんか?私に笑うよう命令もされてませんし」
と、言われて話を終わらされてしまった。




