望迷編7
「さて、吾輩と楽しい楽しいお喋りといこうか」
真縅の不可思議収容室、そのさらに地下の博物館
博物館のどこかの一室。
そこにセクションと一神斎がいた
セクションは手には小型のナイフが握られている
一方で一神斎は壁に貼り付けにされている
右手には木で出来た杭が打ち込まれており、血が流れている
他の体の部位はワイヤーで結ばれ、壁と結びつけられている。
「さて、もう一度聞くが」
右手から流れる血液をナイフに乗せる
「何故血液が赤でも青でもない、灰色なんだ?」
灰色、それはあり得ない色であり、彼女をおどろかせていた。
「だから……知らねぇっての……」
「吾輩はな、お主が不可思議ではないかと考えておる」
「……ッ!」
不可思議認定される、そして現在いるのは博物館
このままでは収容されるという恐怖が彼を襲う
「こんな人間味溢れる不可思議がいると思いますか?」
「不可思議とは人知を超えた物だ、吾輩も知らぬ物があってもおかしくななかろう」
セクションが質問を続ける
「そして他にも聞きたい事があるんだが……姫川調査員は何処に行ったか知っておるか?」
右足の太腿に、錆のついた鉄の棒が押し付けられている
「知らぬとは……言わんよな?貴様と外に出ているのが目撃されておる」
「どうせ……信じてくれないんでしょ?」
「ふむ……吾輩は信じておるぞ?恐怖や痛みは人を正直にさせると言う事を……なッ!」
足に鉄が入り込む
「いギッ!」
「貴様の経歴は見たが、特殊部隊向けの訓練を受けた経験は無し、通常の調査員向けの物しか……まぁ何にせよ平凡と言う評価だな」
「では……答えてくれるか?」
セクションが刺した鉄を熱しているその時
警報が鳴り響く、不可思議が収容室から逃げ出した事を知らせる音だ
「む……どうなっておる!」
部屋の外に出て、クーパーに話しかける
「ええい、どうなっておるのだ!何事だジャック!」
「……人型の不可思議が逃げ出しました、009が……です」
「んなっ……!?」
「不可思議第009が逃げ出しただと!?アレは封印されていると言っていたではないか!」
「わ、私もわかりません!」
人型の不可思議は知力があり、人間に似た見た目で、人間に溶け込み、人間より遥かに強い。
「ええい!ここは安全……ではなさそうだの」
壁が溶けて、女性に見える生き物が二人の前に現れた。
「こんにちは、お久しぶりです」
「全然……元気そうじゃないか……ええ?」
目でクーパーに文句を言う
「本当……ですね、あの環境で元気だとは思いませんでしたよ」
……何だ、何かあったのか?
部屋の外からからごちゃごちゃと、それですごい音がする。
右手と右足が痛い、ガッチガチに拘束されていて、逃げる事もできない
「……ナオ、聞こえるか」
「そうだ、頼めるか」
「姫川の様子はどうだ?」
「そんな事言ってやるなよ、アイツはアイツで良い所があるんだよ」
「反対って……そんなに批判してやるなよ」
「わかったわかった、そこは考えるよ、だから頼むよ」
後の壁が崩壊する
「お待たせしました」
「いっつも……一人は俺の近くにいるよな」
「それが言いつけですので」
「本当、表情変わんねぇなお前」
壁を破壊して現れたメイドが、拘束を解いていく
傷跡には包帯を巻くが、医療技術はダメダメのようで
「いってぇ!力入れんな!」
痛みに耐えて止血をすると、メイドが頭を撫でてきた
「痛いでちゅか?」
「……痛いけど歩けるよ」
やっべぇ、いきなり優しくされて赤ちゃん言葉は反則だろ……ドキドキしたじゃねぇか
「では……ここは私が抑えますので、逃げて下さいね」
「一応入口付近にも私がいます、私がいる所まで無事に逃げられるように、私が時間を稼ぎます」
ナオがここまで言うって事は……
「そんなヤバいの?」
「私が8人がかりなら勝てますが……今は無理ですね、僕ちゃんを守りながらでは勝てません」
邪魔って事かよ、いや仕方ないけど。
「ですのでッ!」
メイドが俺の顔色の横に蹴りを入れる
ギリギリ俺の頭には当たらず、金属同士がぶつかったような音が響いた。
「できるだけ早い脱出をお願いします、流石に不可思議と……この方々の相手はきびしいので」
透明な何かをたどって行くと、セクションが折れを睨んでいるのが見えた。
「逃がす訳にはいかん!大人しく」
「セクション!前みて前!」
その横には白いアーマーと白いヘルメットをつけたクーパーがいた。
「す、すまんすまん!」
不可思議第009と呼ばれる女性の腕を、銃で受け止めているが、銃が徐々に溶けている
「セクションのソレも溶けるかもしれませんよ!?」
「それは無いと思うが……」
「私は貴方が逃げずに、正しさを証明してくれると信じていますよ」
クーパーさんの言葉はもう信じられない
「早く行けって、聞こえないの?バカご主人!」
「頼んだぞナオ!!」
右足を引きずりながら、出来る限り早くナオが作ってくれた道を使い、外を目指す。
「あの男、メイドが好きだったのか」
「ええ、私の事が大好きでメイドも好きなので着るように強要されてます」
セクションの問いにナオが答える
「どうだ?ここは」
「ええ、協力しましょう」
「二人とも!真面目にやって下さい!」
話している二人とは違い、クーパーは一人戦っていた。
「予想よりも……いや昔よりも酸が強くなってます!気をつけて!」
敵の敵は味方、しかしできるなら不可思議に相手を殺してもらおうと考える嫌な協力共闘が始まった。




