望迷編4
「お目覚めですか?」
メイド服を着た女性がいる
あれ?私なんでここんな所に?
「えっと……ここって何処ですか?」
「申し訳ありません、それはお話できません」
「なら、連絡が取りたいんです、電話を貸してもらえませんか?」
「申し訳ありません、主人より禁止されておりますので……」
主人?誰だ?
……あ、思い出した
「兄さん……いや、流石に……夢よね?」
腕には血の滲んだ包帯、同じものが太腿にも巻かれている
このキズがあるって事は……
「夢じゃ……ない?」
腕のキズを抑えると、ジワッと痛みが伝わってくる
「ご安心下さい、私が着替えと包帯を担当させて頂きましたので、主人は見ておりません」
「そう……か、刀は!?」
私の周りに刀は無い、何処かにあるの?
「主人を呼んできますので……失礼します」
メイドさんが部屋から出ていった
ちょっと、これどうなってんのよ
ベッドから起きて部屋の出口に向おうとしたが
腰と首に透明な糸のような物が絡みついている
ベッドから離れようとすると首が締まり、腰に痛みが走る。
「……は?何?これは……」
ピアノ線?硬いけど柔らかく、形を変える
「珍しいだろ、それ」
……先輩
そうだ、兄さんを殺した人だ
「それは透明なワイヤーなんだ、武器や防具に使う予定だったらしいんだが……透明過ぎて何処に設置したかを使用者が分からない、自分のワイヤーで怪我をする奴が続出してボツになったんだ」
ワイヤー、先輩はナイフとナイフを繋ぐのに使ってたやつだ
ここからもってきてたのか
「ここは何処なんですか?」
「まぁ、それはいいだろ」
よくねーよ
「兄さんを殺して、次は私ですか?」
先輩が笑っている、何故?
「お食事です、どうぞ」
メイドが小鍋を持ってきた
ベッドにテーブルを設置し、料理が置かれる。
「まあ、食えよ、話はそれからだ」
確かにお腹は空いている、食べないと……血が足りてない気がする
ベッドに戻り、レンゲを持って雑炊を食べる
「……美味しい」
「ありがとうございます」
メイドが頭を下げる、本当に奇麗な人だけど
「表情1個しか無いの?」
「……どうかされましたか?」
声に出ちゃったか……やばいやばい
「さて、お前が聞きたいであろう事を話す」
「謝るとか、無いんですか?」
「もちろん悪いと思ってるし、これから言葉じゃなくて行動で償いたい」
先輩の表情は、真剣な物だと思える、そんな顔だ
「俺はお前が好きだ」
「……へ?」
何?ご機嫌取りのつもり?
少し前なら喜んだと思うけど、今は兄さんの仇、そんな事言われても怒りしか湧いてこない
「バカにしてますよね、それ」
「お前も俺を好きだと言ってくれただろ?だからさ、俺がお前を守ろうと思うんだ」
「ざっけんな!殺すぞテメェ!」
ベッドから先輩に飛びかかろうとすると、メイドに押さえられる。
「お前が兄さんを殺したんだ!そんな奴に、誰が守ってもらうもんか!」
「いや、俺は決めたんだよ、もう決めてしまったんだ」
こんな自分勝手な人を好きになってたの?
運命的な出会いはしたけど、それでも……
「こんな人を……」
「それに、もう俺達に居場所なんて……ここ以外は無いんだ」
「真縅に連絡を取ったんだ、だけど……何か変だった、そう!変だったんだよ!」
「俺がスパイだと!?ふざけんな!何で個人ナンバーの照合ができないんだよ!部署も、やってきたことも無かった事にされてる!」
「なぁ、お前は覚えてるよな?これまでやってきた事」
先輩……この人としてきた事
「真縅に入って一生にした仕事なんて、動く土器の確保だけだし、失敗したじゃないですか」
「お前も!そう言うのか!?」
胸ぐらを先輩が掴んできた
苦しいし……痛い!
「土器の捕獲は成功した!喋るケチャップの捕獲も成功した!そしてあの写真とカメラの対応をしていたんだ!」
「ご主人様、それ以上はいけません」
メイドが男の手を掴み、私から引き剥がす
「ゲッホ、ゲホ」
「わ、悪い……大丈夫か?」
……この人こんなに無茶苦茶な人だっけ
「とりあえず……俺は真縅から何故か消されたんだ、俺は今の状態を」
「不可思議のせいだと思って……いや不可思議のせいだと確信してる」
「だってそうだろ?こんなにも現実が変化してるんだ!それ以外考えられない!」
「……大声出して悪かった、これからでかけてくる、少し用事をすませて、頭冷やしてくる」
男が部屋から出ていった。
「何よあれ!意味分かんない!絶対おかしい、狂ってる!」
「貴女はどう思うの?少し変だと感じないの?」
「私はご主人様が元気であればそれで構いません」
表情は変わらない。
「……ですがご主人様は……姫川さん、貴女に執着されてます、どうか守られて下さい」
頭を下げられても困る、こんな凶人の館には居られない
どうする?このベッドから動けない、正確には動ける範囲には何も無い。
手が届く範囲にあるのは
トイレ、シャワーそして手元灯
とても何か出来そうな物は……
シャワーやトイレにこんなワイヤーをつけたまま行かせないはず、流石にその時は外してくれる!
その時にこのメイドを倒して、部屋を出て武器を探す
……これでいこう




