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ホームレス少女  作者: Rewrite
花里桜編
89/234

19話

 

 あれから安藤さんが落ち着くまで待って、再び部屋割の話を再開すると、すぐに桜ちゃんが元気よく手をあげた。


「はーいっ! それじゃあこうしましょうっ! 私と佐渡さんが一緒の部屋で寝ますっ!」


 なるほど、確かにいい案かもしれない。

 今僕たちは一緒に暮らしているし、ただ場所が僕の家から天王寺家のプライベートハウスに変わるだけだ。

 なんの問題もないように思う。

 これで解け―――


「ちょっ! なんでそうなるのよっ」


 つ、ということにはならなそうだ。

 奏ちゃんが異議申し立てをしてきた。


「そ、そうですっ! なんでそういうことになるんですかっ! 納得のいく説明をお願いしますっ」


 なんと驚くことに彼方ちゃんまでもが参戦してきた。

 この状況に混乱し始めた僕は間宮さんたちの方に目をやる。

 しかし、間宮さんも翔君も広志君も楽しそうに見ているだけで何も答えてくれなかった。

 たすけてよー。みんなー。

 僕が情けなくこうしてる間にも話は進んでいく。


「でも私たちは今一緒に暮らしていますし、私としても全く問題ないですから。それにこれ以上部屋割りのことで時間を取らせるものみなさんに悪いですから。ですからおじょ……天王寺さん、水無月さん。納得してもらえませんか?」

「……」


 混乱していた頭が一瞬にして冷静になった。

 それは、桜ちゃんの言葉づかいが相手に奏ちゃんがいたからか、普通のものからメイドのそれへと変わっいたからだ。

 でも、桜ちゃんは今は天王寺家のメイドではない。だからお嬢様ではなく、天王寺さんと奏ちゃんを呼んだのだろう。

 もしかしたらこの楽しい雰囲気で少しずつでも自然に打ち解けあってくれるかもしれないという淡い期待をしていたのだが、ダメなようだ。

 心なしか奏ちゃんも傷ついてるように見える。

 僕はグッと拳を握りしめた。自分の無力さを、浅はかさを感じながら。


「で、でもっ。それなら私も一緒に暮らしていたことがありますっ。むしろ私が一番最初に佐渡さんと一緒に暮らしましたっだから、ここは私が佐渡さんと一緒に……」

「ちょっと待ちなさいっ。それを言うなら私だって同じよっ。この下僕と二週間近い時間を共にしたわっ。それにこれは天王寺家の責任。ここは天王寺家の人間である私が責任を……」


 話がどんどん変な方向にねじれ始めた頃、桜ちゃんがある提案をした。

 それもとんでもない提案を―――


「それなら佐渡さんに聞いてみましょう。佐渡さんが選んだ人が佐渡さんと一緒の部屋ってことで」

「いいわよっ」

「望むところですっ」


 何故かいきこんでいる彼方ちゃんと奏ちゃん。桜ちゃんも顔にこそ出ていないものの少し気合が入っているように見える。

 っていうかこの状況どうしよう。

 この状況になっても間宮さんたちは助け舟を出してくれる気配はない。

 覚悟を決めるほかないようだ。


「「「さあっ! 誰と一緒の部屋になりたいですかっ。佐渡さんっ!!」」」

「……えーっと」


 目を泳がせる僕。

 目の前に横一列のなっている女の子たちに目をやる。

 左から誰にでも優しくて腰ぐらいまで伸びた黒髪が綺麗な彼方ちゃん。

 少し子供っぽくて、わがままな所があるけど、根は優しいお嬢様の奏ちゃん。

 いつも元気いっぱいでみんなを笑わせてくれる笑顔の素敵な女の子の桜ちゃん。

 みんなどの子も違った魅力があって素敵な女の子たちだ。

 この中から誰か一人を選ぶ……


「……ごめんなさいできませんっ!! 選べませんっ! 選びたくありませんっ!!」


 僕はその場で勢いよく床に頭を擦りつける勢いで座り込んだ。

 俗にいうところの土下座である。

 だって選べないものは選べないんだ!


「……」


 無言で土下座したままの僕を見る女の子三人。

 許してもらえないかもしれないと額に汗がにじむ。

 でも、選べないものは選べない。

 選べないものは選ばない。

 これでいいはずだ。


「あっははははっ! 見事な土下座だぜ誠也」


 沈黙に包まれていた空気を翔君がさわやかな笑いで打ち消した。


「ホントでありますな。私でもそこまではできないでありますよ。ホント我が隊長ながら見事な土下座でありますな。今度ご伝授いただきたい」


 広志くんも続いて豪快に笑った。


「佐渡様らしいですね」


 あんまり変わってない様に見える安藤さんの表情だけど、声は少し笑っているというか、踊っているような気がした。


「うふふ。楽しいものを見させてもらったわ佐渡。でも、男なんだからビシッと決めるところは決めないとね」


 大人の女性の笑いで僕にこれからの教訓までくれた間宮さん。


「ねえ三人とも、ここは佐渡の土下座に面して許してあげてくれない? わかってると思うけどこういうやつなのよ佐渡は」


 しかも僕を取り持ってまでくれている。

 流石間宮さん。大人の対応だ。


「……そうですね。私も少し冷静さを欠いてました。すいません佐渡さん。もういいですから早く頭を上げてください。いくらここが綺麗だからって土下座なんてやめた方がいいです」


 一番最初に彼方ちゃんが許してくれた。

 やっぱり優しいな彼方ちゃん。


「しょうがないわね。全く、土下座すればどうとでもなるって考えは嫌いだけど佐渡だものね。下僕にはぴったりのポーズだし、でも、私も鬼じゃないわ、頭をあげなさい佐渡。これは命令よ」


 次に奏ちゃんが許してくれた。

 やっぱり根は優しい女の子なのだ。


「しょうがないですねー佐渡さんはー。でも、私佐渡さんのそういうところ好きですよ。選べないものは選ばない。嫌いじゃないです」


 最後に笑顔で許してくれた桜ちゃん。

 優しい笑顔だ。


 みんな優しい女の子だ。

 僕はゆっくりと頭をあげた。


「……ありがとうみんな」

「なんで佐渡が謝るのよ。あんた謝るようなことしたの? この奏で様に何かしたの? してないでしょ? なら謝らないでいいわよ」

「そうですよ。むしろ謝るのは私たちの方です、佐渡さんに酷なことを言ってしまって土下座までさせてしまったんですから」

「そうですよー佐渡さん。みんな少しずつ悪かったんです。それでいいじゃないですか」

「……うん。ありがとう」

「誠也ー。また謝ってんぞー」

「えっ!? あ、ほんとだっ」

「「「ははは」」」


 最後は笑顔が僕らを包んだ。




「それでよ。結局男子と女子が組む一ペアはどうすんだ? だれかがやっぱり他で寝るのか」

「なに、九重がここで寝てくれるの?」

「絶対に嫌だぜ俺は」

「冗談よ。そうねー。じゃあ最初に佐渡と一緒でもいいって言ってくれた桜ちゃんと佐渡でペアになってもらいましょう。後のペアは九重と山中、私と彼方ちゃん、奏ちゃんと安藤さんって感じかしらね。これでいいかしらみんな?」

「「「はーいっ」」」


 どうにか部屋割りが決まった。

 これで心置きなく遊べる!

 僕達の楽しい夏休みが今から始まる!


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